2005年6月。


中旬。


 よく通る道沿いにあるスーパーの支店がこのたび閉店になりました。何年か前に24時間営業になったあたりで、「そろそろヤバいか」という気はしてたんですよねえ。しばらく前に行ったら、ネックレスやらの装飾品(1万円前後)が1500円均一だったりするのは寂しいなあ。大手スーパーのそのビルには私、ちょっとした思い出がありまして。長くもない私の人生における分岐点のひとつがあったんです。というのも、小学二年のとき、当時近くに住んでいた私は母親に買い物に連行されていたのです。スーパーの四階で放り出され、しばらく物色したりしてたわけ。エスカレーターを上がると順番に、本屋、おもちゃ屋と並んでいて、一番奥にあったのが図書館だったのです。スーパーがやってるやつで、誰でもカード作って借りることができました。そこで本借りようと思わなかったら今の私は多分なかった。翌年、市立図書館分館のそばに住む友達と一緒にそちらの図書館にも通うことはなかっただろうしね。いつの間にかスーパーの図書館は閉鎖されてしまい、本屋も撤退し、次第に私も行かなくなっていったのです。そういう思い出のある場所がまたひとつ消えるのは、ねえ。


 と多少しんみりしたところで。


 前回に引き続き、ブレナンの『暗黒城の魔術師』を探して再びキ/クニヤへ。今度はどうにか現物を見ることができました。何だか薄くて、受験用の問題集とか参考書とかそういうものを連想させるような体裁です。ぱらぱらとめくってみると、昔懐かしいい挿絵がそのままで。でも、どうしたことか文章二段組みです。むう、と唸りつつめくり続ける私。肝心の項目ナンバー14はというと。うわっ、ガイドから本文からすべて二段組みなのに、14だけ段組してないでございます。なんつーか、キモがよく分かってますです、グッジョブ創土社。もっとも昔の二見版が持っていたような雰囲気、チープで微妙にゴージャスな感じはあんまりなかったのが残念です。とりあえず探しておられた知り合いであるところの太一様に連絡してさしあげると、すでに購入したとのこと。ううむ、こういうすれ違い多いざます。


 ブレナン本出した創土社のサイトを覗いてみると、うむう、ラインナップが結構なものでございます。何より、「ドルアーガ三部作」が載ってますですよ。素晴らしい。ゲームブックにおけるひとつの革命は「ソーサリー四部作」だと思うのですが、「ドルアーガ」も負けていません。ソーサリーのすごいところは、各巻をクリアしたかどうかでその後の進行がひそかに変わる点でしょう。ドルアーガもそうなんですが、私の記憶がたしかなら、行った場所に戻ることができるゲームブックなんです。そのパターンは「ファイティング・ファンタジー」シリーズにおいてアメリカのスティーブ・ジャクソンが『サソリ沼の迷路』(同シリーズのメイン作家であるイギリスのスティーブ・ジャクソンとは別人)でやらかしてることはやらかしてるんですが、行きつ戻りつという部分がキモになっていたため他の部分がすごく単調になっていました。鈴木直人の「ドルアーガ」はシステムでもシナリオでもリーダビリティーの高いものに仕上がっていて、キャラも立ってましたしねえ。


 本屋に行ってみて驚いた。ゴールドマンの『マラソン・マン』が復刊です。映画化もされた小説ですが、ゴールドマン、好きなんですよ。特に『プリンセス・ブライド』は名作。また京極夏彦の『魍魎の匣』が三分冊になった新装版となっていたのを見て愕然とする。しかも『姑獲鳥の夏』が映画化ですか。『匣』が三分冊だったら、次に来るだろう『鉄鼠の檻』はどうなることやら。


 それにしても、ゲームブックとか、ゴールドマンとかライバーの「ファファード&グレイマウザー」とか、復刊やら続いてるなあ、と思うのですよ。コミックは昔のを文庫サイズにしたり、やっぱり不景気だからかしら。名作とかはある程度の需要が見込めると分かってるわけだし。


 なんてことを思いつつまたしても本屋で魂消る。熊本弁でいえば「たまがる」だ。ある本を見つけて、その帯を見た見た見てしまったのである。帯を引用する。「魔人・加藤保憲を倒せ!人類存亡をかけた世紀の戦いに少年と百万の日本妖怪が立ち上がった。愛と平和の大冒険ファンタジー!2005年8月全国ロードショー角川映画原作。」(太字ママ)作者はもちろん荒俣宏で、タイトルは『妖怪大戦争』です。加藤といえば『帝都物語』の主人公なわけで、映画では嶋田久作がやっていたわけで、しかも今度は「愛と平和の大冒険ファンタジー」ですよ、私の受けたインパクトは分かってもらえるかと。映画ですか、角川ですか。期待できんなあ。嶋田久作なのかなあ。ぶつぶつ。


 ゲーム雑誌を立ち読みしていたときのこと。セルDVDの紹介コーナーをちらりと見た。目を引いたタイトル。「プリンセス天巧VSガチャピン・ムック」ぐわ、知らない間にそんなバトルが繰り広げられていたのですか。ガチャピンといえば、様々なことに挑戦するヒーローで、大気圏外まで行ったキャラですよ。もっとも中のものに関して事情があって宇宙遊泳や中継はできなかったわけですけど(宇宙に行ったのはガチャピンの抜け殻だったという説もあり)。それが天巧とバトルですか。すごいなあ。ちょっと観てみたい。


 またまたゲーム雑誌を立ち読みしていたときのこと。前回話題にした「戦国BASARA」の記事を読んでいたのです。おう、平八郎が飛行している写真です。しかもこちらに向かってカッ飛んできてます。この状態で逆さになった三つ葉葵が見えるってことは、あれは背面カバーなんですね。それが持ち上がってバーニアが露出して飛ぶと。ちなみに砲撃筒はカバーの両側に固定されている模様。やっぱアレですね。酒井定次ロボ(1号機)、榊原康政ロボ(2号機)、井伊直政ロボ(3号機、赤い)が三体合体六変化で最強ロボ本多平八郎になるんでしょう。なんかもういろいろネタが混ざっててワケ分かりませんが。別の日に再び「BASARA」の新しい記事読んでいたら、敵キャラとして出てくる戦国武将のデザインがいくつか発表になってました。これもまた小林友美が書いたようなデザインですが、海賊風ヘソ出し長宗我部元親には驚き。もっと強烈だったのは、どこの森から来たんだのエルフ風毛利元就。緑色で背の高い帽子かぶってます。毛利だけに森の種族なんでしょうか。三本の矢の教えもエルフだから? 今後の展開に注目です。


 帰宅途中、とあるブックオフに寄りました。入り口のところに貼り紙があり、ちらりと拾った言葉は「文庫」「2冊」「105円」の三つ。その店には、文庫本のコーナーが三つあって、ひとつが105円の棚、もひとつがちょっとお高いコーナー、で最後が汚れたやつや古いやつが2冊で105円というもの。多分貼り紙はこれのことでしょうと思い、ちょっとお高いコーナーで新しめの本をチェックして3冊選ぶ。値札は400円、350円、350円。おー、りっち。レジに行ってバイトのにーちゃんに渡す。「3冊で750円になります」……たしか前々回某バーガー屋でお釣りを間違えられた話を書いた。前回同バーガー屋で注文を間違えられた話を書いた。その前フリの後でこれである。何かもうどうでもよくなって金払ってレシートを見る。たしかに3冊になっている。店を出たところではっとして振り返った。例の貼り紙。「期間限定、105円の棚の文庫本2冊で105円」その上にもひとつ、「期間限定、250円以上の文庫本、ALL250円」これだっ。ちゃんと説明は最後まで読みましょう。期間がいつからいつまでなのかさっぱり分からなかったが、今さら戻るのもアレなのでその日は帰宅。翌日再訪して105円コーナーで恩田陸本とかを買う。結構いいものを掘り出したような気がする。めでたい。


 町でやる健康診断がありまして。その日たまたま熊大文芸部の新歓コンパがカチあってたりもしましてどうしたものかなと思っていたのです。どちらも行きましたけど。超音波攻撃等に備えて前夜10時から飲食禁止。これが予想以上にキツかった。というのも私にはちょっとした、世間的にはよくある習慣がございまして。ひとつ、夜10時過ぎてからコーヒーを飲む。しかもブラックでマグカップ満タンです。ネットやってるときについた風習ですな。これやらないと眠りにくいのよ。もひとつこちらの方がわりとヘビーなんですが、就寝直前、コップ一杯の水を飲む、というのがあるのです。こちらは小学校2年くらいから続いてる習慣です。当時から虚弱だった私は毎晩クスリを飲まされてまして、それがノドに張り付くんですわ。眠る前にそれを水で洗い流さないと気持ち悪いというのはクスリ飲まなくなってからもきっぱりくっきり残ってるみたいで。ともあれ、レッツドライという感じで、カラカラになって健康診断に行きました。受付すませて並んでる小型バスに入ります。中央部が待機部屋になってて、運転席側と後部にはカーテンが敷かれています。私ともひとりオバちゃんがいたんですけど、オバちゃんすぐに呼ばれちゃったので、私ひとりちんまりと待つことに。私、こういう健康診断って始めてなもんで、好奇心たっぷり、どきどきしてました。でバスが時折変な横揺れするんですな。くわ、こりゃいったい後部では何が起こってるのか。楽しみにしてるところ、ようやく名前を呼ばれました。奥に入って横になり、腹にぬるぬるしたものを塗布されます。ゼリー状です。それから固いものを押し当てられる私。くう、X線が空きっ腹にこたえます。検査のひとつが終わり、いよいよ別バスで胃の検査です。待機ルームにはビデオが流れてます。……って何かベッドが回転してるんですけど。患者さんも回転してるんですけど。想像以上のイベントのようです。順番が来ました。おう、バリウムですね。と思いきやまず別のものを渡されます。「これを口に含んでください。まだ飲まないでね」口に入れると何やら覚えのある味です。これをバリウムで流し込むんですね。今口に含んでるのは、たしかさっき案内パネルに書いてありました。そう、八宝菜、違う発泡剤、ソーダですよ。バリウムを飲み、奥へ案内される。縦になったベッドにもたれかかる。ベッドシステム起動です。傾斜角が変わります。耳元のマイクで指示が飛びます。私は必死にそれをこなします。バリウムを胃壁にまんべんなく塗りたくるのです。「じゃあ、右方向に二回回ってください」くるくる二回転です。「右に体をひねって、そのまま息を吸って」ツイストです。さらに左に回転したりツイストしたり、また回ったり、頭が逆さになったりと結構な運動というか、回転ベッドに発泡剤がキツいです。ふらふらしながら検査室を出るとすぐに紙と一緒に渡されたもの。下剤。家に帰ったらコップ一杯の水と一緒に飲みましょうとか書いてある。しかも二、三日は水分の補給を多めにしましょうなども記されている。ドライ状態である。原付で帰り、「とりあえずバリウム出せばよかろう」とトイレで喉に指突っ込んでみたものの気分悪くなっただけで吐き戻し不可。胃壁に塗りつけたのがマズかったんじゃろうか。仕方なく下剤を飲む。ここで思う。夕方から飲み会だったよなあ


 同日夕方、水分補給のために文芸部に顔を出す。主賓である新入部員はちょっと前にタクシーにぶつかったとかぶつけられたとかいう話だったので大丈夫かと思っていたがちゃんと出席していた。うむ感心感心。飲み屋でテキトーな話をしつつビールを飲む。水分補給です。終わり頃、文芸部の卒業生であらせられる太一様が出現。見るたびに何かでっかくなってるような気がするのですが、まあ本人は気のせいだといってるのでそういうことにしといた方がよろしいでしょう。今回の私に課せられたミッションのひとつは、現在の部員に太一様を紹介してさしあげるというものだったので、それもどうにか達成。会計時、7000円も余ったという話になり、内心首を傾げる。えーとたしか2500円基準のコースにしてたよね。部室出る前にひとり3000円くらい集めたよね。で太一様を除いて8人分だったか集めて。何か総計20000円くらいから店のにーちゃんがやたらと確認しにきてたっけ。幹事が慣れてないせいだろうけど、あれって会計時に集めた方がよかったんじゃなかろうか。7000円部費にツッこむというのも珍しいと思うぞ。


 主賓が帰り、学部生もいなくなり、院生のうち二人ほどが帰り、残されたメンツはとぼとぼと。太一様がいなけりゃ二次会もなかったでしょう。入ろうとした店がことごとく満席っぽくて、結局コンビニでつまみと酒買って部室へ。時刻は夜9時20分くらい。えーとたしか10時に電源が落とされるんだよねここ。などと思いつつ、私はソフトドリンクを、他はビールや酒を飲む。なんちゅーか、もうちっとがーっとしゃべり倒したり、飲み倒したりする場所や時間が欲しいよなあという感じですかね。太一様がいらっしゃった頃の文芸部はそうだったと思います。朝までダベったりとか。そういうのもできなくなって、酒飲める人もほとんどいなくなって、うーん、どうなんでしょうね? 顔出して観察してみると部会でもみんなさっさといなくなるしね。それが今の在り方なんざんしょね。ちょっとダベってたら、私の時計は10時になり、ひとりとっとと撤退。私がいなくなった直後、電源が落ちたらしい。手探り状態で他のメンツは帰ったようです。もっとも扇風機とかのスイッチを切ることにまで思いいたらず、翌日院生が顔出したときは無人の部室で扇風機が動いてたとか。あ、あと残ったカラムーチョは太一様からの寄贈ってことで。何やらもの悲しい終わりでした。


 なんてこといいつつも、部会にまた出席。初々しいというかコナれてない感じの新入りさんの作品と、元々初々しくない院生さんの作品。うーん、まだ両方とも作品というまでにはなってない感じですか。どんどん書いていって、盛り上げてってほしいものだけど。私が一年生の頃とか、どうだっただろうか。てことを考えつつ引っ張り出した、大学一年のときに書いた作品をサイトにアップしてみたり。あの頃たしか諸々の取材で何ヶ月かかけてたよなあ。それにしても、くわー、カユい







 購入した本:
  栗本薫『火の山』、桜坂洋『スラムオンライン』、伊藤典夫編『SFベスト201』、木村航『ぴよぴよキングダム2』、加納朋子『ささらさや』、小野不由美『屍鬼(五)』、恩田陸『月の裏側』、ショートショート作家『ホシ計画』、白石一郎『びいどろの城』『鷹ノ羽の城』、豪屋大介『要塞学園(下)』、矢野俊策/F.E.A.R.『ダブルクロスリプレイ・オリジン 偽りの仮面』


 読了した本:
  栗本薫『火の山』『陽気な幽霊 伊集院大介の観光案内』、沖田雅『先輩とぼく5』、七飯宏隆『座敷童にできるコト』、坂木司『切れない糸』、山崎敬之『テレビアニメ魂』、久住四季『トリックスターズ』、高橋義夫『眠る鬼』



←少し過去へ    少し未来へ→

 戻る