2005年9月。


下旬。


 先日、いつものごとくお花屋さんの前を通りかかると、表の立て看板に菊の花に関する紙が追加されてました。ただ上1/3くらいしか固定されていないので、風でぱたぱたとはためくのです。いい具合に、紙の下にある文字と、上に書いてある文字が連結していとおかし。下にあるのは、前々回くらいにネタにしたやつです。で、くっつくと、「お彼岸用の ハロー ウィーン 入荷中」で周辺にはカボチャアクセサリーがぶら下がったプチ人面樹が増殖していたり。お彼岸用オーストリアンおまじないですか?


 久方ぶりにとあるお菓子屋の前を通る。ちらりと窓を見れば新製品のビラが貼ってありました。長方形の紙に斜めに商品名が書いてあります。えーと以前のが別の果物の絵が描かれた「まるごとグレープ」とか「欧風抹茶どら」とか「スイートポテりんご」とかだったんですが。新商品は「オレンジレンジ」だそうで。そのネーミングセンスはどうなの?


 いつぞやちらりと話題に出してたような気もするが、研究室の卒業生の方々とお食事をすることになりましてね。企画の発端は教師系人妻Aさんと看護士系人妻Bさんが、四月くらいにお食事をともにされたらしく、「久しぶりに集まりたいねえ」という会話が極秘裏に行われたものらしい。それがいきなり私のところへ「今のとこ出席者は三人確実なんだけど」と話が来た。もちろん、三人というのは、AさんとBさんと私である。問答無用である。こういう人たちである。当初8月下旬くらいにということであったが、人妻様方の都合がつかず放置されていたのだが、いきなり「24日にしましょう」とメールが来た。「場所、時間、メンツは任せます」とこちらへ丸投げするのはあんましだと思います、奥様方。ともあれAさんBさんがご存じの方へメールを配信し、近場にいた放送系の卒業生のCさんにお店などをうかがう。Bさんは八代なぞという南方で働いてらっしゃるので、それが終わってから駆けつける。Aさんはさらに南方の僻地勤務であるが、実家が熊本市内にあるのでまあそこから来るのだろう。とりあえず黒髪はJRで来るBさんには不便だろうというので街で会食を目論む。放送系卒業生Cさんにいくつか店を紹介いただき、それらは予約なしでも入れるだろうということだったので好都合である。他のメンツはというと、例えば団地妻系人妻Dさんは夏前にコケて骨折。治りかけたところを娘の直撃を食らって骨がぱっくり割れたままいつ完治するとも知れぬ状況で無理。OL系人妻Eさんはちと遠くてこちらまで来るのは無理っぽい(←東京だ)。ディレクター系独身Fさんは国外へ旅立った模様。北の広告屋の方Gさんは今度メガネ屋のモデルをするとかで忙しいとか。まあさすがに一週間切ってるときにメールもらって即参加する人はそんなにいないでしょう。そんで、メンツ四人で(←放送系の人が入ってる)決行確定。お店が上通りそばだったので、「カッパの前に7時半」と現地人にはよく分かる場所を通達したのが前々日。前日にAさんからクレームが来た。Bさん遅れてきて、早めに帰るんだから上通り側じゃなくて、駅に近い新市街とかにした方がいいんじゃないの、という内容。ってあなた丸投げにしといてそう来るか。やむなくCさんに連絡し、西銀座通り方面にお店を変更。集合場所も当然変更になり、「TSUTAYAでどうです」と私がいったら、「いや、あそこはこないだ取材で行ったからもういい」と断られ「キ/クニヤの方がいいだろう」と決められる。うー、キ/クニヤですかー。しぶしぶメールで通達。


 さて当日。朝刊のテレビ欄を眺める。深夜映画で「バロン」とある。おう、バロン、男爵。解説も詳細もない状態で頭の中を「みゅんひはうぜん」とか「ほらふき」とか単語が飛び交うのもどうかと思うが。当然のようにパソで予約録画をセッティング。夕方出陣。バイクを熊本大学のサークル棟そばに止め、文芸部の部室で細かい時間調整をする。前回の西尾維新プロジェクトの成果である本をぱらぱらと眺める。これは図書館じゃなくて、院生の人に頼んでおいて正解であった。新書で、油紙のカバーがつき、箱がつき、印字がかすれたり濃かったりと古い岩波か新潮のような雰囲気を醸し出してます。図書館で借りたらまず箱もカバーもなく、無粋な感じに製本されてたことでせう。時間に余裕を持って部室を出たところで当の院生の人にばったり出くわす。立ち話で情報を交換し、こないだ先輩方と飲んだときの寄付金を渡す。一応でっかく書いておく。関係者各位へ。こないだの1600円はちゃんと寄贈しましたですよ


 んでバスに乗って街へ入った私。向かったのは集合場所のキ/クニヤでは当然なく、TSUTAYAであった。だって六時半くらいだったんですもん。25日に新潮文庫の新刊が発売予定なのだが、早めに出てるときもあるので顔を出したのである。狙いは宮本昌孝の『ふたり道三』である。が新潮来てない。くっすん。うろうろしてると、ふと目に留まったのが新刊新書。う、何故田中芳樹の「アルスラーン」がいっぱい並んでるのですか、こりゃ新刊? 新しい話? 再録じゃなくて? 反射的に購入。見慣れぬものを見たせいか、お腹の具合がおかしくなる。そうだ、キ/クニヤにはトイレがあったよなあ。我慢しつつてくてくと歩いていく。もはや書店としての価値が私の中ではないぞキ/クニヤ。到着時が7時前。すっきりした後、棚の間をうろうろする。うーん、品揃えが悪いなあ。だいたい一週前のゲーム雑誌が最新刊として置かれてるのが間違ってるぞ。このときの収穫はというと、小川一水の最新刊が出てるのを見つけたくらいですか。ソノラマはTSUTAYAでチェックしてなかったのです。もちろん後日買うことにする。


 キ/クニヤウォーキングが開始されて30分ほどして、放送系卒業生Cさん登場。「まだAさんがいらしてないんですよう」と告げ、「もうちっと待ちましょう。私その辺うろうろしてますんで」Cさんはカメラ雑誌をぱらぱら眺めだし、私はホントに店内をうろうろする。ひたすらうろうろする。客がまばらで閑散としているのでウォーキングにはもってこいである。しかも本棚も気を引かない。7時35分。外に出てAさんのケータイに連絡をしてみる。出ない。二度かけて出なかったので、「もうちっと待ってみましょう」とCさんと話す。7時47分。Aさんに電話がようやくつながる。「今どこにいらっしゃいますー?」「今出るとこ」「はあ?」あんた何を出前みたいなこといってやがりますか。「ごめんごめん、先行っといていいよー。そうそうBさんもさっき八代出たってさー」さてどうしたものかと店内へ向かって二歩歩いたところでバイブ着信。見るとBさんである。おそらく八代を出たという報告であろう。大間違いであった。「今西銀座通りに着いたんだけど、どこにいるの?」いつから八代はそんなに近くなりましたか? さてはアヤシの術ですな。松本某を輩出(排出かもしれん)しただけのことはあります。「まだキ/クニヤなんですよう」ご存じない方のためにいっとくが、キ/クニヤのある銀座通りとBさんのいらっしゃる西銀座通りはものすごく近い。「じゃあ今から行くから」だがどうやら術は種切れだったらしく、かなりの時間が経過してBさん登場。迷ったらしい。三人になったところで、「電車もバスも乗り遅れた。タクシーを拾って向かう」という連絡がAさんから入ったのでさっさともうお店に向かうことに。


 お店に入ってしばらくするとAさんも合流達成。まあまったりと四人で近況や仕事などの話をする。もっとも私は卒業生方の話の聞き役でしたが。教育現場の話や撮影現場の話や医療現場の話など生々しいものをたくさんうかがったが書けないものもあるし、まっとうな話をこのペエジに求められてもどうかと思うので面白いのをダイジェストで。


 タクシーで店まできたAさん。遅れたそもそもの理由は、ふれあい動物なんちゃらだかいうとこで女教師はネズミだかに小便を引っかけられ、実家で臭いを落としたりするのに時間がかかったせいらしい。さらにタクシーでは運転手に「やっぱり女性は家庭を守るべきだ」という話をされ、フェミニンな人なので半ばブチ切れ運転手さんを言い負かして、「お客じゃなかったら……」と悔しげな顔をさせたのだとか。


 Bさんとこは個人営業の診療所なのだけれど、こないだ泥棒に入られたらしい。被害総額600円。毎晩レジからお金を持ち帰っていたため、小銭しか診療所になかったらしい。それでも物騒だねという話を患者さんやダンナとしてたらしいのだが、ある朝診療所に来てみたら、玄関先にドデカイ犬の置物がどかんと。誰が持ってきたものやらいまだに不明らしい。前から変な被プレゼント運がある人である。


 もひとつBさん。若い男の患者さんを相手に腰の検査。うつぶせにして、上着をめくった。下のシャツをまくり上げようとしたらしい。ところが引っ張っても引っ張っても終わらない。ずいぶん長いなと力をこめて、ぐいっと一気に。途端、「う゛」という声がした。Bさんが思い切り引っ張り上げたのは、男性のパンツだった。男性は福岡方面の大学生らしく、きっと今頃八代でセクハラされたという話が広まっているのではないかといわれる。「その趣味の人たちが話を聞いてきたらヤだよねえ」とけらけらBさんは笑う。


 Bさんはアヤシの術を使ったのではなく、メールを使ったのである。つまり電送。違う。メールの遅配だったのね。Aさんによればそういうことはたびたび起こっていて、「今日お客さんからもらったたくさんのおいしそうなリンゴを見ています」という写メールが夜中の3時くらいに来たことがあるとか。夜中にリンゴ見てにまにましてたらコワイわいな。


 やがて時間が来たのでBさん退場。JRの時間に間に合うかどうか微妙なところだったのだが、忘れた頃にメールが来た。「間に合いました!タクシーの運転手さんが缶コーヒーくれました。皆さんによろしくお伝え下さい」すいません間の一文は何でしょうか? 口論吹っかけられたAさんとはえらい違いというか、フツー運転手さんにコーヒーもらうか? ひとしきり残った三人で笑う。


 お開きになってAさんは帰宅。私は、黒髪の近くまでタクシーにCさんと同乗して移動。そっから歩いて大学へ向かう。途中、前方に誰かが立ってました。夜中の1時過ぎにゴミ捨て場の電柱をじーっと見つめる男性。きっとゴミ出しの日を確認してたんでしょう。うむうむ。とりあえず迂回する。大学に到着したのだけれど、西門が閉鎖されてますよ? うむう、厳しいですな。歩いてプール門へ。ここも閉まってます。さらに中門も入れません。こ、こりはタクシーで帰れってことですか? 一縷の望みを託した赤門はさすがに閉まっておらず、ここから構内へ侵入。原付を回収して無事帰宅しました。帰宅したら「バロン」録画中でございました。


 そんなこんなで人妻の方々に楽しませていただいたのですが、こういう研究室の卒業生の方々との集まりもちょくちょくやりたいものでございますなあ。


 前回、隣町のアヤシい駐車場風施設の話を書いた。後日談である。しばらく経ってから再び通りかかったところ、やっぱり立ち入り禁止になっていて、ただ前回と違うのは、アスファルトが妙に汚れていること。光るものや細かい金属のかけらのようなものが散らばっていて、何か強くこすりつけたような形跡もあります。こ、こりはあれですな、戦闘の痕跡? うむむ隣町やっぱり油断なりません。謎の痕跡の正体は引き続き調査したいと思います。


 最近原付の調子がいまひとつなので、そのうちバイク屋に見せなければならないなあと思いつつ、忙しくてなかなかその暇もないですよ。いやはや。







 購入した本:
  田中芳樹『魔軍襲来』、木村航『ぴよぴよキングダム3』、岡崎裕信『滅びのマヤウェル』、山形石雄『戦う司書と恋する爆弾』、小川一水『疾走! 千マイル急行(上)』、宮本昌孝『ふたり道三(上・中・下)』


 読了した本:
  山本弘+皆神龍太郎+志水一夫『トンデモUFO入門』、田中芳樹『王都炎上』『王子二人』『落日悲歌』『汗血公路』『征馬孤影』『風塵乱舞』『王都奪還』『仮面兵団』『旌旗流転』『妖雲群行』『魔軍襲来』



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