2006年3月。


上旬。


 そろそろ卒業シーズンというか年度が変わるというのか。こーゆー時期に企業で研修受けたりバイトしたりしてる人たちもいるわけですよ。って出だしが前回と同じですかそうですか。ともあれ、状況も変わらないわけでして、先日、本屋に行ったときのこと。前回素晴らしい対応をしてくれた店員さんのいる店でございます。本を選んでレジに持っていこうとすると、そこにいるのはまたしてもいつぞやのにーちゃん。外見でいえば、ドラえもん未装備のまま成長したのび太。前回本を買ってから一週間以上経ってたんですがね、どのくらいスキルを高めたものか試してみることに。税込みで1200円くらいの本だったのでサイフから1500円用意してレジへ。本と一緒に会員カードを差し出しつつ、「カバーお願いします」カードをリーダーに通した後のび太くんはこうのたまった。「カードの方お返しします」おう、成長してるじゃないですかあっぱれあっぱれ。カバーの方は相変わらずへたっぴいで、あちこち緩んだ感じでしたが。私は1500円を代金皿(というかお金入れるやつであるが、正式名称は何というのだろう?)に置く。カバーを巻き終わったのび太くん、お金を取ってレジに入れようとした。そして気づく、しばし硬直する。レジに燦然と輝くメッセージ「イラッシャイマセ」えーと、すいません、この店じゃバーコードをピッと読み取る前にカバーをつけるマニュアルがあるんでしょうか? のび太くん、慌ててもたもたとカバーを外し、読み取り機を当てようとして失敗、二度目でようやく読みとれたものの、カバーがひん曲がってしまっている。カバー最初からやり直し。客が並んでいたのでのび太くん、「レジお願いします」と声を出したものの、他の店員がヘルプに来る気配なし。声が小さかったのか、はたまた客にはうかがいしれぬ事情だか人間関係だかがあるのか。ともあれ、もちっと快適に買い物させていただきたいところではある。


 新聞を見ていて、宮崎某の映画がアカデミー賞を逃したという記事があった。賞を獲ったのが何だか無名の映画のように書かれていましたが、「ウォレスとグルミット」ってずいぶん昔に観たなあと感慨深かったり。前あったのは30分くらいの短編で、ビデオで借りて観たのでしたっけ。ハゲたおっさんと犬のクレイアニメでかなり面白かった(チーズを食べに月へ行く話とか←月がチーズでできているってのは西洋風ですな)し、それの長編が変わらぬクオリティで作成されたのなら、いい線いくのもありかなと。宮崎某の映画は観てないんで何ともいえませんが、「ウォレスとグルミット」をポッと出の映画のように扱ってるのは新聞記事としてはどうかなあなんて思ったり。


 「戦国無双2」をちまちまやってるんですが、なかなかいい感じです。ゲームとして結構爽快感があるし、ネタ的にも笑えます。北の政所が二段ジャンプするくのいちだってのは前回書きましたが、他に「ひー、こりゃたまらんわい」と思ったのが、信長の妹にして浅井長政のヨメお市シナリオだったり。まだ序盤しかやってないんですがね。「1」でのお市といえば、誰にでもタメ口を利く小生意気な小娘で、メインウェポンが剣玉、無双奥義は剣玉スキップというキャラだったんですが、奥州王ガキ政宗と同じく今回成長を見せました。どっかの組織で再教育でもされたのか言葉遣いまで変わってます。そんな組織があるなら、ぜひとも昨今の学生たちを放り込みたいと思う人多数ではないでしょうか。ともあれお市はダンナの浅井長政とのバカップルぶりをこれでもかと見せつけてくれます。モーション自体はどうも変わってないっぽい(今「1」が手元にないので比べてないのですが)ので、異様な違和感があります。だって武器剣玉だし、剣玉スキップは健在だし。100人倒すと賞賛メッセージとか出るんですが、初めてお市でやったとき、出たメッセージはダンナの「何とけなげな。某(それがし)にはすぎた妻だ」とかなんとかそんな感じの。100人賊を剣玉でどつき倒したヨメを「けなげ」というか。ちなみにその後ダンナは山賊の砦に突撃した挙げ句、罠にかかって包囲され、どうにかこうにか副頭目をひとり倒してお市から「さすが長政さま」とか賞賛されてたり、「殿の優しさが裏目に出ねばいいが」とか部下から心配されてたり。ボス戦とかやってると、いきなり馬に乗って乱入してきて、「お市は某(それがし)が守る!」などと武器を振り回しています。しかも的確に頭目とお市の間に割り込んでくる。「邪魔じゃあ、このバカ殿が」と思うわけで。「無双」シリーズをやった方なら、徒歩で戦ってる者同士の間を馬で駆け回られるとどれだけ鬱陶しいかお分かりいただけるかと。敵なら撃墜できますが、味方は当たり判定ないしなあ。どっかネジの緩んだバカ殿にお市は賞賛の声を挙げつつ剣玉を振り回していると、「仲がいいねえ。その幸せが続くように、僕が斬ってあげるよ」とかイカれたことをいいながら佐々木小次郎が乱入してきて長政を馬から叩き落としてくれたり。何となくウロ覚えですがこんな感じ。わはは。


 まあシミュレーションじゃなし、ゲームなんだからそうした展開やアレンジを楽しむのがいいのではないかと思うのですが、世の中そうじゃない人もいるわけで。ネットで「戦国無双2」関連の感想書き込みとか見ると「歴史好き」と自称してる人がモーレツにけなしてたり。川中島の合戦のときには直江兼続はいなかったとか、そーゆー類のことです。多分前回私が書いたような「愛」の字が兜にないこともこーゆー人は批判するんでしょうな。私は背中に書いてあったのが面白かったし、このゲームじゃキャラの正面より背中を見る機会の方が多いわけですから、目立つようにとの判断でしょう。事実、ゲーム雑誌に載ったいんたぶーでは、「愛」のことは書かれていて、ちゃんと所蔵しているところの許可を得た上で同じ書体の字を背中に貼り付けたことが書いてありましたし、ゲーム内のデータベースではその兜の写真も出ます。ゲームなんだしそうしたアレンジとかあってもいいと思うのですよ、私は。その書き込みで「あれ?」と思ったのが批判のひとつに「秀吉と雑賀孫市が親友」というのがあったのです。「2」ではそのような設定になっていて、秀吉の勧誘で一時織田軍の傭兵となるステージ(ステージクリア後に契約が切れますけど)があるのです。それはそうと、孫市自体生没年月日が不詳という半ば謎の人物ですし、「孫市」という名自体雑賀衆の頭目が代々襲名していたようなフシもあるのです。信長に抵抗した人物ではあるし、時代的には秀吉と知り合いでもおかしくはない。というかですね、「1」でも感じたんですが、ネタ本があるんですよ。その本に出てくる雑賀衆の小隊長クラスの名前は「1」でもそのまま出てますしね。ずばり孫市を書いた小説『尻啖え孫市』って本です。しかも著者は司馬遼太郎だったりするわけで。孫市の小説は他にもいくつかあるんですが、共通しているのは女好きで鉄砲名人だってこと。んで、司馬の小説で出てくる設定ってのが秀吉との仲なわけです。秀吉に誘われて織田方に雇われたり利用されたりしますし、敵になっても憎めないというか、小説の最後は秀吉に招かれて雑賀を出たままついに戻って来なかったという終わり方なんですが。そうしたことをアレンジしているのが「孫市シナリオ」だと思うんですが。……司馬遼太郎読んでなかったんでしょうか? あるいは、歴史好きというのは歴史小説好きと=ではないのか


 実際「孫市と秀吉が仲良し」だって話がなかったとは限らないわけで、証拠がないからそれは起こらなかったのだといわれると、小説の立場ありませんわな。小説じゃあ証拠がないならその穴埋めをすることだってあるんですし、しかもそれがたくさんの人に読まれたりすると、共通認識として広まったりしちゃうこともあるんじゃないでしょうか。例えば美濃の油売りから一代で大名にのし上がったとされる斉藤道三。司馬の『国盗り物語』とか有名でしょうかね、信長の舅でもあります。この斉藤道三の国盗り、実際は親子二代に渡っていて、道三は国盗りの後半部を担ったというのが現在の定説だったかと。じゃあ『国盗り物語』が何で一代の梟雄のように書いたかってえと、執筆当時親子二代に関する史料が出てきてなかっただけのことであります。逆にその説を取り込み、ろくろく知られてない道三の親父に関することを伝奇風にばかすか埋めていったのが宮本昌孝の『ふたり道三』だったりするわけで。前述の「秀吉と孫市」に関してもこういうことが起こりうるかもしれないし、私が知らないだけでそうした史料があるのかもしれません。道三にしろ孫市にしろ、私なぞこういう流れを見てると面白いなあと思うんですが、歴史好きの人はやっぱり怒るんでしょうかね。


 ロード・ダンセイニの短編集を無事購入。てか危うくカバーがぐちゃぐちゃのままになるとこでしたが。まだ読んでないですけど、目次眺めるだけでいい感じに仕上がってます。未訳だったものや既訳のものも新訳ですし。まあダンセイニだけに団精二の翻訳で読みたかったような気もしますが、別名義で去年書いた某妖怪大戦争のようなものになっちゃアレなんで。また「エルリック・サーガ」の新版もちゃんと購入。う、分厚い。旧版の2.5冊分くらいありますよ。フォントが昔よりデカいせいもあるんでしょうがね。エルリックは溜めておいて全巻揃ってから一気に行くとしますか。つーか、ダンセイニの方も読みたいんですがねえ。今回は三雲岳斗の「ランブルフィッシュ」11冊を読んでたんで時間がなかったのです。もっとも「ランブルフィッシュ」の既刊はこれまで何度も読んでいて、今回とうとう完結したということでまたまとめ読みをして大満足。簡単にいえばロボットを操縦したり設計したり整備したりする学校での青春ストーリー。冒頭は湾岸戦争のシーンから始まってそこに三体の巨大人型兵器が投入される話になり、設定が現実から枝分かれしていきます。三雲のシリーズでは一番好きなので、どうストーリーを持っていくのか伏線はどう動くのかとか楽しみに見ているのです。それがとうとうおしまい。完結編はスニーカー文庫には珍しく500ページを越えて「おう、分厚い」と思ったり。でも去年出た川上稔の完結編の半分だよなあ。ともあれダンセイニを後回しにして連続読みをしてた甲斐はあったかなと。次回も面白い本が読めるといいなあ。









 購入した本:
  三雲岳斗『ランブルフィッシュ10』、林トモアキ『お・り・が・み 光の徒』、長谷敏司『円環少女2』、宮崎柊羽『神様ゲーム3』、ロード・ダンセイニ『最後の夢の物語』、室積光『都立水商!』、上月司『カレとカノジョの召喚魔法6』、マイクル・ムアコック『メルニボネの皇子』


 読了した本:
  宮崎柊羽『神様ゲーム3』、三雲岳斗『ランブルフィッシュ1〜10』『ランブルフィッシュ あんぷらぐど』



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