2006年8月。


中旬。


 お盆の骨休み前のある晩、母上が帰宅した私を呼んでのたまった。「明日から温泉行ってくるから」傍らで父が頷く。何か前にもこんなパターンがあったような。んでどこの温泉かいな。「たしか……佐賀あたりだったと思うけど」「お盆期間中だから、福岡方面は混むんじゃないの? 佐賀方面に入ればそうでもないだろうけど」と佐賀国民の方々に失礼な発言。まあそれはそれとして、内国旅行せいぜい楽しんできたまえ。「ばーちゃんの世話頼むぞ」そういえば、その日ばーさんが日射病みたいになってふらふらしていたそうである。点滴とかもやったとか。


 前回ちらりと触れたような気がしないでもない、暑さとかでいろいろとろけた感じの「人妻・女教師・女子大生」とバカなメールのやり取りしてるうちに、せっかく熊本市内に戻ってきてるんだから、メシでもどうよということになる。「時間が合えば、ごはん食べに生きたいねえ」などと国語教師とも思えぬメールを返事をもらったり。たしかにごはん食べに生きるという生き方もありかもしれんが。共通の知り合いである看護婦系人妻とかにも連絡してみるが、結局誰も時間が合わず断念、残年。みんなお盆前後は用事があるのね。そんな中、私は四日間のお休みに突入。以下はそのテキトーなレポートである。


 ボーン休み1日目。最近パソのDVDドライブが調子悪い。データを焼き込んだDVD−Rが読めなくなる確率が高いのである。経験則から分かったのであるが、早朝パソ立ち上げしばらくは読めるが、入れ替えたりすると途端にダメになる。何度かクリーニングとか試したのだが同じ。こりゃ、中が熱くなるといかんのだ。人間と同じである。熱暴走である。ので、パソ屋へ行く。修理とかじゃなくて、第一内臓ドライブ修理に出したらパソいじりがしばらくできなくなっちゃうし、新規でDVDドライブ購入予定ですよ。昼飯食って、家を出ようとしたところ、ばーさんに呼び止められる。曰く「パックのでいいから寿司が食いたいので買ってこい」「アイスもつけろ」金をもらったが、DVDドライブ持って寿司買いに行かねばならんのか、わし。ともあれお出かけ、別件で私所望のCD探索の旅へ。amazonで買えるのは分かってんだけどねえ、自分で買いたいじゃん。って、何軒か回ったが見つからない、どころかCD売り場って縮小されてるのね、全体的に。諦め、そのままパソ屋へ。二軒ほど回って16倍速まで書き込めるやつが8800円だったのでそれ購入。ついでにRも買っちゃう。それを原付の足下に置いてとろとろとスーパーへ。寿司買って、アイス買って、寿司買って、アイス買って(←二人分買ってる)、溶けないうちに速攻です。汗だくになって帰って、ばーさんに寿司とアイスを献上する。寿司をひとつつまんで食べ、ばーさんのたまった。「もう食べきらん」っておい。私はアイスだけ食って、自分用の寿司を冷蔵庫へ。クーラーをちょいと効かせた部屋で優雅に成田良悟を一気読みする。うむ、おもろい。ばーさんはとろとろ寝たり、ぐったりしてたので、時折様子を見つつ、一日目終了。晩飯は寿司(パック入り)。CDはamazon。


 ボーン休み2日目。聞くところによれば、給油目当てで高速道路渋滞してるらしい。高速のガソリンの値段は一括で決めてるらしくて、そこの値段が一定期間ごとに時価を反映するっぽいのです。だからまだ安いうちにってことでしょうな。テレビでやってたのはあるスタンド、給油車が一日1700台くらいいつもより多いとか。あちこちで本をいじり回してたら、探していた「グインサーガ」を発見する。これで読めるざます。どこにあったかはともかくとして。図書館回りなどして帰宅。クーラーのちょっぴり効いた部屋で華麗に「グイン」等を読み出す。夕方になったので、ばーさんの様子をうかがう。まだ体調が戻っていないみたいなのだ。飯が食えるようなら、何か買ってきてもいいし、私がテキトーに作ってもいい。「ちょっときつくて作れそうにないから、勝手に食べてくれ」といわれる。「ごはんはあるから」「ギョーザが冷蔵庫にあるから焼こうか」布団から起きあがろうとするので、慌てて押しとどめる。いや、あんた飯作れないっていったばっかしやん。さらにしばらくして、「ごはんがある」発言を受けて、炊飯器を開いてみる。むあ〜っ。慌てて蓋を閉じる。ついでに目も閉じて(←しみた)、口も閉じて(←吐きそうになった)、思い出してみる。前日、炊飯器を誰も開けてない。なんとなれば、ばーさんは寿司しか食ってない。私朝食兼昼食はパンとラーメンだったし、晩飯は寿司だ。てことは、ここに入っているのは前々日の晩の残り!? 夜になったら父母が戻ってくることだし、見なかったことにする。気分悪くなりながら、冷蔵庫の中身を確かめ、ギョーザのパックがあるのを確認。主食がないなあ。米もナッシング。ばーさんの部屋からごそごそ音がするので、動けるようになったか、食欲もちっとは出てきたかと覗いてみたら、紙袋に服とか詰め込んでる。「何してんの?」「今から病院に行く。どうもいかん」差し出したのは病院からもらってきたとおぼしき「脳梗塞になったときには?」とかそんな感じの小冊子。手足がどうもしびれる、片目が見えにくい、と今更症状を訴えられる。タクシーを呼んで、さらにそろそろ国内に入ったであろう両親に連絡してみたりする。「おう、そりゃ大変だな。お前も付き添え。帰り着いたら連絡する」ぷちん。タクシーが来たので一緒に乗り込む。忘れずに、本を何冊か持ってきてる私。偉い(のか?))何故か関西弁の運転手の会話をテキトーにスルーしながら病院へ。日曜かつお盆の夕方ということで、人手も足りないようで、散々待たされる。ばーさんはぐったりしてたが、私は周辺観察に余念がない。脳外科と外科の前にいたのだが、猛烈な子どもの泣き声が中から聞こえてくる。別の子どもが担ぎ込まれる。脂汗だらだらで腹を押さえたおっさんが家族に肩貸してもらってやってきて、椅子に崩れ落ちる。「うーん、うーん」なんて唸り声、なかなか聞けませんよ。他にサッカーか何かやってたのか、そーゆーかっこの若人が熱中症で運ばれたりとか。やがてばーさんが中に呼ばれ、血圧測ったり問診されたりして、私は暇になる。周りに人も少なくなってきました。ので、持ってきた「グイン」をひたすら読むモードに入る。クーラーのやや効いた病院の待合室で黙々「グイン」を読む。なかなかばーさんが戻ってこないのに応じるかのように、「グイン」まったく話が進んでません。以下ネタバレなんで段落改め。


 微妙にネタバレ。ここで読了した三冊『流れゆく雲』『パロへの長い道』『豹頭王の挑戦』で起こったこと。
 1.「パロの真珠」が再会。某枝サーガの言及。
 2.ヴァレリウスらがパロへ帰国。
 3.ケイロニア首脳陣が、グインの行動に頭を抱え、嫁が嫌で逃げ出した疑惑浮上
 4.イシュトヴァーンが生還。
 5.クムに豹頭王に扮する旅芸人一座出現。
 ……文庫三冊でこんだけですよ? しかも2と3、4はめちゃめちゃ軽い扱いです。かなり物語のペースが落ち着いてきていて、だいたい始まってから作品内時間で7年くらい経ってるわけだしねえ。それにしても、読んだ感想としては、『豹頭王の挑戦』ってタイトル、グイン、何に挑戦しとんねん! ってとこでしょうか。まあ、「豹頭王が豹頭王に扮する旅芸人に挑戦」ってことなんですがね。笑わしてもらいました。表紙も賑やかだし、道連れも増えてるし、話はどうも避けようとしてたクム中央方面に進んで行きそうですな。次は10月かあ。


 おおっとカンワ・キューダイ。ばーさんですが、待ってる間点滴してもらってたようで、問診の結果等では問題なし。気のせいってことに。父母も合流し、相談の結果、入院させようということになる。どうもばーさん、心配性のケがあるらしく、ちょっと具合が悪いとひとりで悶々と悩み、心配ループに入って気分が悪くなるのである。本人が安心するので、入院してもらって、翌日担当医に詳しく診察をしてもらう手はずになる。病院に駆け込んで5時間後、ようやく私帰宅。メールのチェックとかして、シャワー浴びて、寝る。二日目終了。


 ボーン休み三日目。「墓参りに行くがどーする?」と問われ、「留守番」と答える私。病院から連絡あるかもしれんし、「死んだ人間よりまだ死んでない人間の方が大事である」と発言。実際はまあ東京だか沖縄だかにいる愚妹愚弟も帰ってきてないし、こないだ墓参り行ったし。レンタルDVD返さねばならんし。朝から靖国神社の中継があっていたが、お参りに行くのと心で拝むのと同じである、という気がするのだけどどんなもんか。まあネット参拝を受け入れる神社もあることだしねえ。ということで出かける両親を見送り、病院から特に連絡もないし、一応墓参りの前に病院に寄るとかいってたし、私も出かけることに。DVD返却して、いつもの本屋へ。奥の新刊本整理したりする机の横に9月の新刊案内ボードが立てかけてあったので、ヤンキー座りしてチェック。むう、昨年飲んだときに赤の御方が面白かったといっておられた恩田陸の『夜のピクニック』文庫化ですか。先月は『ロミオとロミオは永遠に』だったし、続きますねえ。あとムアコックの「エルリック」の4冊目登場。え、4冊目で『ストームブリンガー』? 今回の新版は6冊組で、旧版のラストのタイトルがもう来ますですか。てことは、5冊目からは外伝扱いってことか。あと、見間違いかと思ったのが、講談社京極夏彦の『陰摩羅鬼の瑕』文庫版で、こんな感じ。

 陰摩羅鬼の瑕    文庫版
 陰摩羅鬼の瑕 上 文庫分冊版
 陰摩羅鬼の瑕 中 文庫分冊版

 こんな感じで、一番下に載ってて、何だ誤植で上中下分冊なんだな、と思ったら次の列の先頭に「下」があって、何、分冊とノー分冊同時発売かよ!? とびっくりしたりする。これは新刊情報のコピーを早速もらって詳細をチェックせねば、と保留扱いしておいた本を手にレジへ向かう。そこにいたスダレでバーコードなおっさん店員に精算してもらいつつ、「9月の新刊情報ってもらえないんですかね」と問えば、「まだ何ですよ。23日過ぎくらいに出ると思いますけどね」「でもあそこにありましたよね」「今からあれを編集して切り貼りしてコピーするんですよ」それで一週間ってのは作業としてどうよ? いまいちすっきりしないままいつもの本屋を出る。帰宅してからも病院から連絡してくるとかいうこともなく、多分まだしばらく病院でのんびりするんだろうなあと思いつつ、クーラーをやや効かせた部屋でゆったり本を読んだり。するとケータイに電話がかかってくる。父から。墓参りの帰り伯父のところに寄って飲んでいて、もうそろそろ帰ろうかと思っていたのだけど、熊工が買ったのでまた飲み出した、という連絡だった。酔っぱらいである。6時くらいに今度は母から電話があり、「今から帰る」と宴会の残りをもらってくるので夜はそれを食えといわれる。しょうがないので帰りを待っていたら、通常1時間かからないところを2時間半待たされる。すろーふーどである(違う)。大したことは何もなかったはずなのに、どっと疲れた気がするのは何故?


 ボーン休み四日目。文芸部の後輩に『デュラララ!!×3』を貸す手はずになっているので、部室に置きに行く。途中、本屋で立ち読み。「電撃hp」で秋山瑞人と古橋秀之がシェアードワールドを始めている。中華風世界観で、時代やらを思い切り変えつつ展開していく模様。古橋は造語や派手な世界を描くのがうまいし、秋山はキャラ立てや細かい描写が面白い。二人ともすんごい好きなので、期待大。それにしても対談で二人とも作品数が通常のライトノベル作家よりもかなり少なく、二人合わせて他の人の半分になればいいなあとかいってるのには笑った。そんでふと隣の文庫棚を見たら、榊一郎と高殿円がやっぱりシェアードやってたりして、最近そーゆーのが流行ってるのかな、と思ったりする。ついでに別の雑誌に、でこっぱち、じゃないや、ホンコン、でもない、池上永一のいんたぶーが載ってたので立ち読み。『レキオス』の文庫版で女性科学者サマンサのコスプレが増えてる(裸エプロンが追加)という話を聞いてたまげる。文庫版買ってはいたがまだ読んでなかったのである。サマンサといえば池上の小説中で上位にランクインするくらいインパクトのあるキャラである。登場するたびに変なコスプレしてる人で、マッドサイエンティスト。コギャル女子高生「広美」を高性能スーパーコンピューター兼ペット「ろみひー」に生体改造したりとかしてますが。でもどうせなら、SF大会だったか京フェスだったかで言及していた「ろみひー」が空を飛ぶ初期バージョンを文庫で復活させてほしかったなあ。いろいろと満腹感にひたりつつ、熊大へ。じっとりと立ってるだけで汗が出てくる温室状態のサークル棟の真ん真ん中にある文芸部部室へ潜入。後輩に貸してた本をチェックし、リュックに詰め込む。くわー、重い。こりゃあ持ってくるのも大変だっただろうに。今度から人にモノ貸すときには加減を考えるべし→私。なんていうプチ反省は暑さであっさり蒸発するんですがね。成田本置いてみっしょんこんぷりぃと。ずっしり重いリュック持ってのそのそと部室を出て、出入口方向へ。すると、いきなり声を掛けられた。「すいません、ごめんなさい、ちょっとすいません、ごめんなさい」振り返れば、反対側の出入口におっさん。うわ、勝ち負けでいったら、知らない人に4連勝ですよ、私(←成田本を置いてきた後だけに成田ネタだな。「バッカーノ!」だね!)。こちらが足を止めたのを見て駆け寄ってきた。外見はベートーベンな頭のルー大柴にちょっと空気を入れた感じのアヤしいおっさん。「ちょっとすいません、ごめんなさい」6連勝ですよ。「明治に出来た赤レンガの建物はここにあるんですかね?」ちょっと片手を中途半端に差し上げて手首から先だらんとさせた感じで。それにしても、絶賛お盆休み中で人口密度が極端に減ってる区域に何故わざわざ入ってきてるんだ、このおっさん。事実、サークル棟には人の気配なっしんぐなわけで。それでも連勝中で多少気分がよくなっていた私は「えーと、それは写真とかでよく見るやつですか?」「そう、それだよそれぇ」まさしくルー口調。「そこにあるやつの次の門が赤門なんで、そこから道なりに行けばありますよ」「遠いんですか」「歩いてすぐですよ」友好的雰囲気のままエセルーと別れ、原付に乗ってゴー。途中、妙にとろとろ行ってる車があったので抜きにかかったら、運転席にいたのはルー。似たような頭で似たような雰囲気の人たちが乗っていた。家族連れなんでしょうな。夕方帰宅してみたら、amazonに注文してたCDが届いていたのでタンノーする。隣の部屋で何か母親が電話受けて大声出してたので何事かと思ったら、警察からだとか。印鑑とか放り込んだ小物入れを落としたのが届けられたとか。落としたことにすら気づいてなかったようで、落としたのは墓参りのハシゴ(数カ所回ってた)ときらしい。本人確認ができたので、「送ってもらえませんか」「取りにきてください」「代理じゃダメですか」「代理の方がいらっしゃる場合には委任状が云々」「もういいです、明日来ます」という話の流れだったらしい。伯父の家方面の警察署まで母上は赴かねばならなくなったわけで。父親から場所なんて聞いている。横にいた私曰く、「分からなくなったら、110番して聞けばええやん」かくして、休暇は終わりぬ。


 びっくりしたこと。新聞だか雑誌だかにたつみや章がいんたぶーされてて、彼女が熊本市議会議員だと初めて知ったよ。くわー。たつみや章の『ぼくの・稲荷山戦記』が文庫化されたからみなのだが、それは「講談社児童文学新人賞受賞作」とかあちこち書いてあるのに、同じ日に同じ文庫で文庫化された私の好きな竹内真の『じーさん武勇伝』には「小説現代新人賞受賞作収録!」とか書いてないのは何故なんだろう? 講談社、新人賞差別してるんでしょうか。ちなみに『じーさん武勇伝』の「解説」は本人書き下ろしの新作短編だったりしてびっくり。こんなんも珍しいよね。電撃文庫で高畑京一郎が『タイム・リープ』文庫版でやったのくらいしか思い浮かびませんです。


 お盆明けくらいからそのスジで話題になっているのが、惑星の定義が変わるかも〜、太陽系の惑星が増えるかも〜、というニュース。国際天文学連合で提案された話で、プラハで今やってる総会で現地時間24日に採択されるかもよってことらしい。そうすりゃ、これまで冥王星の衛星とされていたカロンが惑星にクラスチェンジして、冥王星との二重惑星になったり、火星と木星の間の「惑星」セレスが出現したり、「第10惑星」ゼナが第12惑星としてデビューしたりするのです。まあ冥王星は惑星としては小さいし、公転周期も海王星の内側に食い込んだりするしで、惑星としてはどうよ? なんて気がしますけどねえ。他にも惑星候補は十以上出てくるらしい。何だかワクワクしてきちゃうですよ。それにしても、「ゆとり教育」がなくなった若人は、さらに惑星の名前とか覚えにくくなるわけですな。「水金地火セ木土天海冥カゼ」?
 一部では「セーラームーン」はどうなるのか? なんて話が出てて笑ったり。ああでも、何かすげえワクワクです。どうなる、24日!?


 どーゆー流れか多田克己の本を買ってぱらぱらめくってたら、京極の本が読みたくなる。図書館で借りとけばいいものを、ついブックオフで買ってしまった。夏の暑さのせいだということにしよう。暑さには気をつけませう、皆の衆。脳みそとろけてるので。







 購入した本:
  竹内真『じーちゃん武勇伝』、多田克己『百鬼解読』、恩田陸『ドミノ』、京極夏彦『巷説百物語』

 読了した本:
  西澤保彦『黒の貴婦人』、成田良悟『デュラララ!!』『デュラララ!!×2』『デュラララ!!×3』、栗本薫『流れゆく雲』『パロへの長い道』『豹頭王の挑戦』、沖田雅『オオカミさんと七人の仲間たち』、久住四季『トリックスターズM』、さくらももこ『焼きそばうえだ』


←少し過去へ    少し未来へ→

 戻る