2006年9月。


下旬。


 台風時のリベンジってことで、隣町図書館へ。ほけほけと文庫棚を眺めていると、小さな男の子が文庫の背に手を当ててだーっとそばを駆け抜けていった。手の感触が面白いのだろうか。んで、図書館の棚には作家名のプレートがあるわけで、やわやわな手がやわやわなプレートに当たるたびに男の子ははしゃぎ、プレートが引っこ抜けて床に落ちる。端までに五、六枚が散らばりました。とりあえず一撃食らわせてやろうかと思わないでのなかったんですが、プレートを一枚拾って、五十音順で作家名探して差し込む。二枚目を取ってふと顔を上げたら、棚の端で男の子がこちらを見ている。二枚目を戻したところ、少年が近くのプレートを取り上げて棚に差し込んだ。残りも次々に。そしてにっこり笑ってだーっと走り去っていった。何となしにほんわかした気分になって、彼が戻したプレートをすべて引っこ抜いて、「へ、へ、へみ、へみ、へみんぐうぇい」と呟きつつちゃんとした場所にちゃんとした方向で差し込みなおしたとさ。本を選んでカウンターに行ったところ、職員の人がいきなり「いつもありがとうございます」って、図書館でそんなこといわれたのは初めてですよ。たしかに私こっそりいろいろと意見したり、本の並びをちゃんとしたりしてますが(その日も何冊か修正食らわせた)。本の貸出処理をして「今回の分は〜までにご返却ください」追い打ちで「気を付けてお帰り下さい」何だか扱いが丁重でございました。ちょっといい感じ。まあ、某ガソリンスタンドに早朝仕事着で給油しに行って、「気を付けてお帰りください」とスマイルされ、「これが朝帰りに見えるのか貴様」と首根っこつかまえて揺さぶりたくなることがままありますが、やっぱり時と場合を押さえた丁重さはいいですなあ。


 ネットでちょろちょろしてたら、京極夏彦の新刊が出るニュースを拾う。ほう、『邪魅の雫』ですか。何となく、「ジャミー」とかいいたくなってしまうのです。「ジャミラ」だったら、雫で倒されそうですが(←何の話やねん)。それにしても、「大磯・平塚地区限定特装版」同時発売ってのは何なんだろうか。まあ今回の舞台になっているからでしょうが。ちなみにこの特装版、出版する講談社BOOK倶楽部でも予約不可、Amazonでも予約不可、キ/クニヤにいたってはリストに載りさえしてませんでした。ううむ。うろついてたら「ジャミー」の予告ムービーに辿り着き、京極夏彦朗読のイメージなむうびいを堪能したり。結構いい感じですよ。


 いつもの本屋であつかましく編集コピーされたばかりの新刊情報をもらう。おおよそのチェックは前回ヤンキー座りでやっていたのだが、忘れてたり見落としてたりしたのもいくつか。最大のものは、竹内真『自転車少年記』でしょう。好きな作家の好きな小説ですし、単行本も何度か読んでるんですけどね、買い決定。ちょい前に『じーさん武勇伝』も出たことだし、あとは『風に桜の舞う道で』あたりがほしいところですが、年内くらいに出てくれるといいなあ。あと、徳間デュアルで古橋秀之の『冬の巨人』がまた載ってました。年の初め頃とかにも書いてあったんですが、今度はホントに出るんだろうな? 他には北方謙三の「水滸伝」の文庫化が開始。てか私としては続編を早いとこ始めてほしいところですがね。あと、創元でコナン全集が始まる模様。コナンといえばむやみに元気な子どもが裸足で駆けてく、振り向けば白い砂、私の足跡、ではなく(途中から何だか違うものが混じってるし)、ムキムキの、かつてシュワルツェネッガーが演ったりした方のコナンですな。でも私、旧版持ってるしなあ。何ぞおまけがつくんでしょうか。他に気になったのは、ちくまの『官能小説用語表現辞典』? いやいやどんなもんか一度眺めてみたくはありますが、買おうとまでは思わない、かな。ソフトバンクのGA文庫で花田一三六の『野を馳せる風のごとく』、ホビージャパンのHJ文庫から五代ゆう『はじまりの骨の物語』が出版されるのですが、こーゆーラインナップを見てると、後発は大変だのうとか、時代の流れみたいなもんを感じる今日この頃。前者はかつて雑誌「ザ・スニーカー」の読者短編投稿で圧倒的強さを見せた花田一三六の長編デビュー作、後者は五代ゆうのデビュー作で、富士見ファンタジアの大賞受賞作(しかもこの賞では初の「大賞」だったはず)ですからねえ。まあ、そうした埋もれちゃった作品を掘り起こしてくれる、という意義はあるわけですからいいんでしょうけど。んで、今月の本来の目玉であった成田良悟の『バッカーノ! 1934獄中編』ですが、別ルートからの情報で12月に『バッカーノ! 1934娑婆編』が出ることが判明。『1931』のときは『特急編』と『鈍行編』が作品内同時進行で絡み合ってましたしねえ。同じようになるのか、続き物になるのか分かりませんが、『獄中編』は買って2ヶ月寝かせることになりそうですな。


 とある水曜日。朝っぱらから原付を走らせていて、ふと気づいた。うわっ、今日借りてたDVDの返却日だった。用意してたのに、忘れてきましたよう。すでに戻れる位置ではなかったので、夜帰宅してから一番近いお店に返却に行くことを脳内メモする。そうした忘れものとか滅多にないミスなんですがねえ。疲れが溜まってきてるのかしらん。と思っていたら、原付のエンジン方面で異音。がすんがすんと停止。うえっ、ふ、踏んだり蹴られたりですか。とっさに原付停めて歩道に上がり、そばの団地駐輪場に押していく。停車して、鍵をフロントに隠して、近くのバス停までだーっしゅ。時刻表を見れば、あと20分くらいある。こんなこともあろうかと持ってきていた本を読むことに。以前あったよーな展開だが気にしない気にしない。一休み一休み。10分くらいして、私の中のちょー感覚がせっついたので顔を上げる。ちょっと前の交差点の向こうでバスが信号待ちしておる。行く先は私の目的地に合致。ほう、少し早く来ましたか。……や、ウインカーが点滅してますよ? 本持ったまま私は猛然とだーっしゅ。その交差点でルート分岐するのです。私がいた方だとあと10分待たねばならんのですが。交差点を渡って、曲がった先、ちょい離れたバス停まで走って、追いついてきたバスに無事乗車。ふいー。おかげで時間にたいして遅れることもなく到着。9時過ぎにバイク屋に電話して、原付を回収してもらう。夕方電話で確認したら、部品取り寄せで土曜くらいまで時間がかかる、代車は今はない、代車か修理の都合がついたら連絡するとのこと。バス通いかー。


 水曜、夜。バスに揺られて帰宅。途中、本をずっと読んでたんだが最後気持ち悪くなったのは体調不良のせいだろう、そーゆーことにする。ビデオを持っていってさえおれば、バスを途中下車して返せたものを。家にいた母親に車を出すように要請する。場所を告げると、「ちょっと遠いねえ」とぶつくさいわれるが承諾させる。私が晩飯を食してから出る手はずに。んで食事してる間、母親はがさごそと何かをやっていたが、これが東京にいるやらいう妹へ送るものだという。段ボール一箱。「車に積んで。途中郵便局に寄るから」うわ、母上さま、私が一緒に出るから急遽段ボール詰めしましたわね。こちらも車出ししてもらうから文句もいえず、やたら重い箱を車に運ぶ。もちろん、途中、郵便局内(夜でもばっちりのとこ)にも持ち込みましたともさ。ビデオ屋に行く途中、見通しのよい直線でいきなり右手のコンビニから左ハンドルな車が前だけ見て突っ込んできて(ウインカーも確認もなし)、危うくぶつかられそうになるわ、夜だってーのにグラサンかけた運転手がにらみつけてくるイベントがあったり。さらにビデオ屋に行ったら、借りたDVDのケースが中身を異なっていることが発覚。借りるときに洋画のケースに入ってて、中身のディスクもその映画だったんで、そのままレジに行ったわけですが、実際は、バーコードとかついてるプラケースだけが違っていた模様。中身洋画で、ケースだけ戦隊特撮ものでした。まあ中身が目的にかなっていたので問題なしだったんですが。いやはや、この日は盛りだくさん、てかもうたくさんって感じでござりました。


 木曜、金曜はたいしてイベントもなかった。が、ルートがいつもと違うので通常は寄らないコンビニに立ち寄り、毎朝「ありがとうございました! お気を付けて行ってらっしゃいませ!」と店員みなに見送られるのはどーしたものか。ふと思いついてバイク屋に電話。「上向きの方のライトが切れてたんで、ついでに替えといてもらえますう?」この不用意な追加注文があんなことを引き起こすとは思ってもいなかったのです。


 土曜。何事もなかったかのようにバスでお出かけ。お昼時。「昼飯どーする?」という話が飛び交う。最近周囲でブームになっているのは「熊本バーガー」とやらで、名前から想像するに馬肉を辛子レンコンで挟んだものにたいぴーえんがついてるもの、なんてことはないようで、ひとりがまとめて買ってくることになった。「どーする?」と問われてまだ食べたことのなかった私は、こういった場合の目上の人に対するマナーに従い、「ごちそうさまです」とにこやかに。おごってもらうことになった。チキンバーガーの単品をいただいたのだが、おいしかったけど、結構腹にずっしりとくるようで周囲は「これひとつでお腹一杯」といってる中、「私ならセットでも問題なし、てか単品なら二つでもいける」と思っていたり。


 土曜日。昼過ぎ。2時には半ば無理矢理フリーになる。市立図書館に予約の本が届きまくっているためである。いつもは平日の閉館間際に駆け込んだりしてたのだが、今はバスなのである。原付が戻ってきてからでも十分期限には間に合うのだが、別に予約したい本が何冊か出てきていたので、今来てる分を借りないといけないのだ(予約枠がすべて埋まってる状態なので)。ぽてぽて歩いて九品寺交差点まで来たところで分岐点。電車通り沿いに味噌天神方面から向かうか(電車を使うor歩き)、産業道路沿いに消防署のとこから曲がるか(バスor歩き)、どっちを選んでも最後は歩きになるし、25分くらいと見積もる。ううむ、やや迷った末、全然違う選択肢を選ぶ私。ありがち。選んだ道は、両者の間を斜めにブッちぎるコース。多分ここに道があるはずだ、といういつもの勘に従い、本を詰め込んだ袋持っててくてくてくてくてくてくてくてく歩いていく。具体的にはダイエーの横を抜けて、九州学院のそばを抜けてったらあら不思議、10分で着いたよ。びば私の勘。本を受け取って、今度は逆戻り。10分で九品寺交差点、さらに10分プラスで街中へ。三年坂の某TSUTAYAへ。新刊コーナーなどを眺めていると、新書のところに細長い段ボールケースが。む? こりは西尾維新の「戯事シリーズコンプリートBOX」では? 限定で通販じゃなかったんか? などと思いながらぶらぶら。さらに二軒ほど本屋をうろついて、バス停へ。2時間半くらい歩き回っていた計算。この間、バイク屋から連絡もなかった。前に修理出したときは夕方6時半くらいに電話があって7時頃持ってきてもらったこともあったしなあ。しょうがない、とバスに乗る。乗客がやや少なくなってきた頃、座席で本を読んでいた私を、ちょー感覚がせっついた。顔を上げて外を見る。あれ? 何か違うコースですよ? 私、バス間違えましたか? 私が下車すべきバス停に到るコースはいくつかあって、そのうちのひとつをさっきまで走っていたはずだが、どうも違う道に入っている。具体的にいうと、私が顔をあげたときの交差点を曲がらずに直進したようで。や、これはとっとと降りて、正しいコースのバスに乗るべきか、一番家に近いところで降りて30分くらい歩くべきか。などと悩んだのも束の間、みょーな違和感を覚える。数秒後、「次のバス停案内」&料金表に表示のバス停が、今まさに通過しようとしているバス停と違うことに気づく。こりはもしかして。そんとき乗客は四人くらいだったんですが、私より先にどっかのおばちゃんが大声で「これ、○○行きじゃないんですかね?」すかさず運転手、「○○行きですよ」と返答。んでほぼ同時に私を含めた乗客何人かが「道、違いますよ」と突っ込んだ。「……え?」「ここ、××に行く道じゃないんですか」「……あ」運転手絶句。その間、バスはひた走るわけで。「……すいませんうっかりしてました」すぐにUターンしようとしたが都合のいい場所がなく、さらにバス停を二つ通過。ぐるりと回って元の道へ。バス停がわりに多いコースで、そもそも客の少ない地帯だったから、全体で多分、五分くらいのロス? その後降りる客降りる客に「すいませんでした、到着しました」と謝ってたのです。それにしてもコース間違えた運転手は初めて見ました。多分、始末書とかなんでしょうねえ。


 家に着いても、まだバイク屋から連絡がない土曜日。こちらから電話する。すると「すいません、部品の追加注文をしたのでまだできてないんです」「いつできます?」「火曜までには」ごわっ、都合一週間? 「別の支店で代車が空きましたんで明日には持ってこれますけれど」「お、お願いします。明日の昼くらいには出かけたいんで」「分かりました。お昼までにはお持ちします」ぷちん。これ、ほぼ確実に、ライトの部品ですよなあ。リクエストしたせいで数日も延びるとは。まあ代車が来て多少楽にはなりますが。いろいろイベントがあるのう、と思ってたら、夜になってぱんぱかぱ〜ん、今旬のびっくりどっきりネタ〜。朝フツーに会社に出かけていった父上が、夜、頭を丸めて帰ってきました。青々。高校以来だそうで、どういった心境の変化なのか、薄くなってきてたのを開き直りなのか。「心機一転」とかいってましたが、いったいどこへ転がっていくのやら








 購入した本:
  野中幸人『[高機動幻想ガンパレード・マーチ]シナリオブック1「夢散幻想」シナリオブック』『[高機動幻想ガンパレード・マーチ]シナリオブック2「少女&英雄幻想」シナリオブック』、川口士『戦鬼−イクサオニ−』、花凰神也『死神とチョコレート・パフェ』、河屋一『輝石の花』、五代ゆう『〈骨牌使い〉の鏡V』、古川日出男『サウンドトラック(上・下』、田中天/F.E.A.R.『東邦の快男児』、穂史賀雅也『暗闇にヤギを探して』、番棚葵『戦え! 松竹梅高等学校漫画研究部』、ピアズ・アンソニイ『名誉王トレントの決断』、G・R・R・マーティン『七王国の玉座X』、矢野俊策/F.E.A.R.『明日へのプロファイル』

 読了した本:
  小路幸也『ホームタウン』『HEARTBEAT』『東京バンドワゴン』『Q.O.L.』、田中天/F.E.A.R.『東邦の快男児』、番棚葵『戦え! 松竹梅高等学校漫画研究部』、柴田錬三郎『顔十郎罷り通る(上・下)』


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