2007年10月。


中旬。


 念のためいっておきますよ。たしかに最近ミッションが忙しいことは認めましょう。ナイトウォーカーな趣味ができたのでそれをやってるってのもありました。でもねえ、ミッションの調節して、時間配分して、ちゃんと前回の更新日帰宅しておるのです。という話から始めてみんとす。


 前日までにいくつかの記事をちょこちょこ書いていたので、あと2、3時間あれば余裕ざますと見積もって6時頃に帰宅。メールのチェックだけして歩きに行こうとパソ起動。来てたメールが、研究室の卒業生の方からで、「今度披露宴をやることにした。貴様を招待してやるからありがたく思え、がはは」的な内容。広告とかのデザインやってる人で、親しくさせていただいているのだが、そういやしばらく前の年賀状に「同棲中」とアホみたいにデカデカシンプルなデザインで寄越された記憶がありました。お相手はそのときの人ですかいな、ととりあえず慌てて「祝」だか「呪」だかで始まるメールを送りつける。それからぽてぽて散歩に出かけて無事帰宅。食事を軽く摂って、パソ再起動して先のデザイナーの人から来てた返信で1月頃の予定らしいとかいくつか情報を得たので、さらに返事を書く。それからようやく「旬」の続きを書くぞーとぱちぱちソフトを立ち上げてたら、どこからか女の人の声がする。何事かと思ったら、ケータイの留守電にメッセージ録音真っ最中。慌てて耳に押し当てたところ、「いいよね?」で電話が切れた。な、何が? 誰からかというよりも何が「いいよね?」なのか気になったので、即座に留守電を再生。「えっと、お久しぶり、○○です」や、たまにここのページでも登場している人妻女教師の人ですよ。そういやこの方も研究室の卒業生。「突然なんだけどMさんが至急連絡を取りたがってます」Mさんも研究室の卒業生で、共通の知り合い。たしか関東方面で電波なお仕事をされていたと記憶。「で、携帯電話の番号教えました。事後承諾だけどいいよね?」おう、つながりましたよ。なるほどそういう話でしたか。それにしてもいったい何事でしょう。パソの方から女教師の方に問い合わせのメールを送る。ケータイ使わなかったのは、Mさんが連絡してきたときに備えてのことです。それにしても何だか千客万来な晩ですなこりゃこりゃ。もしかしたらMさんや女教師と同期であるデザイナーの人の結婚話にからめての連絡とかかもしれませんが。ううむ。と待っていたらケータイ着信。


 ばっと取り上げてみたら、私のケータイに登録されてない03で始まる固定電話のナンバー。迷わず応答に入ります。とりあえず先制攻撃。「や、どうもお久しぶりです。でどうしたんです?」「いきなり何なん!? てか私、誰だか分かっとるん?」「いや、だって、Mさんでしょ?」「何で分かるん!?」どうやら職場電話だったようで、そりゃ登録されてるわけない。「んー、○○さんからさっき連絡入ってましてね。そんで3ナンバーだったし」「あ、○○ちゃんね。分かった。そういうことか。ああ、いやいやどうもお久しぶり」「はいはい」「積もる話もあるんやけど、ちょっと急ぎなんよ」「はあ」「源氏のさ」「は?」話の飛躍に付いていけなくなりかけたものの、どうやらうまく情報が頭に入りました。源平合戦とかの方じゃなくて「源氏物語」の方ですな、我々の間では。以下うろ覚えだが「最初の写本のさ、草書体ってあるやん。それを原本で読める人を探しとるんよ。できれば院生以上がいい。誰か紹介してもらえんかな」つーか、ここは人材バンクでもなんでもないんですけど。いや、それくらいだったらそっちで探せるだろうに、と思わないでもなかったんですが続けて、「で、急なんやけど、明日の昼までに連絡がつく人でないといかんのよ」「めちゃめちゃ急ですやん」「そうなんよー。××先生とかはダメよね。あの人漢文っしょ」とかつての師匠(←引退された)の名を挙げるMさん。「でも××さん、和物も大丈夫っしょ。源氏とか授業でやってたっしょ。ああでも連絡先とか知らないですね。○○さんの方はどうです。国語の先生とか同僚に当たってもらったら」「一応打診はしてみたんだけどねえ、期待薄なんよ」それでこっちに回ってきたんですな。「分かりました。んじゃ、知り合い何人かピックアップしてメール送ってみます」Mさんのケータイ番号を教えてもらい、できそうだったら直接連絡してもらってもOKということになる。


 それにしても、時折こうした依頼というか質問というかたまに来るわけでして。例えば真夜中に来たメールで「北斗神拳究極奥義無想転生を英語でいうとどうなるか。明日までに」とか。いやマジで調べましたが。あと、先のデザイナーからいきなりメールが来て、「どこそこの町について広告を書くことになった。ついてはその町の印象等を地元民の視点から述べよ」とか。そんときは三日間に渡って歴史地理風習風景施設交通過去話等を大量レポートにして毎日送りつけましたが。ともあれ、何年かぶりに話したことがアレだったわけですから、まあひとつやってみますか。


 ……という感じで。ピックアップしたのは2人。ひとりはしばらく前に大学院を卒業された元文芸部部長で日文系の人。もうひとりはさらにしばらく前に大学院を卒業された方で空海のスペシャリスト(K大ものの小石川氏のモデルのひとり)。空海の人の方は、前にメールもらったことがあるんですが、それが先代パソの中でクラッシュしてまして、このサイト立ち上げた頃にクラッシュしてますから、てことは結構前ですな。やむをえず、紙データでプリントアウトしてたのがあったはずと発掘作業、の前に元部長の方に先にメールを出す。急ぎなのでパソじゃなくてケータイの方に送りつけてさしあげる。ひひひ。空海方面のメアドは発掘作業の結果どうにか見つかったので、「ああでももしかしたら死んでるかもなあ」(本人じゃなくてメアドが)と思いつつもメールを飛ばす。ついでに女教師の人に「直接話を聞いたのでさっきの質問メールは返信不要でーす」とメールを投げる。そこからさらに手を打つ。話にちょこっと出てた先生の連絡先を探すのでーす。たしか北方で大学の先生をされてるって話を昔聞いたので、それを頼りに検索検索検索。著書とか学会とかばかり引っかかってくる中、ようやく先生の勤め先まで辿り着く。それからふと思い出して、20時48分掲示板に更新延期の記事を載せる。先生の勤め先と連絡先が分かったので、そこのサイトをずらずらずらーっと開きまくって、Mさんに電話したが留守電。折り返しかかってきて20:56。メールの返信待ちということと先生の勤め先を報告。電話切って思いついたので、開いているページを調べる。この勤め先のサイト、生きてるのかしら? 何年も前に更新停止したままだったら目も当てられないです。調べてみたら今年度の情報だったのでよし。先生の情報を探っていて、あれ? 慌ててMさんに電話→留守電→折り返しで20時59分。「なんかですねえ、先生の同僚の人で、今年源氏の授業やってる人がいるんすよ。しかも国語学で。先生に連絡して、紹介していただくってのが本命かもしれないです」「あ、そうなん。なるほどね」「明日平日だし、つかまる可能性高いかと」「もしかして今ホームページ見てる?」「はいはい」「ちょっと連絡先教えてくれん、代表の番号?」そういう展開を考えてやたらとページを開きまくって準備万端でございます。「代表より、先生にコンタクト取るんだったら学科の研究事務室に直で通した方がいいっしょ」念のため代表番号もつけて教えて差し上げる。それからまた待機。待機中に先生のご自宅の電話番号まで発掘してくる。まあこれは呼び、じゃなかった予備ルートってことで。


 待機してる間に、ちょっとお風呂入ったりしてたんですが、動きもないのでその後、ちょびちょび「旬」の文章を書いてみたりしましたが、どうにも落ち着かない。いややたらこまめにメールチェックしてたせいですが。21:41、メール着信。元部長の方ですな。ケータイに送ってよかった。内容次第では自分でお手伝い可能か可能な人を紹介できるかも、詳細を教えてくださいとあったので、まあそりゃそうだと思い、説明メールをがががががと叩いてる真っ最中、ケータイ着信、21:45。見ればご本人だ。出ると、「急ぎのようだったので掛けました」うわー、知ってたけどスーパーいい人じゃん。書きかけのメールをとっとと廃棄し、Mさんの素性と大雑把な依頼の内容を説明するが、考えるまでもなく、私、具体的な仕事の内容知らないんですな。第一、多分に専門的な話になりそうだしってことだし、お仕事電話ではあるので「じゃあ、こちらから掛けさせますので」ということになる。Mさんに電話→留守電と毎度の流れになるが、なかなかリターンが来ない。10:04、元部長にまだ返信がない旨メール送付、いつくらいまでなら電話して問題ないか問う。メール待ってる間に入れ違いで今度はMさんから返信。うわー、なんかばたばただ。状況を説明、詳しいミッション内容を求められてることを伝えてる最中に、元部長からメール着信、22:06。1時くらいまでなら起きてるということ。Mさんに元部長の連絡先と簡単なプロフィールを伝えつつ、右手一本でメーラーを操作して、右手一本でメール文をがちがち叩き込んで電話切ると同時に送信。22:19連絡取れた旨、元部長からメール。様子うかがいがてらメールをしたところ、ようやくミッション内容が判明。何でも「源氏物語」の古いバージョンで、ある単語の場所を探しているのだということ。なんじゃそりゃ、そんなこたあタイプされた古文本を一文字一文字突き合わせて行けば場所分かるんじゃないの? そのくらい時間があればやれるっしょ。 国会図書館の電子資料で見れるというので見てみた。……Mさん、私が悪かった。こりゃいかんわ。ネットで見たそれは、完全に文字がつながってて、古文ってことは句読点なしで、ぶっちゃけどの部分がどの字なのかということすら素人には分かりません。なるほど分かりました。これは元部長向きのミッションですな。調べ物とか熱心にやってくれそうだし。納得したので22:36Mさんに連絡して感触をうかがってみる。「いやあ、しっかりした人やねえ。落ち着いてるし。年下とは思えんわあ」と絶賛(事前にMさんより自称年下だという情報は流していた)。「今調べてくれてるんよ。いや助かったわあ。ぜひお礼をせにゃいかんねえ」すかさず私は応じて「そりゃたっぷりとお願いしますよ」と揉み手せんばかりに。「何がええかな。記念品とか図書券とかの方がええかな」「うーん、お金振り込みとかだと生々しくなるし。本好きなんで図書カードの方が喜ばれるかも」と二人してスゴイ勢いで元部長への報酬の密談中。「なるほどねー。分かった。そういう方向で」「よろしくお願いします」ちょっと肩の荷が下りた気分になり、「旬」の続きをぱちぱちと。22:41空海の人からメール着信。ご丁寧な挨拶の後、昨今は研究職との縁も遠離っているが、内容次第では自分でやれないこともないだろう。でも本職の人とか日文系の院生とかを引っ張った方がいいだろう、云々。ちょっと考えてMさんに再び電話。「空海の人からも内容次第というメールが来てるんですが、今回はキャンセルしていいですかね。それとも別口で頼んでおきます」「うーん、そうやねえ、もうやってもらってるしね。悪いけど、今回は大丈夫ってことでいいと思う。でもいざ何かあると困るんで保留にしておいてもらえる?」非常事態まで考えておられるようで。というか非常事態考えるんならもうちっと余裕もって話を振ってほしいよなあ。まあそういうことできないから非常事態なんでしょうが。ともあれ22:58空海の人にミッション内容と事情を説明、「今回は大丈夫っぽいけれど、また何かあったらお願いするかもしれません」という内容でメールして、私の方のミッションはあらかた終了する。力尽きて、寝る。「旬」の更新は予想通り無理でした。ちょほほ。


 朝起きてメールチェックしたら22:18空海の人から再度メールが来てて、写本とかの場所とかそうした情報が入ってたり。ううむ、いい人だ。で、フツーの日だったのでフツーにミッション場に行ってミッション遂行していたところ、11:52ケータイにMさんから留守電が入っているのをお昼に確認。何か中途半端な時間なんですが、こりゃ多分時差? 電波なお仕事だし。メッセージ再生、「どうも、Mです。昨日はどうもありがとう。おかげで何とかなりました。○○くん(←元部長)がよくやってくれてねえ。丁寧だししっかりしてるし」と元部長絶賛中留守電が切れる。まあうまくいったようでよかったよかった。ということでちょっと思い出したこともあったので電話してみる。しばらくすると本人が出たが、どうも職場の人と御飯でも食べていたのか賑やかな声が背後でしている。「留守電聞きました、うまいこといったみたいですねえ」「いやほんとに助かったわ。○○くんが実にいい仕事してくれてねえ」と絶賛するのを受け流しつつ、「で報酬の件なんですが」「あ、記念品と図書カードって感じで行こうかと思ってるんよ」「それなんですがね。送付先の住所とか分かります? 家に戻れば連絡先が分かるんでどうかなと思いましてね」「あ、連絡先聞いたんで大丈夫」「んじゃ、そちらはよろしく。あと空海の人にも繋ぎは残しておきましたんで、いつでも」「いやあ、ほんとにありがとね」「へいへい。んじゃまた何かありましたらいつでも」「了解了解」ということでミッション完全終了でございました。ちなみに、今回の私への報酬はいつものように友情:プライスレスな感じで。そういやデザイナーの人へのレポートも同じ形でしたなあ。ま、そんなもんだわな、お互いさまざます。というか今回程度のことで私に報酬が発生するようだったらエラいことになりますよ、めいびー。今回の件では元部長にお世話になったので改めてお礼のメールを送ることに。あ、あと、いい仕事していただいたようなので、私の一存でこのペエジ内における呼称を「元部長」から「旧支配者(仮免中)」にクラスチェンジ、コードネームはええとどうしましょうか、よし何となく思いついたので「千葉よりのもの」としましょう。謹んでお贈りいたします。
 

 朝っぱらから散歩しておりましたところ、住宅街の道の真ん中に茶色っぽい花のようなものが落ちている。近付いて見たら、花というか、花びらに見えた部分がやけにぶっとい。そう、まるで潰れた甲殻類のようで……ってカニじゃん。しかもこの潰れ方、中身が詰まったままぺっちゃんこ。ハサミがないが、と視線を動かせばちょっと先にそれらしきものが。むう。近付くとたしかにそれはカニバサミでして、や、そのすぐそばに、別のカニがぺっちゃんこに。てか、このハサミは二匹目のもののよう。何故朝っぱらの住宅街でカニがぺっちゃんこになっているのか、まだどこかにいるんじゃないかかにかにどこかにー、と視線をまったり周囲に走らせると、ちょっと離れて高くなった家の庭(塀なし)の隅にさらにカニが数匹(中身入りで)折り重なるようにしてぴくりとも動かないのを発見。ここから落ちたか脱走したかしたところを車に轢かれたんでしょうなあ。てかこのカニ、何でこんなところに。何かドラマがあったんでそうか。


 かように変なものが見られるところがまた楽しいわけである。先日、前からちょいと気になってた看板をしげしげと眺めてみる機会に恵まれた。「無添加住宅」というやつである。どうにも食べ物を連想して仕方がないネーミングであるが、多分有害物質を使ってないくらいの意味だろうと思っていたわけで。そんで眺めた看板の言葉「食べれるくらいに健康的な住まいはつくれないものか…。これが無添加住宅のはじまりでした」うわっ、この表現だと、看板後方に建ってるサンプル家、食べれるみたいですやん。戦国時代とかは城の壁に食べられるものを使って、非常時にそれ食えるようにしてたという話を聞いたこともあります。そっち系? 食べられる家といったらお菓子の家みたいなもんもありますが、もはや私には「でっかくてお高い非常食」にしか見えなくなってきた。そこで頭をよぎった一言「お菓子がないなら家を食べればいいじゃない」が自分ツボにはまったり。有害物質を使ってないってのは当たってましたが、これ食べられなければ訴えられるんじゃないか? ともあれ結構面白い看板でございました。が、心の看板ベストの地位は揺るがず。ベストは某駐車場の入口にあった「駐車場内でのすべての駐停車を禁ず」のまま。


 まあいつものことで、おかしなものを見るのは散歩してるときばかりじゃあございません。最近暗くなるのも早くなってきたようで、そんな時間に帰っておりましたところ、大きい道の端でスケッチブックを持って、手を突き出している青年がいる。や、ヒッチハイクですな。すれ違いながら思ったこと。その1。スケブ使うんだったら、もうちょっと太いペンで描かないと線がよく見えない。その2。スケブで目的地を示すんだったら、○とか△とか曲線とか直線とかの記号だか絵だかよりは文字の方がいいと思う。地球調査を終えた宇宙人が帰るコーヒーのCMをちょっと連想したり。もしかしたらうちうじんだったのかもよ。そのヒッチハイカーを目撃した数分後、私の目の前に真っ赤なぴかぴかの軽自動車が走ってまして、後部窓に紙が貼ってある。何カ所かをのり付けでもしてるのか、それをさらにワイパーで押さえてあって、紙そのものには大小の文字が書いてある。一番デカい文字がいくつか読めた。「無■■車禁■」その下に文字が書いてある。下のは注意書きか説明でしょうか。「焼肉定食」みたいな感じで穴埋めしてみる。ぱっと思いついたのは、「無賃乗車禁止」? なるほど、無賃乗車お断りの車なんですな。って金取ったらいかんじゃろう、白タクですやん。と車が停まったので追い抜きざま読み取る。「無断駐車禁止」でした。違反紙のようですな。それにしても端っこびらびらさせながら、走る赤い車。運転してたのは若いおねーちゃんでしたが、あの紙気にならないんでしょうか。


 別の日。原付でちょいと離れたところにある古本屋巡りをした帰りのこと。ぽかぽかと晴れた日で、前方の歩道にパイプ椅子に座ってる女の人がいた。ほら、よくあるじゃないですか。交通量調査とかそんな感じ。たまたまそこが交差点で赤信号になったので、女の人のすぐそばで停止した。交通量調査とちょっと違う点がありましてね。立て看板ってあるじゃないですか、細長くて電柱とか標識にくくりつけてあるようなやつ。あれを二枚、丈夫でくっつけて、脚立のように開いてあるものを想像していただきたい。看板と看板の間にちょうど△のスペースができている。くだんのパイプ椅子の女性はその△なスペースにに両膝突っこんで座っていたのです。ついでに膝上にはハンドバッグ。しかも何やらうとうとしていたらしく、はっと気付いて私と目が合って、気まずそうに目を反らす。交通量測定の道具なんてありゃしません。信号が変わったのでさっさと走りましたが、ありゃいったいなんだったのか。思いついたのが、あの立て看板、マンションだか住宅だかの案内だったようですが、違法だったのかなあ。つまり、とがめられたときにあの女性おもむろに立ち上がり、「これは私物です」といって立て看とパイプ椅子持って立ち去る役? ううむ、他に何か解釈はないものか。そんなことを思いつつ走っていたら、交差点に進入したところでバイクを止め、ヘルメット片手に、ケータイ電話で話してるおっさんを前方に発見。同じ車線にいるわけで、つまるところ、邪魔っ。クラクション鳴らしながら避けたものの、他の車は大して気にしてる様子もなくするすると車線変更して走っている。もしかしたらこの町ではこうしたことは日常茶飯事なのかもしれない。町が違うと文化風習が違うのだなあと改めて実感した次第。


 前回、けちょんけちょんにいった熊本市立図書館がまたしてもやってくれました。予約した本を取りに行ったのです。他に二冊ほど本を持ってカウンターへ。「予約の本をお願いします」とカードを出し確認作業。二冊来ているはずなので、おねーちゃんが背後の棚へ。もたもたしつつもようやく本が出され、読み取り機を走らせる。「……?」それを見ていた私は首を傾げた。何かおかしい。期限をいいながら本を寄越したおねーちゃんに私は問うた。「予約画面のままなんですけど、今のちゃんと入ったんですよね?」いつもは予約の本を借りたときでも貸出モードになってたような気がするんだが、いまひとつ何をおかしいと思ったのかつかめてなかったので確認。するとおねーちゃん自信たっぷりに「大丈夫です。これでもちゃんと読み取って入りました」係の人がそういうのだから、私の勘が外れたのだろうと思うことにして帰宅、の途中、画面上は最新データが反映されて出てくるはず→予約モード画面で入力が可能なら、データが入った時点で予約情報が消えるはずでは? といった流れで疑惑を抱く。私が見てた画面はまったく変化してなかったからである。家に辿り着いてパソ起動し、貸出情報を見る。「貸出冊数0」ついで予約情報を見る。私の手元にリアルに存在している本は「利用可能」のまま。このパターンは今までに経験したことがなかったので、その後の展開を脳内シミュレートしてみる。借りてきた本は貸出情報が入っていない→このまま持ってても咎められない→別の人の予約等が入ったときに図書館の紛失が判明する→というかこれらを読んでしまったら単に邪魔になるよなあ。もっとアレだったのは予約情報の方で、予約利用可能なのに本がないという状態→借りれないので予約期限が切れる→そこ紛失判明→予約書類が残ってる→こちらに問い合わせが来る? どっちにしろ面倒くさいのう。ワタクシ的には、むしろ予約期限が切れるまで予約枠が埋まってるのが問題。とっとと電話して、ちゃんと確認して大丈夫だといわれたことまで告げると平謝りに謝られる(そりゃそうだ)。今回は完全勝利ですな。借りた本の番号等まで教える連絡をして10分後、すべての情報がアップデートされましたとさ。めでたしめでたし。対応早いなあ、今回も。空いた予約枠二つにとっとと別の申し込みを済ませた私でございました。……それにしてもあのおねーちゃんの自信たっぷり度からすると完全に違う操作をばっちりだと思い込んでいたわけですな。しかも予約からの貸出という、結構多い作業で。あのおねーちゃんがいつから入ってるか知りませんが、こりゃ入力されないまま貸し出された本がだいぶあるんじゃなかろうか。しかもおねーちゃんだけじゃないかもしれない。市の施設であるから、それなりの研修とか説明とかあったはずだし、そっから間違っている可能性もある。で、そうした処理をされた大半の利用者は、気付かずに返却カウンターに持っていってカウンターに置き去り、図書館側は返却処理のときに「あれ?」と思いつつも書架に戻し、借りた方はまったく気付かないということになるんでしょうが。うーん、お粗末で危うい仕組みになってるんだなあ。


 いよいよ「ゴッド・オブ・ウォー2」の発売が迫ってきました。気分を盛り上げるため、とーとつに「グラディエーター ロードトゥフリーダム リミックス」に手を出す。映画じゃなくてゲームです。主人公奴隷。OPムービーが結構かっこいい。剣闘シーンなんですが、最後に敵を倒すのはシールドアタックというシブさ。楯をすくいあげるようにして、相手の顎をカチ上げるんですね。これ見ると、たしかに楯って防具じゃなくて武器にも使えるなあと思ったり。金属の板で殴る形だし。キャラ情報を入力してオープニングバトルを二つほどこなした後、興行師に買われてローマで剣闘士になる展開。買われたときの値段を自分の働きで返済すれば自由の身になれるというロードトゥフリーダムなストーリーですよ。操作方法はコマンドとかじゃなくてボタン押しなんでシンプルなんですが、細かくてまだ入り立てなんで難しめかも。攻撃は上部・下部・右・左を的にしたものですが、これが横から後からも可能。それぞれに防具が付くとダメージがなかなか通りません。で武器がおおよそ四パターンあって、好みのものを使ってるとパターン事のスキルが上昇して熟練していく。1:片手剣。もう片方で楯が持てるオーソドックススタイルで技が豊富。2:両手剣。楯はなく、攻撃が遅くなるがダメージ大。3:打撃武器。速度、ダメージそこそこだが、相手の防具を落としやすい。4:格闘系。攻撃速度は最速だが、ダメージが小さい。他に槍などもあります。面白いのは、単に勝てばいいってんじゃなくて、いかに勝つかってのがポイントになるとこ。立場的にはエンターテイナーなわけで、客にウケないとおひねりが飛びません、ボーナスも減ります。日頃カラダを鍛え、週に何度かある興行に連れていかれて戦闘、ファイトマネーの9割方を自分値段の返済に持って行かれる生活です。びっくりするほど戦闘中心です。で最初の方をプレイしたんですが、自然と私のスタイル、素手になってまして。いや何となく漢って感じするじゃない。ところがですねえ、素手ってシンドイですわ。このゲーム防具ついてるとこにダメージがほとんど通らない上、格闘系だと防具ついてないとこにもあんましダメージが行きません。てことは必然的に敵倒すのに時間がかかり、時間がかかるとボーナスに影響します。その上楯がないのでダメージを受けやすく、治療費がかかるという悪循環。ぐひん。ということに気付いたのは二度目の興行を終えた辺りでしたが。興行に行くと出る競技を選べるんですね。競技の種類がいくつかありまして、1:サバイバル。一対多、複数対複数などで行われる。勝利条件は、リーダーを倒す、制限時間を生き延びる、敵の殲滅など。2:デュエル。名の知られた剣闘士同士の一対一。下級とかだとまったく関係なし。3:模擬戦。過去の戦場をコロシアム内にジオラマ再現し、複数対複数で行われるらしい(←参加してないので分からない)。4:ハンティング。人対動物。複数対複数など。最初の興行で「二回闘ったら帰っていい」というような話をてきとーに聞き流して、サバイバルを二つこなし、報酬が手取りで600とか900とかいってるのに治療費300とか取られる。興行主に話しかけたら、「もう帰るのか?」みたいにいわれ、選択肢のひとつ(×ボタンで「帰る」)が見えてなかったというか○ボタン連打してたらさらに闘うことになり、結構ボコボコになって治療費1000。ようやく選択肢に気付いて生還。二回目の興行。調子に乗って高めのサバイバルやったら、ボコボコにされて大ダメージ。3000といわれた治療費が足りずにそのまま次の種目へ。選んだ種目がハンティング。味方二人で一頭ずつ出てくる牛を三頭倒す内容。素手で牛殺しという格闘家な方向に話が進んでますなあ。元々ボロボロだったが仲間の協力(というか囮というか犠牲というか)もあって一頭目撃破。二頭目が出てきて、分かったこと。突進してくる牛の正面からハイキックなどかますものでないよ。次の瞬間、牛の角を食らい、胴体にダメージ。引っかけられたままさらに胴体にダメージ、逃げることすらできないままさらにダメージ、ダメージ、ダメージ。感覚的には角で串刺しにされてる状態で牛が突進してるような。でとうとう力尽きました。死んでゲームオーバーかと思いきや、生き延びたらしく、医者のところで目を覚ます。ううむ、格闘系はキツいのう。パッケージにはハンティング対象として象が暴れてるんですが、ハイキックで象を倒せるものなのだろうか。も、もっぺん最初からやり直すべきか。というところ止まり。なんだか勢いで『剣闘士スパルタクス』とか買っちゃう。


 ファミ通などで1/4ページ掲載とかだった「GOW2」が2ページ掲載になる。クロスレビューは37/40で高得点。ううむ、なのに、期待の新作TOP20に今までまったく載らなかったのは、マーケッティングに欠陥があると思うがどうよ? 記事を見てたら、何かおっさんキャラが出てまして、や、バーバリアンキングに続くオヤジ系敵キャラですか。読んでみるにゼウスからの刺客でクレイトス先生を付け狙うらしい。オヤジの名はテセウス。ひーっ、ギリシア神話の英雄じゃないですか。ミノタウロス退治した人ですな。武器は槍で、魔法も使うし、下僕のミノタウロスを召喚とか書いてありますよ。ひーっ、ミノ召喚。夜、ネットで公式サイトチェックしてみたらさらにキャラ追加されてました。ボスキャラの一体にエウリュアレ? てか太ったおばさんの下半身が蛇ですよ。何だか「バロック」に出てきそうなグラフィックですが。ムービーがUPされてたので再生してみたら、すんげーいい動きしてます。妹のメデューサのするするした動きが前作で鳥肌立つくらいよかったんですが、おねーちゃんもかなりいいです。太い柱に巻き付いて上がりながら、クレイトス先生に石化ブレスを出したり、マウントされてもがいたりとか。もうひとつ別キャラが掲載されてて、ムービーから入ったら、よろよろと板背負った浮浪者みたいなジジイが「これ以上先へは進めぬのだ」と絡んでくる。何だこいつはと思ったらイカロスでした。背中の板みたいなのは翼。イカロスって太陽に近付きすぎて翼を接着してた蝋が溶けて墜死した人ですな。どうやらお父ちゃんに会いたくて冥界から戻ってきたようです。次のムービーでは延々落下するクレイトスの背中で翼が羽ばたいていて、その近くを翼なしのイカロスが落ちていきます。ははあ、これはクレイトス先生に翼をもぎ取られましたな、と思いつつ次を再生したら、延々落ちながらクレイトス先生にマウントされひたすらボコられるイカロス、というだけのムービー。ムービーでは出てきませんでしたが多分その後ひっくり返され、翼をもがれたと思われ。ダウンロード壁紙では翼のついた飛行形態クレイトスも公開されてます。ううむ、おっさんどこまで行くんだろう。いや、マジで楽しみ。ちゃんと私のPS2で再生できることを祈るばかりです。


 てことで、いつものペガ話へ。あらかじめいっておきますが、今回も脱線してますよ(おひ)。



************************************************************************************



 ぽてぽて散歩しながら、Aルートのイメージを詰めることにした。妄想エンジンが回り始め、展開した御題は「ミノタウロスによるペガサス狩りの方法」大雑把に方法を考えていたところ、ふとあることに気付く。


 「ミノタウロスは何故ペガサスを狩るのか」という根元的な問題。人は何故狩りをするんでしょうかっていったら、まず食べるためですよね。んん?

 ところで、この記事見てる人にはミノタウロスなんて改めて説明するまでもないでしょう。人と牛を合わせたような状態で、下半身、首から上が牛、腕と胴体が人間のような感じですね。さてここでひとつクエスチョン。ミノタウロスのベースは人なんですかね、牛なんですかね。外見は分かりました。じゃあ内臓はどうなってるんでしょう。胃袋が四つあって反芻したりするんでしょうか。ここでようやく上の問題につながります。ミノタウロスって何食ってるんでしょう?


 食べるために狩りをするのであれば、ミノはペガ食うわけですね。頭部は牛ですよ。消化器系はどうか分かりませんが、肉食うの? 脳内記憶を検索して情報を呼び出します。ミノはクレタ島のミノス王の王妃の息子として生まれ、粗暴だったのでイカレ発明家のダイダロスが命じられて作った迷宮ラビュリントスに閉じこめられます。ダイちゃんは迷宮作っただけじゃなく、ミノが生まれた直接原因(牛に惚れる呪いをかけられた王妃が思いを達成できるようにコスプレさせたりしてる)を作ったり、よけいなことしてるんですなあ。その結果ダイちゃんと息子さんはクレタ島に閉じこめられ、脱出しようと翼を作って飛んだはいいものの、息子さんは太陽に近付きすぎて墜落しったり(名をイカロス)。ともあれ、迷宮に生贄の少年少女が七人だか送られ、最後はそれに紛れ込んだテセウスに殺されます。そのためミノといったら迷宮の奥にいるってイメージがあるんですが。生贄の肉食ってたって確証が脳内情報で得られず。生贄送り込んでたのは人間側の都合で、ミノは食ってなかったということもありえるなあ。でもそうなるとそいつらどうなったんだろう。何となく、白骨死体がごろごろみたいなイメージがありますが、襲われたりしたらミノは正当防衛しただろうしなあ。それよりラビュリントスの換気とかどうなってるんだか。臭いが相当籠もってるような。いやいや待て待て、ラビュリントスって地上に作ったんじゃなかったっけか。だとしたら青空迷宮だったのかも


 閑話休題。出典については後で調べることにして。考えていくうちに、ミノ吉が菜食主義でもいいなあという気分になってくる。狩りを終えたベジタリアンミノたちが酒場とかで丼メシと葉っぱとビールで乾杯しているイメージが浮かぶ。ビールを飲むと肉が軟らかくなったりするのです。う、こ、これで行きましょう、ぜひ。


 13A−1 ミノタウロスはベジタリアンである。


 過去の設定で、

 設定4−1:ミノタウロスは人間と交易をしている「山の種族」である。
 設定4−2:ミノタウロスは人間とある程度言葉が通じる。
 設定4−3:ミノタウロスは大勢力ではない。

 というのがあるので、ここら辺から持ってきて、

 13A−2 ミノタウロスが狩りをするのは基本的に交易のためである。
 13A−3 ミノタウロスは肉を食べないので、ペガサスの皮膚や骨や羽などのみを用いて装飾品などを作ったりもする。
 13A−4 ミノタウロスはビールを飲む。


 などと変な方向に脱線してみる。や、これはこれで楽しい。


 後日、調査。アポロードスの『ギリシア神話』(岩波書店)によれば、ミノ吉くんは「彼は頭は牡牛であったが、他の部分は人間であった」そうだ。戦でなかなか乾酪しなかったアテネはミノスの祈りに応えたゼウスの呪いでヤバいことになり、降伏し、ミノスの要求を呑むことになった。


 (前略)ミーノースは彼らに七人の少年と同数の少女を武器を持たずにミーノータウロスの餌食に送ることを命じた。これは迷宮内に閉じこめられていて、この中に入った者は外に出ることができなかった。


 さらにテセウスがミノタウロスを殺すエピソード。テセウスに恋したミノスの娘アリアドネは生還したら自分を連れて行けと要求する。要求を呑むなら援助しようと。


 (前略)テーセウスは誓いをしてこれに同意したので、彼女はダイダロスに迷宮の出口を教えるように頼んだ。彼の教えに従ってテーセウスが入る時に糸玉を与えた。テーセウスはこれを扉に結びつけて、引きつつ内に入った。ミーノータウロスを迷宮の一番端に見出し、これを拳で打って殺し、糸玉を引きつつ再び外に出た。


 こここ拳でですか!? こうも「ベアナックルで殺りました」と書いてあると凄みのある格闘家みたいですがどうよ? まあ生贄に紛れ込むので武器が持ち込めなかったのかなと思わないでもないんだが、他の少年少女と一緒だったとは書いてないしなあ。あ、もうひとつの迷宮の問題については。


 ミーノースはテーセウスとその仲間の逃亡を知って、ダイダロスに罪ありとし、彼とミーノースの女奴隷ナウクラテーとの間に生まれた子イーカロスを迷宮内に幽閉した。彼は自分と子供のために翼を作りあげ、飛びあがらんとする時に、翼が太陽のためにその膠が溶けて放れないように高みを、また翼が湿気のために放れないように海の近くを、飛ばぬように、と子供に命じた。しかしイーカロスは父の命を無にして、夢中になってしだいしだいに高く飛んだ。そして膠が溶けて、彼の名によってイーカリアーと呼ばれている海に落ちて死んだ。


 脱出できないような迷宮に幽閉されてて飛んで逃げれたんだから、こりゃ青空迷宮でしょう。それにしてもテセウス、ワイルドなイメージになってきたなあ。と思いつつ、本棚を発掘したらブルフィンチの『ギリシア・ローマ神話』が出てきた。しかも岩波版と角川版で二冊。何だかなあとぱら見してみる。アポロードスは断片であちこちに情報が散らばってるんですが、ブルフィンチの方は項目別になってます。とりあえず岩波の野上弥生子版を。


 その時アテナイ人は、クレタの王ミノスに納めるべき生贄のためにひどい憂き目を見ていました。この生贄というのは、七人の少年と七人の処女から成っており、かつそれはミノタウロスといって、牡牛の身体で人間の頭をした怪物の餌食とされるため毎年送られるのでありました。


 はあはあなるほど……えっ!? 牡牛の身体で人間の頭? ミノイメージまた変な方向へ。さらに話は続き、


 この怪物は非常に獰猛な獣で、ダイダロスという人のつくった迷宮の中に置かれていましたが、その迷宮がまたたいそう巧みな組立で、誰でもその中に閉じこめられると、どうしても出口を見つけることができませんでした。ここにミノタウロスは怖ろしいうなり声をあげながら、人間の生贄で飼われていたのです。


 扱いがケダモノになってますよ。ちなみにテセウスが出てきてからは、


 (前略)王の娘のアリアドネはその席に連なっているうちに、深くテーセウスを思うようになりました。テーセウスも、彼女の恋に報いました。アリアドネは怪物を突く劔と、一つの糸毬をあたえました。その糸毬さえあれば、迷宮の出口が分かるのでありました。
 テーセウスは首尾よく怪物を仕とめて、迷宮から逃げのびました。



 ブルフィンチでは武器使ってるっぽいですなあ。いやでも、剣を使ったとはどこにも書いてないんで、持っていっただけで実は拳で殴り殺しているという叙述トリックなのかも。んじゃあってんで、角川の大久保博訳はどうなってるのか見てみた。


 当時アテーナイの人々は、クレーテーの王ミーノースに強いられて捧げ物として供えなければならない生贄のために深い苦悩にひたっていました。この生贄は七人の青年と七人の処女とからなっていて、それを人々は毎年餌食として頭が牡牛で体が人間の形をしたミーノータウロスという怪物に送らねばならなかったのです。怪物は非常に力が強く、気性も荒かったので、ダイダロスが作った迷宮に住まわされていました。この迷宮は実に巧みに造られていたので、一度この中に入れられると誰も独力では出てこられなかったからなのです。ミーノータウロスはこの中を歩きまわり、人間の生贄を餌にもらっていました。


 あれ? 今度は頭が牛になってる。どっちかが誤訳ですかな。テセウスのシーンは、


 (前略)ところがその席にいた王の娘のアリアドネーはテーセウスの姿を見て深く愛するようになり、彼もまたすすんでその恋に報いました。そこで彼女は一ふりの剣を彼に与えて、これでミーノータウロスと戦うようにと告げ、また、糸玉を与えてこれを頼れば迷宮から出てくることができますからと言いました。お蔭で彼は首尾よくミーノータウロスを殺して迷宮から逃れ出ると、(以下略)


 何だかやけに追加描写があるんですが、原文読んだわけじゃないんで、角川が多すぎるのか、岩波が少ないのか分かりませんが、角川版だと「お蔭で」といってるんだから、テセウスは剣で戦った可能性大ですなあ。時代的にはブルフィンチの方が後代だし、元々素手だったのが、「それはちょっと」ということで武器を持たせたのか、あるいは異本があるのか。ついでのついでに図書館で借りてきたミヒャエル・ケールマイアーという人の『あなたが知らなかったギリシア神話』(河出書房新社)なんて本をひもといてみますと、戦でアテーナイは降伏、アテーナイ王家を率いてたのはテーセウスで、


 ミーノース王はテーセウスと取り引きをし、毎年、娘と若者を九人ずつクレータ島に引き渡すよう、要求しました。ミーノータウロスの餌にするためです。


 暴れるミノタウロスについては、


 パーシパエーと牡牛の交わりからは、怪物が生まれました。ミーノータウロスです。ミーノータウロスは、頭は牡牛、体は人間の男の子でした。たいへん危険な存在で、息をのむほど醜いばかりか、パーシパエーが人の道に外れたことをしてしまったということをつねに目の前につきつける証拠でもありました。
 ミーノータウロスは頭痛の種でした。市に出ては、人びとに襲いかかりました。いつ暴れですか、分かりません。またしてもダイダロスが呼ばれ
(以下略)


 男の子の体ですか!? また意外なイメージが。その後話はダイダロスのことになってるんですが、思い出したようにテセウスの話に。


 ここで、テーセウスに目をとめてみましょう。テーセウスは迷宮に入りこんで、ミーノータウロスを見つけ、これを殴り殺しました。そして、市を怪物から解放し、アリアドネーとともにクレータ島をあとにしました。


 ベアナックルファイター復活ですよ、テセウスさん。ケールマイアーのこの本、今見たとこの前後を眺めてみると、糸玉についてはこれを考えたのはダイダロスなのだよ実は、みたいなことが書いてあったりする。ブルフィンチ版ではダイダロスのアイディアだって点は書いてないので、より古い版を検証して再話した可能性がある。というかそれぞれの後書きとか解説とか読めばもう少し流れが分かるのだろうけど、そこまでやってる余裕が今回なっしんぐ、そーりー。


 ギリシア神話だけでもこうしていくつかのバージョンを見るに、誤訳の可能性もあるがいろいろとミノタウロスの形状もパターンがあるなあ。他の小説とかゲームとかも考えると、ミノ吉の定義からした方が楽しいかもしれない。とりあえずベジタリアンってことは決めたけどねえ。


 振り返ってみるに、ミノ話メインで全然ペガ話になってませんが、まあ気にしない気にしない。次回はミノ考察の続きか、狩りの具体的方法について、になるかなあ。妄想エンジンの動き次第ですが。




************************************************************************************


 こないだ家の階段を登っていたときのこと。私の部屋は二階にありまして、夜は明かりもつけないで移動してるんですが、このときもそうでした。てとてと登っていて、ふと気付く。「あれ? ここに段あったっけ?」気付いた一瞬後、予想してたポイントに段がなくてですね、思い切りつんのめる。二階に着いてたんですわ。それにしてもおしいことをしました。もしそこに段がない、ということに気付いてなければ、そのまますたすた空中に上がっていたかもよ? などと阿呆なことを考えたり。


 それにしても最近突然寒くなってきました。一ヶ月以上前と同じ格好してる私はどうかと思いますが、風邪など引かれませぬよう。





 購入した本:
  恩田陸『上と外(上・下)』、吉田親司『彼女はQ(クイーン)』、佐藤賢一『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『二人のガスコン(上・中・下)』、J・フィニイ『ゲイルズバーグの春を愛す』『ふりだしに戻る(上・下)』『マリオンの壁』、桜庭一樹『赤×ピンク』、酒見賢一『語り手の事情』、林譲治『侵略者の平和1〜3』『暗黒太陽の目覚め(上)』、メアリー・スタントン『天界の馬』

 読了した本:
  沖田雅『オオカミさんとマッチ売りじゃないけど不幸な少女』、有栖川有栖『双頭の悪魔』『女王国の城』



←少し過去へ    少し未来へ→

 戻る