上旬。
前回銀杏の葉とか紅葉の話を書いた翌々日、ミッション場に行ってみたら、赤くなった方はほとんど散っててびっくりしました。
ほんとに小さい秋かよ!? いや、銀杏はたっぷり残ってるんですが。それにこないだ原付で走ってるときに山の方を見たらば、まだ赤いのが広がっていきつつあるところのようだし、視線を移せば町中の緑の中にぽつり、ぽつりとやたら黄色い樹が立ってたり。ううむ、
山のが散り始めるのは年明けかもしれん、と思ったりする。今年だったか去年だったか一月に銀杏が散り始めて、というような話を書いたような記憶もあるしなあ(調べたら今年の2月上旬で「1ヶ月くらい前」といってる)。ともあれ、急激に気温が落ちているようなので、ふぁんひいたあを導入する。弟の部屋に置いといたやつを扇風機と交換し、灯油タンクを取り出す。ずしっ。……あれ? 私、前に片づけたとき、灯油、抜いた、よね? よね? よね? なんか中身がえらい入ってるんですが。……た、多分親が来たるべき日に供えて注入しておいてくれたのでしょう。そう思うことにします。しばらく慣らし運転をしてみたが問題なさそうなので、そういうことになった。
ところで、私の部屋には目覚まし時計が二つある。片方はずっと使ってた時計が壊れたので、弟の部屋という名の物置に放置されていたのを使っていたというやつである。持ってきたときに中に入ってた電池が壮絶にサビてたという年代物。フツーに使っていたのだけれど、時々止まるようになったので、ディスカウントショップで格安の小さい時計を買ってきたのがもうひとつの時計である。テキトーに入力すると、こんな配置である。
塔塔塔 棚
塔塔 棚時
時 塔
私 塔
ベッドのヘッド部分の概略図(上から見たとこ)である。「私」が寝るときの頭の位置くらい。「時」が時計で、右の棚がベッドの縁にあたる。左の縁は時計のあたりだと思っていただければありがたい。棚のとこにあるのが隔離された古い時計で、反対側にあるのが新しい時計です。棚は部屋にいくつかある本棚のひとつですな(二つここにあるわけじゃない)。で、まあさらりと流すと、
「塔」=文庫50冊の積ん読タワーと考えてもらえればありがたい。つまり、本棚に入ってない積ん読本がベッドヘッド周辺に350冊程度ってことで。で話を戻すが、新しい小さい時計を買ってきたところ、止まりっぱなしだった古い時計が自己主張して動くようになったりなどの怪奇現象が多発していたのです(前に書いたような気もする)。古い時計の方は、今も変わらず、時々元気に動いております。新しい時計の方はというと、何やらでりけえとなようで。
ライトボタンを押すと、止まります。アラームが鳴るようにスイッチを入れると止まります。
次にぶん殴るまで動かないときがあります。最近ますますその傾向が強まり、気が付くと30分とか1時間とか遅れてるんすわ。夜中に目が覚めて、
「今何時であるか」と確認したあと、ちゃんと針が動いているか確認して、置いて、動いてるの確認して、寝直すという仕様。二台の時計が対抗するように動いてるときもあるし、両方止まってるときもあります。ううむ。夜寝るときにふと気が付くと時計の音が二つ聞こえてたりするんですな。さっきまでひとつだったのになあと思いつつ寝たり。もちろん二つが完全シンクロするってのはなかなかないんで、ちょっとズレて聞こえてくるのです。こないだは、
カチ
カチ
カチ
カチ
なんて鳴ってるのを寝るときに聞いていたんですが、
カチ
カチ
カチ
カチ
カチ
ガチッ
カチ
カチ
カチ
……っておい! 変な音したぞ。止まってるぞ。そのまま古い方は沈黙を保っていましたが、朝起きると動いていた次第。
新しい方も途中で15分ほどサボっていたらしいですが。かように何やら時の流れがおかしいいんまいるーむ。もう少しまっとうな時計でも入手するか、それともアラームはケータイのを使うかと考える昨今でしたが、ある晩、家で御飯を食べているとテーブルの上にミニディスクのプレイヤーみたいなもんがあった。んん? ぷちぷちで包まれていて、
説明書がセロテープで留めてある。あ、怪しい。説明書をひっぺがして見てみると、これが時計である。しかも電波な時計。や、
たいむりい、時計だけに。聞いてみると、こないだ隠遁した母の友人が形見分け、じゃなかったいらないものを皆に配ったらしい。「何だか分からなかったがくれるというのでもらってきた。いるならあげるよ」と母がいうので、ありがたくちょうだいする。説明書を見ると、電池が単三×2と書いてある。そばでビールを飲んでいた父に「単三の電池はなかったかね?」と問えば、「おう、ここにあるぞ」と近くにあった電池を放ってきた。「いや、これ単四だし」「ならないな」「役に立たんですな!」御飯をもくもく食べながら、テーブルを観察していた私ははたと気付いた。父が置きっぱにしているデジカメ。さっと取り上げて、ケースを開ける。「予備の電池があったよね。いただきー」単三電池ゲット。部屋に戻って説明書をつらつら眺めていたが、まあ実際触ってみないと分かんないよねーとぷちぷちをぷちぷち取って、時計の電池蓋を外す。……あれ? 何だか、こう、単三電池が入らない大きさのようなんですけど? 説明書を見る。単三×2としっかりきっぱり書いてある。手元の電池を見る。単三である。説明書と眺める。時計を眺める。そして分かったこと。
この時計の説明書はこれじゃありません。仕様が違う、電池が違う、ボタンが違う、操作法が違う、ついでに
メーカーが違う。うう。デジカメのケースに電池を戻し、先程の段階ではお役に立たなかった単四電池を装着する。しっくりきてがっくりくる。それから、ボタンをいくつか試しつつ、
ニセの説明書を脳内翻訳しつつ設定を仕込んでいく。電波時計は電波時計だし、機能的にもそうカッ飛び離れてるということもあるまい。それに、何より電波を聞いて自分で時刻とか合わせてくれる電波時計であるから、セッティングは最小限で済む。なので合わせたのはおおよその時刻と、アラーム、24時間表示といったくらいですか。その後何度か時刻の自動設定に失敗してましたが、どうにか受信してカレンダーの表示と時刻が正確になったのでよし。これで
目覚ましが三つになりました。三角関係です。
塔塔塔 棚
塔塔 棚時
時 塔
私 塔時
今、こんな感じですか。
電波の人(←人じゃねえ)はシャイなので音も立てないですが、今後どう展開していくのかが見物でございます。)
最近、ますますミッションが忙しい。理由としては安田大サーカストリオが揃って風邪だか腸炎だかでぶっ倒れてしまい、なおかつ大ボスも数日休み、その上さらに納品日が次々に重なっていくという修羅場ちっくもーど。何だかみょーに元気だったせいで、どかどか他の分の仕事がこちらに雪崩れ込んできて、うぐー、だいぶ疲れてきているのです。どのくらい疲れてるかっていったら、目が通常血走ってるとかそーゆーささいなことではなくて、
目覚ましのアラームに起こされる、という屈辱。いったいどのくらい遡ればそういう経験があったかってえと、うーん、ヘタすりゃ高校のとき? 他の人は屈辱でもなんでもないでしょうけど、体内時計がグレートだった私にしてみれば、ううむ。ちなみにそのとき
時計はひとつ停止、ひとつ30分遅れ、新人さんが頑張ってアラーム鳴らしてくれたのでした。いや、電波時計入れた翌日ですよ。
びば先見の明。さらに土曜日フツーにミッションに行ったら、6時間くらいパソ使って目眩がしたりとか。そんときは5時間経過した辺りでくらくらきだしたので、こりゃ無理と1時間でミッション畳みにに入り、とっとと帰ったのでした。ぐでー。ああ、次の土日も多分ミッションざますよ。納品直前だし。んでその次の土日あたりも多分。ぐったり。
ようやくお休みになったので家でぐったりしていると、「すいませーん」と小さな声がした。はて? 隣近所に来客でもあったか。みょーに子ども子どもした声であったが。しかも何だか近かったような、と二階にある部屋の窓からひょいと外を見ると、門の辺りから玄関の方へ小学生くらいの少年がぱたぱたと駆け込んできた。や、うちか。一階には祖母がいるが、耳が遠いのでチャイムを鳴らしても聞こえまいよ。てか、門にチャイムはついてない(玄関についてる)。回覧板か何かであろうかと思いつつ玄関に出る。すると、
小学生がひとり増えていた。見た感じ小さな兄と妹という感じである。流れとしては、門の辺りで呼ばわった。が反応がないので、玄関まで来た。ところがチャイムに手が届かなかったか。私が顔を出すと、おにいちゃんの方が「すいません、えっと、
ボールが中に入ったんで探してもいいですか?」とちょっぴりたどたどしく。我が家は角地で塀の向こうは道路なんである。あんまし車も通らないので子どもが遊んだりもする。よくあることだ。「あ、別にいいよ。どこら辺にあるか分かる?」「大丈夫です、分かると思います」すかさず妹の方が「わかるとおもいます」と続ける。でちょっと口ごもり、「ん?」「あの、
ボールっていってもダンボールなんですけど」「は?」なんだかトンチの効いたいいまわしだったわけだが、そもそも
民家の庭にダンボールが飛び込むという事態がよく分からないで目を白黒させていると、おにいちゃんは奥に入りかけ、そっから思い直して、くるりと向きを変える。そんで室外機と植え込みの隙間を抜け家の裏に回る。てか奥から行った方が広いし手っ取り早いのだが、いう前に走っていったのである。妹もとたとたとついていく。配置としてはこんな感じ。
塀塀塀塀塀塀塀塀塀
塀植植植植植植植植
塀植 妹 兄?
塀植 壁壁壁壁壁
塀植 壁
塀植 壁
塀植 壁
塀植 壁
塀植 壁
塀植 機壁
塀植 機壁
塀植 壁
塀植 壁壁壁壁壁玄関壁
塀植 私
門
門
とこんなところか。さっきのベッド図よりも分かりやすいような気がします。コピペすんのも面倒なんで概略でそーりー。私が様子をうかがっていると、妹さんの方が兄が行った方と私を交互に見てぱたぱたと手を振っている。「ありました!」と嬉しそうに報告する。すぐにさっさかさーとおにいちゃんも姿を現し、手にしていたものをこちらに見せた。なるほど、分かりました! おにいちゃんが持ってたのはたしかにダンボールで、ただしダンボールを丸く切り抜いたものだったのである。多分、フリスビーのように飛ばして遊んでたのでしょうな。思い起こせば私も小学校低学年ぐらいの頃、フリスビーでよく遊んでました。んでマジ投げして中指傷だらけになってましたが。ともあれ、「ありがとうございました」「ございましたー」という兄妹。「気ぃつけて遊べよー」というと、ぺこりと頭を下げ、門を出てこちらを見て、もっぺん頭を下げて行った。うむうむ。ちょっと癒された感じだったり。
原付で零下の道を走っているときについつい「
小さい秋ふぉーりんだーん、ふぉーりんだーん、ふぉーりんだーん」などと口ずさみ、口ずさんでいて気付いた。秋は fall として、それを掛けてるのかな。いやこれ何かネタが混じってるぞよ? ええと、「小さい秋見つけた」がひとつ。んと「ふぉーりんだーん」は「ロンドン橋落ちた」か? それをこのリズムは、何だっけ? としばらく考えて、「メリーさんの羊」だと判明。
いやもう訳分かんねえよ。どっから混じって出てきたものやら。寒さのせいかよく分からない思考に走る。っていつものことですかそうですか。
夜の散歩が賑やかである。あちこちでクリスマスイルミネーションが盛んなわけである。その話は前回もした。今回見たもの。二階のベランダから電球が斜めにがーっと下がってきていて、「
あれは進入経路のガイドビーコンではないのか」と思うことしきり。あるいは何故かサッカーボールの電飾。クリスマスに何ぞ関係があるのであらうか。あるいはサンタクロースの小犬くらいの大きさの人形が七人思い思いのポーズで光っている。いや、それ、もしかして
七人の小人のサンタバージョンか? 七人の小人っていったら、童話っぽいが、
七人のドワーフといったらゴツい感じがするのはどうよ?
んでそんな明かりを楽しみつつ夜の散歩をしていたところ、ぱらぱらと雨が降り出した。傘を持っていなかったため、近くにあったコンビニに駆け込み、やむなく家に電話を掛けて迎えに来てもらうことに。ケータイ電話の電池が切れかけていたため、ポイントを絞って分かりやすく説明したはずだが、
母上様はさんざっぱら迷い、そのため待っている間に雨が止むというよくある話に。母はケータイ電話なぞ持っていないがため、途中で電話してキャンセルするというわけにもいかず、ようやく来た車に乗る。帰宅途中で母が私の知らぬ裏道などを通り、わざわざ電飾の派手なところを回ったりしていた。
親子であると思う。帰宅すると入れ違いで父がウォーキングに出かけ、興奮して帰ってきた。「おい、あそこの道は通ったか」「んにゃ?」「
鉄塔がなくなったぞ!」「はえ?」しばらく工事などをしていたようだったのだけれど、夜歩いていてふと見たら、鉄塔が跡形もなかったそうだ。「はっはっは、そりゃあれだ。見落としですぞ」と私。「そんなはずはない」と主張する父。そんな親子の会話。
そんな親子の会話が交わされた翌日、帰宅したときにちょうどぱらぱらと雨がまた降り出したので、本日のお散歩は中止ざます、と晩御飯をもりもり食べていた。父が帰ってきて、「おう、今日は行かんのか」というので「雨っしょ?」「降ってないぞ」とにやり。「どうせ降ってもぱらぱらだ。そのくらいで歩かなくてどうする」と自信満々に出かけていって、10分ほどでずぶ濡れになって帰ってきた。「ずいぶんぱらぱら降ったようですな!」とにやにやする私。「風邪をひいてもつまらんからな」いやあなた、こないだまでげほげほやってたじゃないっすか。もう少し健康に気を遣うべきだと思うぞよ。
お休みの日の朝、てちてち歩いていると、くだんの鉄塔のところを通った。ふむ
、たしかに鉄塔消失事件ですな、こりゃ。まあ先を見れば、別の鉄塔に作業の人が何人か取り付いて解体作業っぽいことをしとるわけです。やあ、電線もつないでありません。どっかに迂回路があるんでしょうか。その先の鉄塔もすでに接続されておらず、さらに一本先でかすかに電線がだらんと下がっているのが見えます。ううむ、昔銀林のぼるの小説で『鉄塔武蔵野線』というのがあって、
鉄塔には雄雌があって(と主人公が勝手に分類する)、号数がついていて、どんどん辿って0号鉄塔を目指すという話でした。ああ、私が見ている鉄塔はすでに廃されて、どこにもつながっていないのだなと考えると、面白い。帰宅してごろごろしていた父に「早く行かないと次の鉄塔もなくなるぞ」といったが今度はあちらが信用しない。何故だ。夕方、もっぺん散歩で同じルートを通ったら、すでに二本目の鉄塔消失。今まで見慣れていたものが不意になくなると、違う景色に見えるなあ、と思う。
福田とかいうおっさんが今年の漢字は「信」だとかいっていたが、私としては、やはり「偽」であろうと思う。まだ結果は見てないけどね。信用してたものが崩れたりといったことばかりあったような気がします。というか、
客なめんな、と思うことがたくさんあった一年だったのでは。こないだネットでニュース眺めてたら、報道ステーションですか、マクドナルドの偽装だか何だかの報道でクレームが来て謝罪したって。クレームの内容はというと、すでに店辞めた人へのいんだぶーで、辞めた人が制服とかまだ持ってたってんで、バッジとか制服とか装備させたそうで、つまるところ「
辞めたやつが制服着てんのっておかしくないか?」だったらしい。担当者が制服とかのことを知って、「
それを着せた方が説得力が出る」と判断したものらしい。てゆーか、
辞めたやつに制服着せた時点で、「説得力が出る」と思う方がバカですよなあ。結局説得力もリアリティも欠けさせたわけだ。番組では不適切だったと認めたものの証言内容には間違いはないと主張したそうだが、ぶっちゃけ
そうした「偽装」をやった時点で信用されなくても仕方がないと思う。発言内容でも「そうした方が説得力が出る」とやってないと誰がいえるんだろう。うっかり吟味もせずに情報を飲み込まぬように注意しないといけませんな。
ちょくちょく暇見て、マーセデス・ラッキーを読んでいる。ようやく未読ゾーンに入ったところである。そこで、奇妙なことに気づいた。これまでの私の記憶からすれば、ラッキーの本というのは密度が高く、そこらのライトノベル作家なら5、6冊は書けるようなネタを一冊で終わらせたりして、なおかつリーダビリティーがあり、面白い、という感じだったのである。実際、未読ゾーンにあった『運命の剣』などもそうした感じだった。ところが「ヴァルデマールの風」三部作に入ってから、がくりと変わった。何よりびっくりしたのが、日本ではいまだに未完の、こないだ一部新訳復活した
『女王の矢』に続く二冊のネタバレが、そりゃもう不意打ちで壮絶に語られる。しかも最初だったので気が付いたらどっぷり。実際に確かめたわけではないが、ネタ的に、作中の時代的にもおそらくこれがやがて発売される続きのクライマックスだろうなという辺りまでモロである。誰が誰とくっついたとか、誰が誰を殺して、とか背景から語られる。歴史をモザイク状に編んでいく異世界ものであれば、まあ仕方のないことかもしれない。実際栗本薫なんて、まだ本編では王位にも就いていない単なる放浪の記憶喪失男が王になってる時代の外伝をいきなり出してたわけだし(←「グインサーガ」の『七人の魔道師』)。ネタバレはともかくも飲み込み、読んでいったのだけれど、どうにも勝手が違う。私が読むラッキーの本では、初めて物語が二方向から進んでいることに原因があるようだ。視点人物が二人いて、まったく別の話が交互に進行していく形である。一方はヴァルデマール王国の使者のサイド、もう一方が伝説の《鷹の兄弟》の《暗き風》のサイド。ここで私が面白く思ったのはストーリーでも何でもなく、
過去の情報、過去の読書体験がいかに読書に影響するかということである。というのも日本語で読めるラッキー本を読んでからこの本を読むと、情報量に偏りができるのである。ヴァルデマール側の事情がよく分かり、そちら側だけさくさくと進む。主人公のひとりエルスペスにいたっては、他の作品にも顔を出してるし。《暗き風》たちの方はというと、これまでの作品では謎の部族とされ、その周辺もほとんど書かれていなかっただけに事情がよく分からず滞りがちである。そのためひどくアンバランスな速度で読み進めることになる。
しかも全体として話が進まない。登場人物たちの悩みが語られ、お互いの接点ができるのが第一部『宿命の囁き』の下巻の後半である。そっからは怒濤のように進むのだが、そもそも二つのパートが合流してからすぐに第一部のラストバトルが来るので、構成としてはどうしたものか。盛り上がるんだけど、それまでが非常に長いプロローグ読んでるみたいだった。これは、多分、三部まとめて読むべきなんだろうなと思う。しかもできるなら、他の多くのラッキー本が訳されてからの方がよかったかもしれない。まあ、また読めばいいだけのことですが、
ファーストコンタクトってのは一回だけなんだよなあ、と思うところ。結構、魔法生物であるグリフォンやバジリスクなどが独特の生態を持っていて面白い。
グリフォン、しゃべるし、魔法使いだし。ようやくヴァルデマールを始めとする世界の歴史とかがぼんやり見えてきたところだなあ。とりあえず第二部をちまちま読みましょうかね。
ちょいとラッキーのグリフォンなどについて説明すれば。グリフォンってのは上半身、前脚が鷲で、後半身が獅子で、翼を持って飛行する怪物ですね。由来はギリシア神話ですが、ラッキーの世界では、外見等はイメージ通りですが、
1)むかーし、魔法使いによって作られた生物である。
2)生まれつき魔法使いである。
3)物理的攻撃力も魔法的な攻撃力もあります。
4)人がすでに失った知識や言葉をよく知ってる。
5)「心話」(←テレパシーみたいなもの)が使えます。
6)しゃべれます。
RPG等でのグリフォンっていったら、魔法は使えない生物で、しゃべらないし、馬が大好物です。牡馬は食らい、牝馬は犯すという性質を持っています。まあ牝馬云々ってのは、デザイン的にはもっとバランスの取れたヒポグリフ(←後半身が馬のグリフォン)を生み出すために逆算して出てきた設定だろうと思いますが。ともあれ、ラッキーのグリフォンに関してはまだ明かされない設定がたくさんあるようでして。読んでいて面白かったのは、グリフォンは何年かごとに子作りをするが、その際、心理障壁を低くしてしまうため、
周囲にいた人間などは発情の影響をモロに受ける、という話。本文中では結構さらりと書いてある部分ですが、理屈づけが見えてくるわけでして。グリフォンが何年かおきに子作りをするってことは、雄雌がともに都合良く発情するとは限らないわけです。小説では前回子作りしたのが5年くらい前ですかね。とすれば、どちらか一方が発情したときがチャンスになる。周辺の環境を準備してから交尾をするんですが、このとき心理障壁を下ろしておくことによって、両方が発情できる。その弊害として周辺に影響をまき散らすわけです。
いくつか出てくる人工生物のもうひとつバシリスク。これもRPGやファンタジーではおなじみさんです。違うとこは、まずデカい。小説で出てきたバシリスクは馬三頭くらいの大きさとか書いてあったような。バシリスクといえば毒の視線、強烈な毒が有名なわけですが、ラッキーの世界でも健在。加えて、悪臭を放ちます。死んでも毒は消えないし、悪臭は一層ひどくなります。さらに皮が硬く、物理的な攻撃が効きにくい上に、魔法はオール無効です。悪食でわりと生きたものから死んだものまで何でも食べます。生きたものを食べるときには、視線を使います。バシリスクの視線は強力な心理魔法扱いで、魅入られたら一撃で金縛りです。そんでぱくり。その辺りの説明が、出現したバシリスクをいかに犠牲を少なくして排除するかというイベントのときに語られて、たいへん面白かった。やっぱりこうした説明がある、あるいは裏に設定があるのとないのでは全然厚みが違ってくるのだと思います。
ラッキーなど、異世界もので面白いのを読んでると、やっぱり楽しいなあ。てことで無理矢理いつもの話に。ペガサスから始まった実験的世界創造のコーナーです。18回って、もう6ヶ月だよ、よくやるなあ。
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第18回です。ミノ話。
大いなる《シ=キ》といえども、永い永い年月の果てには弱ってしまうことを避けられなかった。
《シ=キ》、すなわち我らの大いなる父であり母。角を持ち、蹄を持ち、天を駆け、地を駆け、歌を奏でるもの。力を持ちながらも力に溺れることなく、武器を持ちながらも、他者を傷つけることなく、駆けれどその蹄で潰すこともなく。
その大いなる《シ=キ》。我らの祖は永い年月の果てに、三人の子を呼び寄せた。子らは《シ=キ》の徴を持っていたが、《シ=キ》よりも弱く、《シ=キ》よりも遅く、《シ=キ》よりも劣っていた。
大いなる《シ=キ》は子らを呼び寄せ、語る。汝らに己の力をさらに与えよう。だが、その力を得るためには何かを手放さざるをえないと知れ。
子らは大いに悩み、それぞれの願いを父なる《シ=キ》に告げた。
賢き子は告げた。我が望みは歌。歌い、歌い、歌い果てること。
《シ=キ》は応えた。然り。汝により強き歌を授けよう。
賢き子は強き歌を手に入れた。同時に、蹄の半分を失い、飛ぶことも、駆けることもできなくなった。《ラシ=ア》すなわち「歌う角」の始まりである。
猛き子は告げた。我が望みは駆けること。駆け、駆け、駆け果てること。
《シ=キ》は応えた。然り。汝により強き蹄を授けよう。
猛き子は強き蹄を手に入れた。同時に翼を失い、歌を失った。《ラシ=ス》すなわち「駆ける角」の始まりである。
さて子らの中でもっとも愚かで、もっとも弱き子が最後に大いなる《シ=キ》に告げた。我が望みは、享楽。先への不安も、過去の恐怖もなく、今を楽しむこと。歌い、飛び、駆け果てること。
《シ=キ》は応えた。然り。汝に今を楽しむことを約しよう。
弱き子は享楽を手に入れた。同時に、言葉を失い、角を失った。
賢き子、猛き子らがそれぞれに満たされているそばで、弱き子は嘆いた。我は魂の器を失ったのだと。しかしその嘆きもすぐに過去のものとなり、忘れ去った。
《シ=キ》が弱るにつれ、弱き子の不満は度々にその蹄を突き上げた。忘れては《シ=キ》の角を見るたびに思い出した。先のことを考えぬその蹄は、ついにある日《シ=キ》を襲った。
《シ=キ》は失われ、かの弱き子は《シ=キ》の血にまみれた蹄で飛び去った。したたった血から《リシア=サス》すなわち「嘆きの草」が生えた。かくして、かの弱き子をして《ラド=ガ》すなわち《血の蹄》が始まった。
ゆえにこそ、我ら《ラシ=ア》は兄弟たる《ラシ=ス》らとともに、大いなる《シ=キ》を殺めし《ラド=ガ》を狩るのである。それこそが《シ=キ》の仇を討つことであり、同時に魂なき子らを《シ=キ》の御許に送ることだからである。
――「歌の角」の最古老ギ=スナの角笛の歌
……なんて話を勢いで作ってみた。勢いでやってるだけにもう少しブラッシュアップする必要性はかなりありますが、まあ、まあ、よしとしませうか。大筋決めるのにおおよそ3分ってとこでしょうか。きっかけは前回ユニ公をミノ吉たちの騎乗生物にするという話をでっち上げたことですか。最初はユニ公たちを「蹄の兄弟」と呼んでることにしようと思い立ち、いや待てよと踏みとどまる。で、「角と蹄の兄弟」に変更しかけ、や、と思いとどまる。そこまで来たら、同じようなナマモノとしてペガさんたちを入れないのもどうか。ということで蹄三兄弟路線に決まりかける。が、前の設定から、ミノ吉たちはペガ狩ってるというか、そっから話が始まってるわけですわ。んで、上のような話に落ち着く方向で。テキトーに造語ちりばめつつ。角があって、蹄があって、そんで強い生物をご先祖にしようとして、出てきたのが《シ=キ》。イメージソースはジラフじゃない方のキリンですな。そっから枝分かれした、という神話を持つという設定でござんす。そんでさらにミノがペガを狩る理由をくっつけたわけですな。多分、この後も語りが続いて、最初のペガを追いかけるてな展開になるんでしょう。
A18−1:ミノタウロスがペガサスを狩るには神話的な理由がある。
A18−2:ミノタウロスの神話によれば、ペガサスから力を失わしめるには「嘆きの草」を用いるとよいとされている。
といった感じで、ミノ粒子を生み出す草まで神話由来にしてしまう力業。ユニ公もこのストーリーだとミノたちに親しいのでしょう。使えます。もちろん、この神話から、
A18−3:ミノタウロスは自分たちのことを《ラシ=ア》すなわち「歌う角」と呼ぶ。
A18−4:ミノタウロスたちはユニコーンのことを《ラシ=ス》すなわち「駆ける角」あるいは「角の兄弟」と呼ぶ。
A18−5:ミノタウロスたちはペガサスのことを《ラド=ガ》すなわち「血の蹄」と呼ぶ。
こうした背景を考えていくと、前回出た、
設定17−14:ミノタウロスたちが地上馬の訓練をやった。
というのはミノ的にはどうなんだろう。地上馬は翼を失ったペガから作られたわけだし。結構複雑なんではないかという気もする。
その辺りを考えつつ、次回はミノタウロス傭兵団に関して、考えてみようかなと思わないでもないが、実際どうなるかは分かりません。気分と状況次第ですかな。んな感じで今回ちょっと短めですがおしまいー。
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今旬、一番イタかったもの。ふとした拍子に買ってしまった山田桜丸の本で作者がナースのコスプレをしてたこと。何気なく開いていきなりカラーでそれですから! しかも作者紹介で本名とかまで載ってるし! 作者の人は今は別のペンネームで書いてるんですが、この本、サイトのブックリストにすら載ってない。暗部つーか黒歴史ですかこりゃ。まあ山田桜丸名義で書いた本はその作者のサイトには掲載されてないし、デビュー年デビュー作も違うのになってるしなあ。ゲーム関係やノベライズは桜丸の名前というように使い分けてたっぽいので、版権がらみとかでサイトに桜丸名義の本が一冊も載ってないのかなあと思わないでもないですが、今回買った本、ゲームとはまったく関係ないしなあ。
今旬、一番インパクトのあったもの。前に話題にしてたリボルテックダンボーのamazon版ですが、それの五体合体。グレートダンボー。両手両足に一体ずつダンボーをくっつけてあるんですな。ダンボー自体はそもそも頭でっかちのバランスなんですが、手足がでかくなったことによって、サイズがしっくりきてます。とかいうより何より、うわー、すんげーかっけー。「よつばと!」ファンなら見るべし。
購入した本:
松樹剛史『ジョッキー』、荻原浩『神様からひと言』、高野和明『幽霊人命救助隊』、恩田陸『ライオンハート』、山田桜丸『二代目のバカにつける薬』、上月司『れでぃ×ばと!5』、久住四季『ミステリクロノ2』、三雲岳斗『アスラクライン9』
読了した本:
火坂雅志『臥竜の天(下)』、マーセデス・ラッキー『裁きの門』『誓いのとき』『運命の剣(上・下)』『宿命の囁き(上・下)』、有川浩『図書館革命』