2008年3月。


下旬。


 何やら、ふとミッション場そばの公園を見たら、桜が咲いてる。てか、もうすぐ四月じゃん、ということにようやく気づく今日この頃。そういや大学の卒業式とかやってたっぽい。ネット見てたら、関東満開だそうで。こっちはあとちょいかかるかなあ。東北の北とかはまだまだのようですがねえ。作家六塚光が東北から関西に越してきて、入学式に桜が咲くのはありえねえと思ったという話がサイトに載ってたが、熊本だとヘタすると卒業式に桜満開だったりするわねえ。そのパターンだと入学式には桜散ってたりするんですが、今年はどうだろう。


 前回、ノー連休でへろへろになってる話を書いた。その後のこと。週明けから再び農閑期に入りました。そりゃあもう、見事に、仕事の量そのものが少ない。月曜はまだマシだった方で、データチェッカーの人たち(←パートタイムジョバーメイン)なんて、火曜3時に仕事がぱったりなくなり、「来週には新しいのが入ってくるから、それまでお休み」と追い散らされてた。いくつかあるミッション場でも同様だったようで、おお、仕事がまだ細々だが手元にある私は幸せなのかもしれん。とはいっても、早晩私も仕事が尽きそうな気配が濃厚になってきました。そこで考えた。今度こそ有給を使うべし。火曜、ボスに相談してみる。「28日の金曜、休んでいいですかねえ」「いいですよ」快諾。水曜、ボスに相談してみる。「27日の木曜、休んでいいですかねえ」「いいですよ」快諾その2。よし、これで土日合わせて4連休(予定)ざますよ。有給の申請を書き書き、とりあえずゆっくり休むべいと思案する。


 そんな水曜日。チェッカーさんたちがいなくなったせいもあってか、フツーに休んでる人も多くて、多いときは20人くらいいる我がミッション場、出席者5人。うち、ボスは昼から出張、遠方から戻ってきたばかりのプチボスはまたしても夕方から遠方へ出張。だもんで、夕方になったら広いスペースに3人しかいねえ。しかも3人とも別々の仕事してるし。大変まったりした空気の中、内線が響く。私にだった。そこはかとなくどころかきっぱりすっきりいやーな予感を覚えつつ出てみると、別室のミッションチーフ。「またミッションが新たな段階に入りました。明日から日曜までのミッション参加状況を確認していただきたいんですけど」「……は?」ミッションが発生した、じゃなくて、新たな段階に入った? おそるおそる「それって、また……?」延々とふりだしに戻るをやったのが前回だったのですが、ミッションチーフは「はいそうです」とどこか悟りを開いたようなあっさり加減。「でまた確認していただきたいんですけど。まだ今回の様式を詰めてないんで、はっきりしたことは分からないのですが」「えーと、確認も何も誰もおりませんけど」仕事がなくてオートマチック休暇に入ったことを分からせるのに5分くらい。だいたいお休みに入ったチェッカーさんたちには私は連絡取る手段がないしなあ。さらに私が翌日から有給に突入することを分からせるのに5分。「えーと、出てきていただくわけにはいきませんか、あなたはそっちのミッション場担当の要なんで」いやカナメも何も私にそんな責任も義理もないし。前回説明担当やってたのは、たまたま朝来るのが早かったせいですし。とにもかくにも連絡確認はあっちがやることになった。「じゃあ、詳しいことが決まりましたが後でお知らせしますので」うーん、承諾もしてないんだけどなあ。が、例によって例のごとく。夜かかってくるかなと思ってた連絡もなく、翌日以降も連絡なっしんぐ。カナメなしでどうにかやったのかな。どっか落ち着かない感じで4連休に突入する。


 てちてちと夕方お散歩してたら、近くの公園の外に五人ほど中学生くらいの男どもがいた。ひとりが長いホウキを振り上げている。ホウキは竹箒ではなくて、先がハケみたいになってるやつですな。いったい何をしているのだろうと思ったら、彼らは道路を渡り、公園の向かいにある家の庭の植え込みにホウキを突き込んでいる。その植え込み、ちょっと植え込みというか木ですな。てっぺんまでの高さ、目測で3メートルというところですか。ただ庭の地面が道路より高いっぽいので、木自体はさほどでもない。少年たちは当然下から突き上げているわけです。二人ほどが突き上げ攻撃を交互にやっていて、他のメンツはちょっと離れたところでジャンプしたり声を出したりしている。何してんだこいつら。距離が縮まったところでおおよその事情が呑み込めました。木の上に何か引っかかってる→下から突き上げて落とそうとしている→離れてる連中はそれを観測して指示出しをしている、ということのようで。問題のブツもさらに近づくと判明。模型飛行機というかプレーンですよ。あれが木の上に不時着したっぽい。中学生どもの横を通ったときもまだ苦戦してました。というか二段合体でホウキを振り回してました。通りながら思ったことは二つ。家の人に事情を説明して庭から攻撃した方がいいんではあるまいか(高さが1メートルくらい減るので水平に近い角度で薙ぎ攻撃が可能になる)。もうひとつはああいうプレーンで遊んでる中学生がいるのだなあということ。ああいう人たちが将来鳥人間になるのかもしれんのう。その後とっとこ歩いていて、ふと空を見た。北の空に西から東に向かって飛行機雲が伸びている。ふと逆に目を向けた。南の空に東から西へ向かって飛行機雲が伸びている。おー。何となくほっこりいい気分になってお散歩を続けた4連休のひとこま。


 ふと立ち読みした「ケロロ軍曹」が結構面白かった。いやーそういうコミックがあるのは知ってたし、アニメもあるのは知ってましたが、全然見たことなかったんすわー。子ども向けかと思ったら、ちょっと昔のコミックのパロディが入りまくってたりしてて楽しい。例えばケロロ小隊が五人揃うエピソード。最後のひとりゼロロが異星人に拉致されるんですが、その異星人がまず変。ぴったりタイツで頭部がキングコブラで左手が丸っこい銃になってまして。分かる人には分かるんでしょうが、これコブラですよね(頭コブラだし)、左手サイコガンで。さらに同じエピソードで小隊が必殺技を繰り出します。クルル曹長が出したエネルギー弾をみんなでつないでいくのは戦隊ものだし、最後にゼロロに回ってくるんですが、その構図。手を胸の前に中途半端に挙げてパスを待ちつつ、セリフは「左手は添えるだけ」とくる。他のエピソードでは例えば動物園の動物たちを人間に変化させていく話。古ツワモノの象が変化したのは檻の中で座禅しているヒゲの男。って画調が突然「北斗の拳」てかトキだよトキ。わはは。


 だいたい連休中もそんな感じでまったりしてました。本読んだり、お散歩したり、本買いに行ったり、光合成したり、図書館に行ったり、寝てたり寝てたり寝てたり、ごろごろごろごろごろごろしたり。んー、DSはやった記憶がない。今年初めてPS2はやってみましたが。何となく「無双」がやりたくなったので「無双4エンパイヤーズ」を1時間ほど。あとこないだオークションでうっかり落札してしまった「三国志11」をチュートリアルのみ。うむー、何か中国語だかでしゃべってますよキャラ。さっぱり分かりませんが、ホンコン映画観てるような感じですか。ただロードとかが長い。本編はどうなんじゃろう。


 連休明け。手持ちのミッションがまったくなかったので(それまで凍結してたミッションはもうしなくていいことになった)、多少いつもよりゆっくり家を出る。原付でとろとろ走っていて、ようやく思い出しました。私がいつも早く自宅を出てた理由。いやそりゃまあミッションてんこ盛りだったせいもありますが。本来は早めについてじんわり本を読んでて、時間もったいないってんで許可もらってミッション開始してたのですな。その、早めに来てた根本的理由。朝っぱらって、テンションがむやみに高いのです私。それも出発して15分くらい経過してから放物線を描いて急上昇。いやー、邪魔なんすわ、いろいろと。渋滞とか車とか原付とかチャリとかバスとかバスとかバスとか。だいたい10分早く出ると20分早く着く時間差攻撃。15分で30分、と渋滞タイムを避けていたらいつのまにかえらい早くなったわけですな。で連休明け、そんなことをすっかり忘れてた私は渋滞にハマって、しかも真新しい原付に道はふさがれる、バスは前をふさぐ、何やら事故は起こってるといった具合。ぐわー。翌日からはとっとと家を出るべしと心に誓った次第。


 何かまったり農閑期なわけですがね。その前までが大変ばたばたしててろくろく記憶がないのであります。例えば、こないだ明るいうちに帰ってたときのこと。いつも通る道なんですよそこ。で気づいた。そこにあったガソリンスタンドがなくなっててマンションが建ってて1Fでソフトバンクがふつーに営業してました。どんだけ記憶飛んでんねん自分。いやー、時が経つのは早いもんすわー。同じ頃、真夜中過ぎに目が覚めまして、むっくり上半身起こしたんですね。窓から空が見えるんですが、明るい月が出てました。で、そのすぐそばにやけに赤い光が。ぴくりとも動きません。むー、星? 火星? なんかえらい真っ赤ですが。そのままこてんと寝て、しばらくしてまた起きた。月はだいぶ移動していましたが、赤い光点は前のまま、やっぱり真っ赤っか。あれはいったい何だろう。と多少目覚めた頭で考え、観察して分かりました。電波タワーのてっぺんが光ってやがります。そんなん窓から初めて見たってか、いつのまにラジオ塔なんてできやがりましたか。……まったく知らなかった。そのくらい世の中の流れから取り残されてる今日この頃。


 『吹雪の山荘』読了。笠井潔を読んでない人なんで、いまひとつ分かりにくいところはあったものの、おおむね満足。有栖川有栖が書いてないのに大学生有栖川有栖がいる謎も解けた。そもそも10年かかった企画なんで不思議じゃないんでしょうが、途中で辞退した作家もいるんですな。それが有栖川有栖。そのため最終回直前の法月綸太郎は編集から「有栖川有栖を消せ」という依頼を受け、いかに作品内で無難に彼を消し去るか苦労したようで。その結果、有栖川有栖が書いてないのに登場人物に大学生有栖川有栖がいるという形に。うむうむ。この手のお祭り企画は、やはり参加してる作家の作品を読んでるかどうかで感じ取れる面白さが違うよなあ、というか、ボーナストラックな感じですか。私の好きな北村薫のネタを中心に見ていけば、「円紫さんと私」シリーズに出てくる「私」は今回メインキャラのひとり。彼女は名前がずーっと出てこないキャラなんですが、さすがに視点人物が次々に変わるこの企画ではそうもいきません。てことで「ブッキー」というニックネーム(「ブッキッシュ」とか「不器用」とかから来てる)や「クミ」という偽名で呼ばれてます。彼女はまだ大学生ですがみさき書房でバイトをしていて、その流れで企業誌に短文を連載してたOL若竹七海に接触(連載を本にまとめる打診)。意気投合した彼女たちは年末を別荘地の山荘で過ごす展開。そのとき従姉妹同士という設定で宿泊していて、「七海」の従妹で「九海」(「ハツミ」はおねーちゃん)。雑誌「推理世界」の編集者によって山荘に缶詰にされるのが法月綸太郎ですが、法月にブッキーが口説かれたりというシーンもあり。「推理世界」つったら、北村ファンにはお馴染みのあの人覆面作家のフクちゃんの話が出てくるわ、ラジオつけたら円紫さんがしゃべってるわ。他の短編もそうですが、作者の人たちがキャラのコラボレーションを楽しんでる感じが伝わってきて面白い。女好きの法月がブッキーを口説き、それ見て若竹がツッコむ。法月と有栖川がミステリ談義をしまくり、他の者はついていけず、結果法月有栖川ホモ疑惑が書かれたり、いくつかの短編ではキャラへのセリフにかこつけて次の作者へのメッセージになってたり(「次はあなたの晩ですよ」的な)。こういうお祭り企画は面白いなあと思うが、なかなかできないものであるよなあ。多分、行き着く先は「ワイルドカード」(外国の有名SF作家多数がからんでるモザイクノベル)なんでしょうが、翻訳出ないしなあ。ラッキーの本も復活してる時代だし、どうにかしてくれんかのう東京創元社。


 ラッキーといえば、4月に「女王の矢」の続きが出版されるそうで。思ったよりも遙かに早い。つーか、今年中に出ればいいかなというつもりだったのだけど、半年くらいで出るとはびっくりどっきり。他の来月のお楽しみといったら、西尾維新『クビキリサイクル』ようやく文庫化。小路幸也『東京バンドワゴン』も文庫化。一巻目が大層面白かった葵せきな『生徒会の二心』も登場。たのしみーほくほく。


 そんな感じでまったりしてたというか、前回の疲労を抜くのに結構時間がかかったというか。おかげでネタがあんましなかったり。ううむ。ま、こんなときもあるさねー。


 いつものやつも、前回の流れで流されるままに。



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 私は夜の空を見上げる。星が散りばめられた空。

 待ち人はまだ来ない。星を見ながら、ふ、と三日前に会ったしゃがれた声の酔っぱらいを思い出した。

 アゴルというひとりの裏切り者について語った男だ。

 アゴルという男に興味を私が持ったのは、ずいぶん前だった。別のひとりの男との出会いによる。

 私が出会ったあの男。彼は、「角折れ」シン=ズウの友として知られている。シン=ズウ、すなわち角を折られた「歌う角」の民。

 「歌う角」とかれらは自分たちを呼ぶ。あの男も自分をその一員だと考えている節があった。だが、つまるところあの男は人間だ。人間であるにも関わらず「歌う角」で構成された傭兵団の中にいる。

 役割としては、人と「歌う角」の折衝役にあたる。常に「歌う角」の傍らにあり、通詞の役目を果たしている。「歌う角」は人間の言葉を理解するが、人が人と話すように言葉が通じているわけではない。やはり、そこは慣れた人間が間に立った方が通じやすいということのようだ。また、「歌う角」は人間の風習に親しいわけでもない。かれらはおのれの習慣を大事にする。ために、やはり間に立ってその調整に努める者が必要なのだろう。
 あの男は、壊れた身体をもっている。右足は完全に一度破壊されたらしく、ひきずることしかできない。ひきずる度に顔をしかめる。また、背中も具合がおかしいらしく、ひどくいびつな姿勢をしている。ために、あの男は、ひとりで長い距離を歩くことも、短い距離を走ることもできない。

 ぎらぎらと光る目。同時に、どこか達観した、澄んだ目でもある。

 あの男は、「歌う角」と同じく一角の馬に乗る。私はあちこちを見聞した人間であるが、一角の馬に乗っている人間を他に知らない。

 「歌う角」に「友」と呼ばれるあの男は、一角の馬に乗っている。私が見たときもそうだった。かの馬に乗っている間、かの馬に触れている間は痛みが多少やわらぐのだと、苦笑しながらいうのを聞いた。

 あの男には、名がない。初めからなかったわけでもないだろう。どこかで失ったか、隠したのか。

 あの男は、アゴルという男に興味を持っていた。「歌う角」との関わりが深いのであれば、むしろ持たない方が不自然である。少なくとも、今の私にはそうした知識がある。

 アゴル。すなわち、「歌う角」への裏切り、「山の下の族」への裏切り。同時に二つの背信をなした男。

 私は視線を戻した。音が聞こえたからだ。街路を蹄が叩く音。

「どうだった」

 一角馬にまたがったまま、男が問うてきた。何について問うたか、私も男も理解している。

「おそらく」

 短く答える。星明かりの下、男の目が光ったような気がした。

「少なくとも今までの連中より、アゴルをよく知っている」

 あの酔っぱらい。一度喉を潰されたという。

「『歌う角』による制裁を一度受けたようだ。ただ、単なる『山の下』の生き残りだと見られたのか」

 生き延びているからには、その可能性が高い。

「やつだと思うか」

 相手が問うてきた。

「おそらく」

 また先と同じ答えになる。

「金をはずんだ。少なくとものたれ死にはしないだろうし、足止めにもなるだろう。追い剥ぎ物取りの類に襲われなければな」

「手間をかけた」

 男は一礼し、馬首を返した。すぐにでもあの哀れな酔っぱらいのところへ向かうつもりだろう。私がやんわりと語らせたようなやり方ではなく、もっと、例えばかのアゴルが男爵の下でしばらくやっていた獄吏のような。

「おそらく、といったがな」

 私はその背に声をかける。

「間違いないと私は思ったよ」

 男は馬を止めた。振り返らない。

「ずいぶん時間が経った。それでも、あの男は――お前によく似ていたよ」

 一角の馬が歩き出す。男はもう止まらなかった。

 私は溜息ひとつ、星空を見上げた。

 十日ほどの後、あの酔っぱらいが金を懐に残したまま、死体で見つかったと聞いた。



 またしても勢いのまま第29回終わり。てか、ここ何回かを見てないと、何がなにやら分からないような気も激しくしますが、気にしない気にしない。



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 来月上旬には「うちの3姉妹」のアニメ化、「図書館戦争」もアニメ化。どっちも楽しみであるが、「3姉妹」テレビ東京だ。熊本ではやるのか?



 購入した本:
  森見登美彦『四畳半神話大系』、茅田砂胡『サイモンの災難』、北方謙三『水滸伝 十八 乾坤の章』、大塚角満『本日ももっと!逆鱗日和』、田中天/F.E.A.R.『愛はさだめ さだめは死』

 読了した本:
  A・デュマ『ダルタニャン物語1 友を選ばば三銃士』、清松みゆき/グループSNE『猫の手超人王、激闘!』、笠井潔・岩崎正吾・北村薫・若竹七海・法月綸太郎・巽昌章『吹雪の山荘』、菊池たけし/F.E.A.R.『ノエルと薔薇の小箱』『ノエルと翡翠の刻印』『ノエルと白亜の悪夢』『ノエルと蒼穹の未来』、菊池たけし・久保田悠羅/F.E.A.R.『ノエルと白馬の王子』、大塚角満『本日も逆鱗日和』



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