「GOD」
神さまって信じるかい? え、俺? もちろん信じちゃいなかったさ。ウチは仏教なんだけど、どっちかって言えば仏サマも信じてなかったっけ。だいたい、今時あんなもん信じてるヤツなんているのかね。
その証拠にさ、俺をごらんよ。何の取り柄も特技もなくなってさ。少しは性格歪もうってもんだ。それに引きかえ、世の中にゃ二物どころか三物も四物も持ってる奴がいる。こりゃ不公平だぜ、絶対。神さまなんて信じられるかい。
長いことそう考え信じていた、この俺が神仏に祈ったことがあったんだ。そう、あの娘を好きになったとき。
笑顔がとっても輝いていて、見る人をどこかほっとさせる彼女は、俺みたいのにも微笑をくれた。それがきっかけ。
俺は生まれて初めて神仏に祈ったね。本気でさ。
彼女をそっと放課後に呼び出して、かすかに震える手で手紙を差し出した。口下手な俺は告白なんて面と向かってできなかったから、今時ラブレターなんてもんを使うことになっちまったんだ。
彼女に手紙を渡してそのままダッシュ。返事を聞くのは彼女が中を読んでからになる。つまり、明日になるだろう。
その夜は、胸が締め付けられるように苦しくて、遅くなるまで夢の国の門をたたくことができなかったっけ。
そして、翌朝。運命の日がやってきた。
え、どうなったかって? へへん、今では俺は神さまを信じているのさ。