K大ものに関するちょっとした説明。

 

 ちょいと説明が必要だと思いましたので、書いておきます。

 「K大もの」とは、架空の大学であるK大を舞台にした短編群です。

 第11話までは、今は亡き某HPで展開されていた三題噺で掲載されました。この企画では、参加を表明したメンバーがひとつずつ御題を企画管理人に 提出し、開始時に企画管理人はそれをまとめて発表するという形式でした。枚数は50枚以内ってことで。

 ひねくれものの筆者は、こうした企画でシリーズものをやってやろうと思い立ち、展開させていったわけです。K大ものでない短編で三題噺に掲載され たのもありますが、それらは「その他」のページに置いていきます。

 K大ものの原型となったのは、かの猛烈な臭気の某医学部図書館で半ばトリップした状態のときに思いついた高校を舞台にしたもので、様々な事情から 大学へ舞台を移行しました。

 コンセプトは、筆者にしては珍しく「日常的なものを描く」と思われがちなんですが、実際はそうではありません。そもそものコンセプトは、「何でも あり」です。同時に、キャラが弱いと筆者自身感じていたので、キャラを前面に出していくという意図もありました。また、キャラの名前・性格・行動・イベント・経験・ポジション・交友関係等のうちどれかが知ってる人と一致することがあるかもしれませんが、ぐーぜんです、ぐーぜん。意識的に最低限特定されないようなシャッフルをしているし、フルスクラッチでゼロから組み上げたキャラも多いので、その辺深く詮索しない方がよろしでしょう。

 以下はちょっとした作品のコメントです。三題噺の御題も一緒に書いておきますので、挑戦魂あふれる方は、書いてみても面白いかも。

 

 

第1話「妖精と人形のゲーム The Game of Trolls and Dolls」

 このときの御題は「ムーミン」「傘」「焼酎」「人形」。筆者が出したのは「ムーミン」だというのは公然の秘密ですが、これはそのHPの掲示板で 「以前別のとこでムーミンって御題を出されたけれど書けなかった」というような発言を誰かがしていたことに触発されたもの。本作を書くために、邦訳を読み あさり、ネットで調べ、事典を眺めていたことを覚えております。筆者的には、K大ものの中で上位の出来だと思っています。もっとも、あんまり評価が聞こえ てこなかった作品ですが。

 献辞が七五調になってたりするのもご愛敬?

 タイトルは、筆者が好きな作家コードウェイナー・スミスの短編「鼠と竜のゲーム」から。節タイトルも、この短編を参考にしてます。

 

第2話〜第4話 諸々の事情により非公開

 「赤」「ガラス瓶」「猫」「みかん」「吸血鬼」が御題。第1話が研究室の話だったので、そこから文藝部へ移行していく3本セットの話、のはずだっ たが、諸々の事情により非公開に。北高トリオ及び村雨研の同期が何人か、そして七森部長が出てくる話だったんですが。トリオは後に紹介の場を与えられまし たが、七森部長等の登場人物は以後ワリを食うことに。

 

第5話 「かうじの木の。」

 このときの御題は「赤」「ガラス瓶」「猫」「みかん」「吸血鬼」。って、これ第2話〜第4話と同じですね。同時進行で5本考えて(うち一本はK大 ものじゃない話)いて、生き残ったひとつ。

 唐突な「。」は、モーニング娘。にルーツを持つ、のではなく、どこから来ているのかと後に考えてみれば、中学のときに読んだ火浦功の「未来放浪ガ ルディーン」シリーズだったり(『大熱血。』『大暴力。』『大ハード。』とか)。

 三題噺企画における私の位置としては、「他の人とちょっと違う視点」ってのを盛り込むことだと思っていたので、洋風じゃない吸血鬼を書いてみた り。

 

第5.25話「『かうじの木の。』に関する機密文書」

 勢いで作ったおまけ。三題噺には関係ありません。だから5.25話。文藝部の批評会的雰囲気を出すことと、「かうじ。」本体をひっくり返すのを目 的にして書かれました。一番後ろにくっついている茶園訳の「徒然草」がいい味出してると思うのは筆者だけですかねえ。

  


第6話 「Keep On Running」

 このときの御題は、「卒業アルバム」「祭り」「雪」でした。3月くらいに書く話だったので、御題が季節ものになるかなと考え、あえて微妙にズラせ る「卒業アルバム」を提出。んで、思い切り夏の話を書いた筆者でありました。

 ようやくメインで出てきた北高トリオのひとり、塚本光輝が主人公。テーマは「せーしゅん(の殴り合い)」ですか。

 あと、この頃、掲載サイトの掲示板で、小説書くときの視点がどうのという話題が出ており、じゃあ、ということでそれを比較してもらうために同じ シーンを別の人物に語らせるという形式を採用しました。そのため、第7話と裏表のような性格に。第6話がプライベートなら、第7話がオフィシャル、みたい な雰囲気で。

 「北熊」は実在する支那そば屋で、北高のモデルになった学校のそばに本店が存在し、部活帰りに学生がよく寄ってたみたいです。

 各節のタイトルは、永井真理子の「Keep On Running」から。後半、「Let it be」の次に引用されてるのも同曲。

 

第7話 「螺旋の時 Time Considered as a Helix of」

 御題については第6話同様、「卒業アルバム」「祭り」「雪」で、北高トリオのひとり、島田京子を語り手にして展開。自分から話を動かしていく第6 話の塚本光輝に比べて、あんまり動かない印象の島田京子。地味です。

 第6話が個人的なエピソードに終始していたのに対して、北高時代を概観するような話になっています。ちょっと駆け足っぽくなってしまい反省。

 サブタイトルの英語は、ディレイニーの「時は準宝石の螺旋のように」の原題「Time Considered as a Helix of Semi-Precious Stones」から。ラストもこのタイトルを踏まえてはいるが、内容とは関係なし。

 あと隠れキャラのように、花見のシーンで村雨研のメンツが登場。高校の先生として登場する七森先生(七森千歳)は、K大パートで出てくる七森部長 の母親に当たります。

  また、ラスト付近で出てくる英文を島田京子は微妙に間違えてますが、書いてある通り彼女の得意分野は英語ではありません。英語が得意なのは後に英文学系を やる光輝と帰国 子女の茶園なので。 


第7.5話「いさましいちびのパーソナリティー加勢へ行く」

 締め切りの前日くらいに思いつき、三日で書き上げたおまけ。よって、締め切りは破りました。御題も関係ないです。第6話、第7話と密接な関係にあ るので、第7.5話(気分的には第6.5話の方がよかったかも)。

 北高トリオのひとり、茶園朋美をメインに据えた話です。というか、茶園をネタにして「六人組」のことをちまちま書いたといった方が正しいような。

 状況的には、千堂司の家に集まって皆で昔の写真を眺めているところ。新田のパートで出てくる「ユキさん」は、ザキのこと。余談ついでに塚本に対す る呼び方は皆見事にバラバラですな。「コーキ(京子)」「コーちゃん(茶園)」「ツカ(司)」「塚本(ザキ)」んで、新田は「光輝」と書いて本名の「みつ てる」と呼んでいるのです。

 タイトルは、アニメ化もされたトマス・ディッシュのパン焼き機のお話『いさましいちびのトースター』の続編『いさましいちびのトースター火星へ 行 く』から。書いた当初 は「いさましいちびのキャスター、加勢へ行く」だったんですが、「キャスターじゃないような気がする」と却下。次に「いさましいちびのアッパラパー加勢 へ行く」という内容を的確に表したっぽいものに変更。ただ、「タイトルとしてはどうか」てなわけでこれまた却下。最終的に「パーソナリティー」に落ち着き ま した。

 なお、「木原用語事典」(ゲームブック付き)は実在します。




第8話 「天使とミルクと研究室」


 いよいよ村雨研の方へ話が移っていきます。主役は児玉姉妹の妹、望です。このときの御題は「天使」「ミルク」「壁」でした。掲載サイトに小説の書き方がどうのという話が出てたので、ついつい勢いでメイキング原稿(起草段階からたくさんのバージョンを掲載して解説)を書いてしまったのもこの作品。メイキングについてはこちらをご覧ください。

 わりとK大ものの中では好評だった作品で、「泣いた」とか「感動した」という感想をもらったのも懐かしい思い出であります。

 タイトル発想の元はアニメ「ルパン三世」の「次元と帽子と拳銃と」の響きでしょうか。分かんないけど

 ともあれ、村雨研の内部もちょっと書けたし、メンバーの名前も出てきたし、ぼちぼち話が動き出す、という感じが出てればいいかな、と。
 

第8.5話 「バイシクル・レース」
 第8話の前日談でおまけな話。勢いのみで書いてますな。高校、大学と自転車でずっと朝っぱらから通っていて、筆者、毎日のように思ってたんですわ。のろのろ走ってる自転車を抜いたり、車を避けて先に進んだりする感覚を文章に出来ないものか、と。それをそのまま使ったような話ですね。




第9話 「夏へ続く扉 the Door into Summer through Winter」


 最初にいっておこう。関係者各位におかれましては、正直、すまん。どうもねえなかなか気が進まなくて掲載延び延びになってたわけでございます。

 で、この回の御題はというと、参加者たちの思考が揃い(←ホメてない)、似たようなものが続出。「夢」「樹海」はともかくとして、「雨」「梅雨」「結婚」「恋人」ってどうよ? 6月開催だったせいでしょうがねえ。ちなみにそのとき動向をある程度読んでた私はひとり方向性の違う御題を提出していたんですが、主催者に「どうしましょう?」と相談され、「じゃあ必須の御題と使いたければ使え的御題に分類して、似たような御題は分けてみてはどうか」とテキトーに返事。そのため「結婚」「樹海」「雨」が必須、残りが選択になった次第。

 発想のきっかけは、ハーモニカと望の試合。ハーモニカエピソードは「Keep On Running」書いてたあたりからありまして、多少最初の構想からキャストを変えて(だってハーモニカ拭いてるの茶園だったんですもの)、今回のような形になりました。あと、一気に話が膨らんだのは、ザキのテーマソングが永井真理子「DUNK! DUNK!」だと気付いてから。夢に向かって進もうとする彼氏に涙をこらえて笑顔でサヨナラする彼女、「Go Ahead」の掛け声、その上「二人の距離遠くなっても ほんとの愛これからさ、始まるはずよ」という前向きな彼女。そんな感じでひとつ。

 で、おそろしく尻切れトンボな感じで終わってるわけですが、理由はといいますと、第10話と同時発表だったせいで。二つの話は対になっておりまする。

 これまでのK大ものと違って「ちょっと大人な雰囲気」などと初回掲載時にはいわれましたが、まあこれも当然。だって彼女たちもう大学四年生なんですから(卒業前というより卒論前)。大学入学時と同じイメージでってのも無理があるかなあなんて思うわけですよ。

 ちなみに献辞にある「ペトロニウス」はフルネームだと「護民官ペトロニウス」でありまして、まあ分かる人には分かるかと(おい)。



第10話 「Keep On“Keeping On”」


   最初にいっておこう。関係者各位におかれましては、正直、すまん。どうもねえなかなか気が進まなくて掲載延び延びになってたわけでございます。ってまたかよ。

 第9話が島田京子視点の話だったんで、今度は塚本光輝サイドの話。御題は上と同じってことで。ちょいとブルーなコーキを描きつつ、北高六人組のその後をちょっぴり描いた院生編でございます。

 第9話で途中だったエピソードが完結したりもしています。初回時の感想の大半がそっから始まってたのはどーしたものか。まあでもそうした「びっくり」の効果を狙って同時発表だったってのもありますけどね。

 んでこの話ともひとつ対になってるのが「Keep On Running」だったりするわけで。タイトルからして永井真理子つながりでございまして、第6話が大学入学前後(高校3年も)で「走り続けようとする」話だったのに対して、第10話では「ちょっと止まってみてもいいじゃん」てな内容。ちょいと落ち着いた感じがするのもキャラが年くったせいでしょうか。

 あとこっそり島田京子のキャラ特性が出てきたり、それにからめつつ同期生アモーの名前が出てきたりしてるのは、アモーを主人公にしたエピソードが12話くらいに来るはずだったため。「傍観者」アモーの話は書きかけのままですが(苦笑)。



第11話 「堀井歩太と神社の石」


   さて、夏らしい作品をひとつ。いろいろと物議をかもしたタイトルではありますが、気にしないか笑うように。

 このときの御題は「スイカ」「星」「奇跡(ミラクル)」で、第9話の事情で書いたように、私の提出した御題はひとつ前のに使われるはずだったもの。ちなみに「ミラクル」でござんす。

 話の方向としましては「ちょっとした身近な奇跡」を中心テーマにしたと見せかけて、「カイザーを真似してみよう」がメイン。だから献辞もそうなっておりまする。一応いっときますが、ラインハルトとかベッケンバウアーとかじゃないっすよ。あとはノーヒントでひとつ。

 で「カイザー」ネタに加えて「村雨研の6人目」を出すというのが個人的課題だったので、鈴木B登場。敵も味方も多そうなキャラですが、まあ私のお気に入りのひとりではありますな(動きが活発なので)。

 作中に出てくる「漢字連想」等については実際に私たちが遊んでたものです。化学とか東洋史とかそんな授業でムチャやってました。あと「しりとり式」の方は、もうひとつパターンがありまして、こちらの方が盛り上がるでしょう。作中では「相手が出した御題に自分が新たに御題を付け加えてネタ話」という形ですが、これを逆にします。鈴木Bが出した御題にコーキが付け加えて、その二つで鈴木Bがしゃべる。でコーキが出した御題に鈴木Bが新たに御題を加えてコーキがしゃべる。この形の方が予想外のネタになると思います。お試しあれい。

 とりあえずこれで過去書いたK大もの作品がすべて出揃いました。分かりやすくいえば第一期終了です。ネタはたくさん作ってあるんで、あとは書く気力と縁ですかねえ。そこが問題だす。





  


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