えー、「旬な話。」のコーナーで、連載してた「ペガサスが飛ぶ話。」のまとめページです。基本、コピーペーストしてつなげただけなんですが、まあ、読みやすくなったかと。こんな企画が始まった理由については第0回を参照のこと。見所は、まあ、話が明後日の方にどんどん脱線していくとこでしょうか。基本アドリブで展開してってますしなあ。


 小説にしろ、世界設定というかそうした基本的な部分を作るのは好きです。でも、やっぱり昨今の小説等、特にラノベなどではそんな点をおざなりにしてる作品が多いわけで。書かれてない部分=書かれてないだけでちゃんと存在している、ということではなく、書かれてない部分=そこに何も存在してない、という書き割りというか下手な舞台セットみたいなもの(裏に落書きがされてるとか壊れかけてるとかそういうのが)客に透けて見えるというのはいかがなもんか。てな気分はいまだにあるわけで。


 連載時に、他の「旬な話。」部分との兼ね合いがあって今読むと分かりにくいものに関しましては、注釈をつけました。また、明らかに間違ってる表記及び読みにくい改行につきましては修正した部分があります。






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 ペガサスが飛ぶ話。 第0回(2007年6月上旬


 ライトノベルでは、こうした「お約束」(*1)は結構一般的に利用されていて、珍しさといっった点からは大したことはありません。例えば、ぱっと思いつくものを挙げていくなら。新井輝の「あるある夢境学園」シリーズは、変身体質の主人公が転校してきたところ、道端でヒロインの超能力少女にぶつかる場面から始まったり、番長一族がいたり、担任の先生は裏で凄腕のスナイパーだったり、裏で生徒会に協力しているマッドサイエンティスト女子校生はビン底メガネ取ったら美少女だったり。あるいは東亮太「マキゾエホリック」では、巻き込まれ体質の主人公や魔法使い、霊能力者などのクラスメートがそれぞれ一言(「勇者」とか「電波」とか)で表される特性を持っていたりクラスの話。それぞれ敵の組織がいて、学校に攻めてきたりするといろんなヒーローたちが撃退に出てきたりする。名簿がついているところなんかは、某コミックの影響かといったところ。高畑京一郎の「Hyper Hybrid Organization」では、変身ヒーロー(必殺技はキック)と悪の組織の戦闘に巻き込まれた挙げ句ヒーローのせいで恋人を殺された主人公が、悪の組織に入る話。怪人になるのではなく、下っ端の戦闘員の入会試験から始まり、訓練や実戦などが展開していく。となれば次は田口仙年堂の「コッペとBB団」シリーズなども似たようなものか。この世界では「ヒーロー協定」があってヒーローたちは自分たちのテリトリーを越えての活動はできないことになっていたりする。んで主人公のコッペ(謎の少女)が悪の組織BB団を引っ掻きまわして次第にアイドルのようになっていく。ちなみにコッペという名前は腕についてた謎のバーコードを読んでみたら「コッペパン ○○円」が表示されたため。


 ヒーロー系の話に限らず、ライトノベル全般は、かなりの「お約束」で構成されている。始まりは多分神坂一の『スレイヤーズ!』あたりからだろうか。つまり、「トロール」とか「ゴブリン」とかそうしたモンスターやらアイテムやらの詳しい説明抜きに使ってしまうパターンである(*2)。同じ頃深沢美潮の「フォーチュン・クエスト」がRPGのパロディとして展開していたりしたわけで。「フォーチュン」ではモンスターを倒したりすると経験値が溜まり、レベルアップしたりといった「コンピューターRPGで起こる現象を小説化したもの」といった側面がある一方で、ダンジョンの奥でブラックドラゴンがテーブルトークRPGにはまっていたりする。もちろん、神坂にしろ深沢にしろ、元ネタを分かった上で、省略したり、詳しくやらなかったり、パロったりしているわけだが、これらの作品に影響を受け、なおかつその元ネタを知らないメンツの作品が出てきているわけですわいな。


 一例を挙げれば、ファンタジー世界において「エルフ」と「ドワーフ」という種族がいると、たいていこの二種族、仲が悪い。何故仲が悪いのか、を設定してある小説は少ない。流れからいうと、こんな形である。

 1)トールキンの創作神話でエルフを創った神とドワーフを創った神の確執があったため、この二種族は仲が悪い。
 2)初のRPGである「ダンジョンズ&ドラゴンズ」がその元ネタのひとつとしてトールキンのイメージを使った。ルールブックには、たしかエルフとドワーフは仲が悪いといった記載があったような。
 3)「D&D」を日本に紹介普及すべくグループSNEが「コンプティーク」誌で展開した「ロードス島戦記」では、当然のことながら「D&D」のイメージ上かつプレイヤーたちがトールキンの『指輪物語』のイメージを用いている(ドワーフのギムの名は『指輪』のギムリから採られている)。
 4)「D&D」から離れて小説等やオリジナルルールで展開しだした「ロードス」では背景世界の紹介でオリジナルの「仲が悪い理由」を設定していたものの、この影響を受けて雨後の筍のように発生していたRPG小説では深い設定はされることもなく。

 といったところであろうか。ちなみに、兎みたいな長い耳のエルフ、は「ロードス島戦記」のリプレイで出渕裕の描いたディードリットが最初である。それまでの、あるいはそれ以降の洋モノのエルフといったら人間のような耳で、上端がとがっているタイプが主なんですな。


 まあ例えで出しましたが、こうしたことをまったく知らない人たちがゲームや小説のイメージから本来トールキンの創作した世界に適用されていたルール「エルフとドワーフは仲が悪い」を「一般常識」として使ったりすると「お約束」が生じることになります。もっと上の世代であれば「お約束」が「お約束」であることが分かっていますから、それなりの対処ができますが(「分かっててそのまま使う」「説明する」「オリジナルの設定を加える」とか)、分からない世代になると疑いもしないわけですね。んで、昨今の若い衆は遡ったりテリトリーの違うところへ踏み込まないことが多いらしいので、一層こうした傾向が強まるかなあというところです。


 省略とか「お約束」自体は悪いことだとは思いません。だってどんな小説だって一定レベルで省略やお約束を使っているわけですよ。現代小説だって、「今読者が見ているような日本」という設定の下、書かれたり読まれたりするわけです。「銃」といったらああいうもので、「東京」とはこういうところで、といった作者−読者が共通に持っているであろうイメージは詳しく説明されることもあまりなく使用されますわな。ライトノベルにおいての「お約束」もそうした面を持っているのかなあと思ったり。実際、深くセッティングしていくなら、トールキンがかつていったように緑の太陽が存在することを読者に信じさせるのは難しいのですから。だから太陽といったら私たちが見る太陽のようなものにしておいて、あまり触れない方が楽なわけです。例えばコンピュータRPGのように「生き返りの魔法」が存在する世界では、死生観はどうなるでしょうか。無謀なことをする人が増えるでしょうか。魔法を使える人が利権を手にするでしょうか。宗教はどうなるのでしょう。寿命で死んだ人は生き返るんでしょうか? また、瞬間移動が可能な世界はどうでしょう。道路など存在しないのでは? とすれば都市の状態は? 人はどこからどこまで瞬間移動できるのでしょう。人が空を飛べる世界では車輪の発明は遅くなったでしょうし、建物の入り口を地面にくっつける必要もありませんし、階段もいりませんな。ひとつひとつの理屈をつけて世界設定に広げていくことで魅力的な世界を創ることも可能です。瞬間移動を技術で可能にした(「どこでもドア」)上、ものすごく気軽に使えるため、ダン・シモンズの「ハイペリオン」(*3)ではひとつの家が複数の惑星上にあるなんてことが語られます。ある部屋のドアを開けると別の惑星にある廊下に出たりするのです。人に羽があって飛べる世界において、もし飛べない人間がいたら? という小説だっていくつかあります。お約束をお約束としているだけなら、発想の面では柔軟にはならないだろうなあと思うわけで。もったいないなー。


 などととりとめなく書いてたら、そろそろ眠くなってきました。上みたいなことはしょっちゅう考えていることなんで、また機会があったら書くことにしましょうかね。今回はこのくらいで。


 *1 高橋和也『世界平和は一家団欒のあとに』の感想の直後のセンテンス。お約束のキャラ設定の塊といった話だった。

 *2 「スレイヤーズ!」シリーズが商業活字化された最初の短編では、主人公に倒されるトロールがムーミンの形状でイラストに描かれていた。これはムーミンがムーミントロールという種族であるというのが前提(というかトーベ・ヤンソンによる設定)で、それをあえて描くことでギャグっぽくしてるのである。もちろん、作中、イラストにも何の説明もない。だって、見りゃ分かるし(だから「お約束」)。

 *3 90年代SFの名作。続編である「エンディミオン」シリーズでは、それこそ死者の復活による不死及びその技術を掌握する教会による世界が描かれる。復活前提なんで、教会の緊急連絡用光速艇に乗ると一瞬にして強烈なGでミンチになるとか(到着時に復活する)。









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 ペガサスが飛ぶ話。 第1回(2007年6月中旬


  まだ途中までしか「ロミジュリ」観てないんでアレなんですが、感想をば(*1)やっぱ「サムライ7」の方が私の趣味かなー。「ロミジュリ」の方はわりに穴が目立つので。例えばジュリエットの身代わりとして「赤い旋風」に化けた人が出頭するシーン。罪もない民衆が捕縛されて檻に入れられ火あぶり準備されてるシーンですよ。周囲にはどっからでも火をつけられるように兵士が火矢で狙ってるてなとこ。ニセ「赤い旋風」が檻の上に出現し、緊張に耐えきれなくなった兵士のひとりが火矢を射ます。ニセ者に刺さります。シーンが直で継続し、兵士たちが映るんですが、火矢が一本もありません。そんなわけないだろう。だってシーンとしても展開としても火矢を消す必然性も時間もなかったし。別の場面。大公の不興を買って追放になった市長一家が門のところで馬車から「荷物を改めるっ」と外に出されるシーン。市長の息子ペンヴォーリオとロミオは仲がいいので、ロミオがそこに出現する。で二、三、何かあったらいつでも来い的な言葉を交わす。でロミオの見ている前でペンヴォーリオはさっさと馬車に乗り、馬車発進。っておい、先に降りた市長はどこへ行った? 荷物改めはそんなすぐに終わるのか? てか兵士はどうしたよ? などとマジ突っ込み。このシーン、市長が貴族位を剥奪され、落ちぶれていくと同時に、大公の高圧的な力を見せつける荷改めになったはずだが、ロミオの登場で何だかよく分からないぐだぐだの場面になってしまいました。もちっと見せ方とか、納得させるような展開がほしいところ。穴ってわけじゃないんですが、舞台を空中都市にした意味がまだないので、この先舞台設定にからめた展開を希望。この空中都市、見てるとかなりでっかい。山とか見えるし。地上とのやりとりはあるのか、地下資源や水資源はどうなっているのか、とか気になるところはいっぱいありますが。多分、城から降りれる地下にでっかい飛行石があって、ロミオとジュリエットが墜落していく都市を制御しようとするってのがクライマックスですかな(妄想)。ちょびちょびこれからも見ていくことにしますかね。


 「ロミジュリ」にはリューバ(竜馬)という羽の生えた馬が出てきまして、それが多少なりとも上下の感覚を出してるんですが、それは別に空中都市でなくてもいいよなあと思うわけで。んで、前回ちょこっと世界設定に関してテキトーなことをいってた関係で、ちょこって考えてみました。御題は「ペガサスが存在する世界」ってことで。


 切り口はどっからでもいいと思うんですけど。アドリブでひとつ。まず何故ペガサスが飛べるのかってとこから行きますか。「何故って羽があるからやろう」という人もあるかもしれないが、馬が飛ぶのにどれだけの筋肉と羽が必要なのかって問題がある。「竜は竜の羽で飛べない」という解釈はTRPGの世界ではある意味常識なわけですよ。馬って結構デカいよ? じゃあどうするのか。もちろん「コスモで飛ぶのだそうに決まってる」という説もある。ディープに設定していってもいいんですが、テキトーしましょう(あとで詳細を決めてもよい)。

 設定1「ペガサスが飛ぶのは内部にあるペガサス袋のペガサス物質によるものである

 うわっ、ホントにテキトーやん。ではテキトーついでにその謎のペガサス物質はどういう感じで作用するのかって考えていくことに。ここでふとアニメとか映画のペガサスって空中を駆け下りてきたりしてるイメージがありますなあと思い浮かべる。でも羽で飛ぶ、飛行する、ならば駆ける必要ないどころか、足は動かさない方がいいに決まっておる。空気抵抗が増えるし、バランスが悪くなるだろう。ここでペガサス物質を考える際、選択が起こる。足を使うかどうか、だ。使ってみることにした

 設定2「『ペガサス物質』はペガサスの蹄に作用し、空中を走れるようにするものである」

 うみゅー、多分、こないだ読み返した「JOJO」辺りが効いてますな(第五部辺りで空気を固定するスタンドが出てきたし)。んで追加。

 設定3「空中を移動する際、ペガサスの羽はあくまで補助器官である」

 ははあ、バランスの制御をしたり、離着陸の手助けをするわけですな。この流れからすると、ペガサス物質は蹄付近にしか作用しないってことで、

 設定4「ペガサスが空を『踏み外す』こともありえる

 一度バランスを崩したら、一気に落ちそうですな。蹄が上を向いたら上側に空気が固定されるっぽいし。って、ん? そこまでやると、ペガサス走れないんじゃないか? 空を蹴った蹄は後ろに伸ばされ、その間、馬体はズリ落ちないもんか。いや、アレだ歩き方のヤツがあるじゃないですか、乗ってる人のバランスがよくなるやつ。その辺を工夫すれば何とかなりますか。これでペガサスは空中を走る動物である設定になりました。

 ちょいと視点を変えまして。こうなると人がペガサスを利用して空を飛ぶためにはどうするかっていったら騎乗がメインですな。間違っても馬車じゃない。だってペガサスは飛べても馬車落ちますし。最初はペガサス物質を羽の方に流してみようかと思ったんですが、その場合、「馬というより鳥」に近くなり、下にカゴぶら下げて飛ぶというのもアリかと。でも上走ってる状態ならちょっと難しいかな、しかも「落馬」の可能性があるなら。あ、思いついた。馬車の部分が浮かんでればいいんだ。ばるーんな感じで。馬車の側でイチニシアチブを取って高度を変更、ペガサスを手綱で上下左右の移動で導くって感じ。んー、でもこうなると御者はペガサスを制御する役目と馬車の高度を調整する役目が必要で面倒そう。人数でフォローしますか。てことで、

 設定5「ペガサス曳きの馬車はカボチャの馬車である」

 い、いやあくまでも見た感じですよ。ちなみに離着陸用に車輪がついてるってとこですか。ふーん。ペガサスを用いた空中戦なんてどうでしょう。まずペガサスナイトVSペガサスナイトといった状況だと、同じ高さに置いて有効なのはランスチャージで相手を叩き落とす、あるいは横からの体当たりといったところでしょうか。上から何か落とすというのもいいかも。ただ上を押さえたからといって斜め上からのランスチャージってのはどうか。ぶっちゃけ急な坂を下りているようなもんですから、重心が前に行きすぎるとペガサス転倒、落馬という可能性も高いかな。絵的にはかっちょええんですけどね。落ちたらえらいことになるという点からも騎手はペガサスにがっちりくくりつけて置いた方がいいでしょう。「ドラゴンナイト」がベルトで身を固定しているような感じで。城攻めとかはどうでしょう。斜め上からの突撃は訓練次第でしょうが難しいとして、メリットはどこにあるのかっていったら、空中からモノを落とす、障害物が苦にならない、敵の後方に回り込める軌道性といったところですか。地上兵力が城壁とかめぐって攻防してる最中に城壁軽々越えたり、本丸に攻め込んだりするのが可能ですから。


 とまあ、こんか感じで世界設定やってたりするわけですよ(実際は同時多発的にいろいろとやってる)。結構楽しそうでないかい? とかなんかつれづれなるままに考えてったらそろそろ眠くなってきました。今回このくらいで。続きはまた次回、やる、かも。やるなら、ペガサスのいる社会をメインに、といった方向ですかね。ちなみに今回「蹄」ルートだったんですが、「羽」ルートだったら、多分ペガ公どもはカラダをどんどん小さくして体重を軽くし、羽周りをどんどん大きくといった進化になった可能性大。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第2回(2007年6月下旬


 んで、誰が待ってんのか分かりませんが、お待ちかねの前回の続き。前回のあらすじ「ぺがさすってどうして飛ぶの?」「それはね、ペガサスの中にあるペガサス袋のペガサス物質の力なんだよ」「コスモじゃないの?」「それはいわない約束だよ」みたいな感じ?


 まずは報告から。謎物質の名前が決定しました。いや別にナゾベームとかでも良かったんですがね。ってそりゃ違うイキモノの名前ですかそうですか(鼻行類だ)。名称はメリグリン2ってことで。

 と多分、ここらで目が点になってるかと思いますが、そりゃあ途中経過すっ飛ばしてるからですな。わざとやってるんですが、流れを解説するとこんなもん。
 1)クスリっぽくするために「〜リン」みたいな名前にする決定。
 2)「ペガサス」+「リン」=「ペガサリン
 3)な、なんか響きがアレじゃねえ?
 4)「ペガグリン」に変更。
 5)「グ」ってどっから来たんだよ?
 6)「ペレグリン」が思い浮かぶ。よし発見者の名前ってことにするべ。
 7)メリーの立場はどうなる?
 8)「メリアドク=ペレグリン物質」にして発見者を二人に設定。
 9)略称「メリグリン」ね。
10)他にもあるっしょ?
11)んじゃ、「メリアドク=ペレグリンの第二物質」に修正。
12)略称「メリグリン2」
13)元ネタから切り離すことに。「メリグリン」が発見者の名前に

 以上。ここまで来れば元ネタなんで分かるまいて。うひひ。ちなみに「第一物質」っていったら、「背が伸びる成分」ですよ、もちろん(元ネタは『指輪物語』ですね←バラしてどーする)。1)〜13)までの所要時間2分ってとこですか。


 んでわ改めて前回の続き。予告とは違う形になりますぞ。社会なんて行き着きませんでした。いや考えてたの1日くらいだったんで、凍結状態なんすわー。

 とりあえずメリグリン2は蹄から分泌され、その際に接触してた空気を固定することになりました。多分、蹄にかなり近いところに分泌用の「ペガサス袋」があると思われ。疾走時に力を入れると分泌、固まった空気を蹴りつけて前進みたいな感じですかね。そこでふと思ったのは、「ペガサスは人を蹴ることが可能か?」というものでして。いや力入れると空気固めるんだったら、人を蹴ろうとしたら人の直前で空気が固まってしまうのではないだろうか。てか、固まった空気は「動く」のか? 直前で固まった空気は蹴りつけられて人に当たったりしないものか?

 ここで、

  設定2−1:固められた空気は動かない。
  設定2−2:効果時間はペガサスが足場を蹴りつけるくらいの「瞬間」

 を追加。嘘つくときはなるべく嘘を入れない方がいいってのは当然でして、こうしたファンタジー設定考えてるときも同じですわいな。多分今回の設定が「嘘」に当たる部分、つまりキモになるとこですね。あ、ちなみに力入れないでフォロースルーで人を蹴る感じになるかと思います。バッティングと同じで、球が当たる瞬間に力は入りますが、その後キャッチャーカッ飛ばすことも可能、つまり「蹴ることは可能」ってとこで。


 ここでもうひとつ、かなりでっかい分岐点が発生。すなわち、「メリグリン2」が固めることができるのは「空気」だけなのか? ってこと。地面はどうなの? 水は? って広げていくと「じゃあ生物は?」ってことになりかねない。水上を走るペガサスもいいですが、ここは、

  設定2−3:「メリグリン2」は空気のみを固める。

 ってことでひとつ。こうした仕組みであれば、多分、ペガサスは垂直上昇ができません。垂直のハシゴを手を使わないで、駆け上る(時間制限有り)ことができるかどうかみたいなイメージですか。今回はお遊びでやってるんで、馬の足の構造まで調べていないのでもしかしたらできるかもしれませんが、どうなんでしょう。高度を上げるためにやるのは斜め上に向かって駆けていくってのが一番ですかね。もうひとつは螺旋状に駆け上っていく形になるかと。あとやっかいなのは、「ペガサスって空中で停止できないかもよ?」ってこと。いやだって効果時間「瞬間」ってことはメリグリン2出しっぱなしじゃないといけないわけだし、無限に出続けるわけでもなかろうし。難しいような気もします。が、訓練したペガサスならできるかも。

 あとイメージの補強として、
 
  設定2−4:蹴られて砕ける空気は固形物扱い(ただし基本的に位置固定)。
  設定2−5:砕ける空気は微妙に発光してみたりする。
  設定2−6:何度もメリグリンに固められた空気は、固まりやすくなる。

 というのを付与。2−4は「疾走するペガサスの足下で蹄の音」を再現するため。2−5は疾走するペガサスは下から見ると火花を発しているようっすよ(夜見るとキレイ)。2−6で、「ペガサスの通り道」みたいなもんも発生。渡りペガサスとかが毎年通る空路があるかも。

 なんてことを考えていたら、次に、

  設定2−7:死期を悟った野生のペガサスは、「ペガサスの墓場」に行く。

 死期……? これにからめて、

  設定2−8:メリグリン2の分泌は、老齢のペガサスは衰える。

 じゃあ、「ペガサスの墓場」ってどんなとこですかね。

  設定2−9:「ペガサスの墓場」は窪地で内側は断崖絶壁。

 なんてどう? つまり飛べるペガサスは出ることも可能だけど、ってとこ。最後の飛行能力を使って、「墓場」に降りるのですよ、多分。


 てとこから、、さらにペガサスの生態情報の追加、地上種の開発、妨害物質の発見、軍事利用の歴史等に展開していく(実際大雑把なところは考えてみたりした)んですが、今回はこの辺で。飽きてなかったらまた次回書きます。いや、なんといっても本人お遊びのつもりで気楽にやってますんで、あんまし力入れるのもあれかなーと。マジだったら、馬の本とか鳥の本とか読み漁った上で設定に加えるところと無視するところを選択しつつ作り込んでいくと思うしねー。第一、今回アップするものが多いので(主にバナー)そろそろ時間切れなんすわー。すみません。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第3回(2007年7月上旬


 というわけで、前回の続きです。前回はたしか帝国軍を辺境伯率いる騎馬隊が散々打ち破って圧政打倒に一歩前進といったところまででしたか。いや、そんな事実はねえー。私も初耳だ。

 などという冗談はさておき(冗談だったのか?)、凍結してた妄想をいくらか解除してぐるんぐるん(←妄想エンジン作動中)。よし盛り上がってきましたー(主に気分が)


 といいつつ、病気の話。いや空気を固めるところのメリグリン2の分泌とかいろいろ考えたら、そんな方向に話が行っちゃったのです。メリグリンの分泌に関して。老いたペガサスは次第に分泌が衰えるという設定は前回出ましたが、じゃあ若くてそんなんはいないのか。例えば病気で、とか。

  設定3−1:メリグリン2の分泌過少に陥る病を蹄割病という。罹患した場合、飛行困難になるか離陸困難になる。

 まあ空気が固まらないとか固まりが不十分になるわけですし。ぶっちゃけ危ない。分泌が少なくなって乾いた蹄が割れる、そんなイメージ。んじゃあその逆はどうだろうか。

  設定3−2:メリグリン2の分泌過多に陥る病を蹄腐病という。罹患した場合、飛行困難になるか着陸困難になる。

 通常走行の場合、脚を下ろす際に空気を固めて、それを足場にして前に進むのです。が、メリグリン垂れ流しだと、脚を下ろそうとしたところが固まってしまうので、バランスが悪くなるか上に上に行くしかないという感じですか。あるいは筍のように空気の固まりが上に伸びていく感じ。じゃあ、もうひとつ。

  設定3−3:四肢のメリグリン2の分泌バランスがおかしくなる病を狂蹄病という。罹患した場合、まっすぐ走るなどの基本的な動作が困難になる。

 これは例えば、右前脚と左前脚でメリグリンの分泌量が違うとか、そういった感じ。とりあえずこんなところですかねえ。んで、ペガサス飼育したりしている人間がいるならば、病気だったらどうにかしようというのが現れても不思議じゃありません。

 うーん、上のような病気だったら、ここで一発蹄鉄の出番です。

  設定3−4:メリグリン関連の病は蹄鉄でどうよ?

 出過ぎるのを抑制するキャップとしての蹄鉄、外に出る分を調整する弁としての蹄鉄、割れやすくなった蹄を保護するための蹄鉄、の3タイプくらい(最初と二番目は同じかも)。


 で、ここまで来て、蹄鉄を使うあたりからようやく新展開です。何ができるようになってかってえと。

  設定3−5:蹄をかぶせることによって、空中を走れないペガサスが出てくる。

 健康なペガサスだろうと、です。当初は病のために飛べなくなったペガサスは肉に、というルートもあったんですが(多分今もある)、もうひとつのルート、すなわち地上種への道発現。つまり馬としてのパワーを荷馬車や馬車馬等に用いる方向へ。地上を走るためには、翼が邪魔なんで、切り取ったり、縛り付けたりして矯正へ。もっとも成馬で後天的に飛べなくなった場合、翼でバランス取ってるのは直らないような気もしますが。さらにそれら同士で掛け合わせて世代交代をするうちに、翼の小さい種、あるいは翼の退化してなくなった種が出てきます。よし、地上種誕生。ただし、

 設定3−6:ペガサスの地上種は一段劣った生物として長い間見られていた。

 てのを付与。なんでかっていったらですね、

 設定3−7:戦闘におけるペガサスナイトは戦の華である。

 ってのがありまして。戦場におけるペガサスの強みはその機動性にあるわけです。迂回して攻撃とか後方攻撃とか急襲とか。さらにはペガサスナイト同士の戦いであれば一騎打ちですかな。しかも空だから結構周囲からよく見える。そんなペガサスを見慣れてる人々からすれば、地上種なんてのは所詮羽のないペガサスですから。つまり我々からすれば馬がいて、それに羽のついた状態でペガサスなんてのが幻想の生物として存在しているのですがね。その逆なんですな。ペガサスがいて、そっから地上種が出てくる流れ。

 実はもうひとつ蹄鉄の発達によって新たにできることがあるんですが、それはまた次回以降に回すことにしましょうかね。


 で、別のネタ。考えていくときに馬などからペガサスの生態を類推していったりするわけですが、そこではたと気付いたことがある。ペガサスって何色? 映画やら何やらの影響で、なんとなく白馬のイメージがないですか? 「ロミ×ジュリ」ではティボルトが黒いペガサスに乗ってましたが、そこら辺がせいぜいですかね。でも、馬から類推していけば栗毛や赤っぽいのや毛足の長いのとかいてもおかしくないし、ぶっちゃけシマウマなペガサスなんてどうよ? 

 設定3−8:ペガサスにはいろんな毛色のものがいる。

 って話をしだすと、じゃあ脚の長さとか体型とかそういうのもいろいろありそうですね。

 設定3−9:ペガサスには体型等で血統の流れなどがある。

 耐久力のあるやつとか速度に勝るものとか高々度に慣れてるやつとか。あるいはいろんな血統を掛け合わせてみるとか。あとは、ここまでやったら、念のためこれも忘れないように、

 設定3−10:ペガサスの知能は馬並である。

 下手に人間並とか考え出すと、品種改良とかどうだということになりそうなんで、ここらで制限をつけておきましょう。もちろん、知能を高くすれば別の流れになる(人間との交流とか)わけですね。


 さらに今回のもうひとつデカいネタであるところの妨害物質について。発想の原点はシンプルで、メリグリン2が空気を固めるというところから。空気中の成分と結合したりするんだろうと展開、だったら、メリグリン結合物質が少ない状態なら固まりにくいんじゃないか? という流れになったのです。こっから、

 設定3−11:空気の薄い場所(高い場所等)ではペガサスは飛行困難になる。

 だからさっきの血統話で「高々度に慣れてる」というのが話題にもなるってことで、つまりそういう種だと荒れた馬場でもばっちりなわけです。そう、メリグリンが作用しにくい状態ってのはつまるところ荒れてるとか足場の悪い地面なわけです。
 じゃあそういう状態を作るものはないかってことから、

 設定3−12:メリグリン結合物質にメリグリンより結合しやすい物質がある。

 すなわち、それが混じっていればメリグリンが作用しにくくなる。これは発見に関わる事情から、

 設定3−13:メリグリン妨害物質はミノ粒子と後に呼称される。

 あ、流れとしてはミノフスキー粒子とかゼッフル粒子とかが念頭にあったので。前者は「ガンダム」シリーズに出てくるビームとかを妨害するような粒子ですか。艦隊戦のときに「ミノフスキー粒子散布!」とかやってるんです。これがあったため、それをかいくぐって敵を倒すためモビルスーツが発達する、だったかな(うろおぼえ)。後者は田中芳樹「銀河英雄伝説」に出てくる爆発性の物質。ビームやミサイルで宇宙戦争やってるときに、強襲揚陸艦で敵艦に乗り込みゼッフル粒子散布。ビームとかだと爆発しちゃうんで、斧使った白兵戦になるシーンがありました。

 で、前述のようにペガサスは戦場の主役であり、その機動性のため、対ペガサス用に「着陸できないような」「上空から狙撃急襲しにくい」斜めに傾いた階段状の砦とかができるんですが、ミノ粒子の発見により、状況が変わります。

 設定3−14:ミノ粒子はミノタウロスによるペガサス狩りに使われていたものである。
 設定3−15:戦場において敵ペガの行動を阻害するためにミノ粒子散布が行われるようになる。

 3−14のため呼称は「ミノ粒子」です(きっぱり)。ミノ吉粒子とか内心呼んでましたが(みのきちーと伸ばすとさらによい)。さらにメリグリンと違って一瞬で作用しなくなると妨害もあったもんじゃないんで、

 設定3−16:ミノ粒子はわりと滞留して残る。

 ってとこですか。

 もちろん、どこら辺に散布したのかをちゃんと把握してないと味方のペガサスも飛べなくなっちゃうんで大変です。これの進軍妨害を破るために、

 設定3−17:ミノ粒子は燃える。

 なんてのはどうでしょう。攻撃側は進軍ルート確保のため、防御側はミノ粒子濃度の高い場所で泥沼に入ったようになっているペガサスを脅かすため、火矢を使ったりするのです。脅かすだけで、ペガが落馬して墜死なんてのが考えられますんで、爆発、とかまでいかなくてもいいかな。

 ミノ粒子の登場により、ペガサスは一気に戦場の主役から脱落します。隙を見て使うとか、後方輸送とかそんな使い方になっていきます。その流れで、

 設定3−18:ペガサスナイト衰退後、戦場のメインになるのは歩兵である。

 ことに地上種が見下され、ほとんど繁殖もされてない状況だとこんなとこでしょうか。基本は軽装歩兵による戦闘だったのですが、帝国(あ?)が重装甲兵を鍛えて投入。ことに重装甲弓兵辺りの活躍によって、帝国領が拡大、大陸統一に邁進します。

 よし、つながった! なんだかいまいちよく見えませんが、冒頭とつながりました。よしとしましょう。


 てことで今回の妄想劇はこのくらいで。次回の方向性としては、地上種の発達、蹄鉄の話その2、ミノタウロスのペガサス狩りについて、とかですかね。まだたいして考えてないんでどう転ぶか分かりませんが












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 ペガサスが飛ぶ話。 第4回(2007年7月中旬


 というわけで、前回の続きです。前回はたしか帝国軍を辺境伯率いる騎馬隊が散々打ち破って圧政打倒に一歩前進といったところまででしたか。いや、そんな事実はねえー。私も初耳だ。……いや、合ってる合ってる。基本的なとこは。


 いくつかまたちょいと考えていくことに。何故だか分かりませんが、今回はあんましこちらのまっとうな流れに妄想エンジン使ってる暇がなかったので。

 前回ミノタウロスが出てきたので、そっから派生させていきましょう。とか考えてたら、ミノタウロスを種族と仮定してその文化程度に関して話が進みましてね。ミノ吉どもはどの程度の文明度を持っているのか。ゲームとか見ると、ミノタウロスってでっかい斧持ってたりしますやん。あれってどうやって手に入れたのか。神話的に見れば、ミノタウロスを討伐しにきた(「討伐死に来た」と変換したが似たようなものだ)人間がドロップしていったものという可能性が高い。ミノタウロスが製鉄技術等を持っていれば、自力で金属製武器入手も可能でしょうが、それがないなら石斧とか石槍レベル? はたまた交易によって入手しているのか。異種族創造するにあたっては、この辺りのことを設定しておかないと大変なことになります。言語はあるのか、あるとしたらそれはどの程度広まっているのか。狩猟系種族なのか農耕やってるのか。

 前回の設定から、ミノタウロスがペガサス狩りをしていたという話があり、そっからミノ粒子を利用するテクニックがあったと推測。てことは、こいつら狩猟系という線が出てきましたなあ。「山の民」みたいな感じにしときますか。時々山から下りてきて、人間と交易してるとか。

 設定4−1:ミノタウロスは人間と交易をしている「山の種族」である。
 設定4−2:ミノタウロスは人間とある程度言葉が通じる。

 場所にもよりますが、「帝国」が大陸制覇とか乗り出してるんだったら、圧迫されてきてるかもしれませんね。案としては、すでに制圧されていてミノタウロスは傭兵立場で帝国に使われているというパターンと、抵抗を続けていて小規模な戦闘が起こっているパターンでしょうか。まだどっちか分からないのでとりあえず、

 設定4−3:ミノタウロスは大勢力ではない。

 とだけしておきましょうか。一大勢力になっていたら、帝国とはかなり激しく戦闘してるかひとつの勢力として同盟結んでたりする可能性があります。まあ野心ある皇帝がいて大陸制覇途中だったら、あんましミノ吉どもを対等な相手として認めないかもしれません。ミノ吉の数が多いなら、辺境伯とかそっちのけでミノ吉制圧にかかっている展開になりそうです。その線で行くなら、前述のシーンはミノ吉がかなりボコボコになってからのことになりますか。

 などと考えていくにつれ、ひとつ疑問が。ミノ吉が兜をかぶるとどうなるのか、あるいはミノ吉用の兜はどういう設計になっているのか。顔が人間型じゃない種族が兜をかぶるとどいうデザインになるんでしょうか。例えば、「空談師」というコミックでは仮想世界が舞台ですが、白の族の総帥ワイトは全身鎧のリザードマンタイプでした。兜は顔の部分がやたら前に出てる形。そりゃあトカゲの顔ですから。ただし、その手の前に長い兜の場合、人のようにフェイスガードを下ろす仕組みにすると、下が開くんですわ、多分。なので顎の下あたりをカバーする蓋を付けねばならないか。あるいはキャップのように前からはめ込んで頭部部分と接続するような形になるのかな。ミノタウロスの場合は加えて角があるので、それも考えねばなりますまい。人間型のようにかぽっとはめる形にすると角が邪魔で引っかかる。んじゃ角が通るようなスリットを兜横につけておくか。でもそれだと横に穴が開いたままなのでそれについては角を通した後で蓋をかぶせるか。とそこまで考えて閃いた。ああ、前後から閉じればいいんだ。つまりプラモデルの頭部パーツのように前部品と後部品に別れていて、角が入る部分が半月型に欠けている。前後から閉じて掛け金を等で固定すればよい。いや待て。どっちにしろオーダーメイドになるっぽいので、いっそ角の部分も覆うような形で前後パーツにしちゃえばよろしい。んで、息苦しいとか大声出すためとか諸々の事情もあったりするだろうから、鼻から口までを覆う先端部、前面を守る前パーツ、後頭部を守る後パーツと分ければいいか。

 などとペガに関係ないこと考えてたせいで時間がなかったということにしときましょう。げ、げえむのせいじゃないですよ?


 んーと、マジメに考えていきませう(今までもマジメでしたが)。


 設定4−4:帝国が強かったのは金属鎧のおかげである。

 もしくは金属精錬の技術とそれによる製品の数ですね。さらに、

 設定4−5:帝国が版図を広げる時期には、まだ「馬」が普及していない。
 設定4−6:帝国が版図を広げる時期には、もう「ミノ粒子」が発見・利用されている。
 設定4−7:地上の生物で「馬」のように軍事利用できる生物がいない、または発見されていない。

 などとしておけば冒頭のシーンが盛り上がるでしょう。というか4−5は必須。4−7については、我々が「馬」として認識するような生物が未登場ってことですね。牛とかいたかもしれませんが使われていなかったと。すると必然的に、

 設定4−8:帝国軍主力は歩兵。

 当初は圧倒的に数で押す感じでごー。もっとも敵対勢力も似たような感じでしょうから、帝国がまだ圧倒的じゃないときには単純に数と数のぶつかり合いメインになったことでしょう。もしかしたら「弓」を効果的に使う部隊が敵か味方にいたかもしれません。というわけで、「弓戦」と「白兵戦」がメイン戦闘。ところがここで「鎧」の配給が万全になってくる。敵の矢などの攻撃は弾く上、こちらの弓は遠慮なくぶっ放す「装甲弓兵」登場。

 設定4−9:帝国軍主力は歩兵→装甲兵→装甲弓兵・装甲槍兵に変化。

 戦術的には槍兵が弓兵を囲んでファランクスを組む。これで歩兵の接近は阻まれる。もっともそこまで近付かせる前に弓兵がいるわけですが。馬のような機動力をもたらす生物がいないわけですから、速攻攪乱が不可。数でも坂道転がるように兵力が増えていく帝国。しかも武器防具の配給もできます。辺境伯に何ができると? というような状況。

 設定4−10:辺境伯の領土では「地上馬」の開発・育成・訓練が行われていた。
 設定4−11:帝国軍の矢を防ぐために、馬用の鎧も開発されていた。ただしこれについては金属製ではない可能性がある。

 馬用防具が金蔵じゃないかもってのは、そんな材料あったら兵士に回すだろうって考えと、騎馬部隊が貴重品だったからそちらを優先させたっていう場合も想定できるので。それを帝国の侵攻軍に辺境泊がぶつけたと。結果、何が起こったか。こないだ読んだ本にあったんですが、武田騎馬軍団って、我々が思っているような数じゃないらしいですね。しかも実際に戦線に投入された回数が少ない。ということはズバ抜けた攻撃力だったわけじゃない。だってそんな圧倒的破壊力があるんだったら、戦線投入回数が多いでしょうし、数も増やしたでしょう。どうも信玄は騎馬軍団を効果的に見せる使い方をしてたようです。馬がですね、何頭も並んで疾駆してくると、怖いですよ。おそらく、我々に車が正面から突っ込んでくるよりも怖い。まず第一に、そのような状態に置かれることが少ない。車だったら想像つくんですよ。真っ正面ってことはないにせよ、対向車が走ったりしてるの見てるわけですから。加えて、地響きがします。馬みたいなわりに大きい生物が兵士乗せて突っ込んでくる。視覚的には近付いてくるのが分かるし、聴覚的にも音が近付いてくるわけです。その上足下の地響きが大きくなってくる。そうしたことを考えると、帝国人は地上馬を見下していて、そんなもんが揃って突っ込んでくるなんて想像したこともないでしょうから効果抜群です。矢弾くような鎧装備してて密集隊形の状態で、パニックが起こります。総崩れです。そこへ騎馬じゃなくて、歩兵が突っ込む。最初の一当てが成功すれば一気に全面壊走に追い込めるでしょう。ほぼ負け知らずだったことにすれば万全。で、逃げ切るためには金属鎧が邪魔。脱いだら攻撃に脆くなるが脱がないと逃げられない。結果として辺境泊軍はたくさんの武器と鎧と、どのくらいか分かりませんが捕虜を得た、という展開ですかね。

 設定4−12:騎馬隊を用いた戦いの後、帝国と辺境の争いが新たな展開を見せる。

 という感じですかねえ。うう、あんまし進まなかったなあ。次はどうなるんでしょう。つーか次あるんでしょうか












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 ペガサスが飛ぶ話。 第5回(2007年7月下旬


 えーと、第5回目ですか? そろそろヘタってきた感じですが、まあボチボチやってきましょうかねえ。


 前回、帝国編が完結したんで(あれ?)、別の方向から今回はワキを固めていくってことで(今決めた)。


 ああ、肝心なことを決めてませんでした、と思い出したことがひとつ。やっぱり馬喰民族の熊本人としては気になるわけですよ(馬喰の意味が違う)。ペガ刺しはうまいのか。たてがみ等の通常馬にある肉に加えて、ペガ先、じゃない手羽先もあるわけでして。

 設定5−1:結局「走ってる」んだから、馬みたいな感じの肉の仕上がり。

 羽で飛んでるわけじゃないにしろ、鶏だって飛んでるわけじゃないんだしなあ、

 設定5−2:手羽先もイケます


 ペガ使った娯楽とかもいいですなあ。とするとレースなんてどうでしょう。空中走るんだから、通常の競馬とはちょっと違った風で。とここまで考えてハタと気付く。群れで飛んでると、危ないかもよ。

 設定5−3:群れで飛ぶときのペガサスは、/状や<状の並びをすることが多い。
 設定5−4:群れで飛ぶときのペガサスは、群れ内で同じ高さを保って飛ぶ。
 設定5−5:一直線で並んで走る場合、間の距離を一定に保つのが前提。

 フォーメーションに関しては、空気抵抗とかそーゆーのもあるんですが、メリグリンによって固化して蹄で砕かれた空気に突っ込むのはどうかと。すぐ後に走ってたら危ないような気がするんでして。同じ高さを保つのは、それによって固化した空気に突っ込むことを避けるため。一直線に飛ぶ利点は空気抵抗が軽くなるとかあるんですが、メリグリンが弱い個体(老いたペガとか病気の個体とか)をフォローするためでもあります。こーゆーのを鑑みて、

 設定5−6:ペガサスは頭上を遮られるのを恐がる性質がある。

 だってそこに別のペガがいるってことは、蹄が来るってことだし。まあこれに関しては他の動物にも当てはまることではありますがね。


 んで、レースの話になると、これまでのペガの性質を考えると、水泳のようにコースを仕切らないと難しいのかなという気がします。上下の高さも考えねばならないので、仕切り入れるなら、結構面倒そう。上下を仕切って通路のようにしてしまったら「飛ぶ」という面を生かせないわけで。しかも観客からよく見えないといけないというのがあるんで。とりあえず、レースは保留かなあ。


 他にレースで考えてたのが、壁があってそこに障害物が杭のようにたくさん出てる中をくぐり抜けていくという形式。杭が届かないくらい壁から離れると失格。で上下どのコースを取るのかとかで展開が変わってくる。てなことを考えていて、

 設定5−7:ペガサスは空中で跳躍ができる。

 というのを思いつく。踏み切るときにメリグリン、障害物を越えて自由落下、着地ポイントで踏ん張ってメリグリン。これだと空中で障害物ジャンプが可能。着地ポイントの指示なりをしないとえらく浅いところに「着地」したり、深いところまで落ちちゃったりとかするわけですな。

 他にレースを面白くする要素としては、ハンデ戦などでしょうか。馬体に重しをつけたりするって手もありますし、蹄鉄でメリグリンの量を制限するなんてのも面白そうですね。


 てことで今回時間がないのでこの辺で。次回は飽きてるか、もちっとヘビーでシリアスな話にしたいかなあ。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第6回(2007年8月上旬


 ペガ話、6回目でーす。諸々の事情で1回休みにしようと思ったんですが、気が変わりました。

 延ばし延ばしにしていた蹄鉄の話から。設定3−1から3−4で出てくるんですが、

 設定3−1:メリグリン2の分泌過少に陥る病を蹄割病という。罹患した場合、飛行困難になるか離陸困難になる。
 設定3−2:メリグリン2の分泌過多に陥る病を蹄腐病という。罹患した場合、飛行困難になるか着陸困難になる。
 設定3−3:四肢のメリグリン2の分泌バランスがおかしくなる病を狂蹄病という。罹患した場合、まっすぐ走るなどの基本的な動作が困難になる。
 設定3−4:メリグリン関連の病は蹄鉄でどうよ?

 病気を治すためなどの理由で蹄鉄が出てきたあたりの設定からの流れです。ここで私の頭に浮かんだのは、メリグリンの抽出ができるのではないか、ということ。空気に触れた時点でメリグリンは空気固化作用を始めるのでそれを回避できればメリグリンが採れる。蹄鉄を装着することによって空気に触れるメリグリンの量が調整できるんであれば、蹄鉄にメリグリンを溜めることができるのでは?

 設定6−1:メリグリンの抽出は可能である。

 迷うところではあるんですがねえ。これにもうひとつの設定を付けるかどうかで流れが大きく変わります。

 設定6−2:メリグリンの合成は可能である。

 6−2については6−1の設定があって初めて可能になることだと思われます。よって時代設定的には、可能時期のズレが生じる可能性大。これまで延ばし延ばしにしてきて、あんまり考えたくないなあと思ってたのは、そのギャップの時期のイメージとして出たもののせいかもしれません。すなわち、

 設定6−3:合成が可能になるまで、あるいは合成が不可能であるなら、メリグリンの抽出は地上種を含むペガサスから行われる。

 乳搾りのようにはいかんのですわ、これが。何となれば、メリグリンは、力んだときに出るもんですから。それも空中での緊張。とすれば、

 設定6−4:メリグリン採集のため、人工的にペガサスを蹄腐病に感染させる方法がある。
 設定6−5:メリグリン採集のため、ペガサスは両足を固定した上で宙に吊され、空中にいるような状態を再現させられる。

 ひどいなーと思う(だからやりたくなかった)わけですが、多分効果的な方法ではないかと。馬房にずらりと吊されたペガ達とか病気でちょっと雰囲気違うペガ達がずらりとか、そんなイメージが浮かんでしまったのですよねえ。もちろん、蹄腐病ペガが出すメリグリンが通常のメリグリンと量以外は変わらないというのが条件ですが。両足固定するのは、採集者の安全のため。でダメになったペガは肉になって前回の設定の役に立つか、地上種として乗用馬になるのか。

 こうまでして抽出採集することに何の意味があるのか。あるいは合成するメリットは、といえば、つまるところ、ペガなしでメリグリンが利用できる、ということでして。大量生産できるようなシステム及び状況に応じて的確にメリグリンを放出できる機構さえあれば、人や建物を宙に浮かすことができます。やり方によっては浮かし続けることもできるでしょう。あるいはもっと単純に物の荷運び等が楽になるということもあるかもしれません。これができればブレイクスルーになるポイントだってのは分かってたんですが、まあ、深く考えていくとまた問題点とか出てくるかも。


 てな感じで、とりあえずそろそろ終わりが近いかなあという気もします。次回は、もちっといろいろな側面を考えようかなあ。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第7回(2007年8月中旬


 ペガ話、7回目でーす。と見せかけて、ここで切り替えが入ります。って切り替えって何さ? いやあ、ぶっちゃけそろそろ飽きてきたというか、このルートで突き進むのも、他の設定(ミノだけじゃなく他の種族や文化とか)絡ませないと展開しにくくなってきたんで、ちょっとルート変更です。B面です。オートリバースなのです。


 これまでの設定ではペガは「メリグリン2」という物質を蹄から排出することにより、空気中に瞬間足場を作り上げて空中を走る、という設定でした。今度は趣向を変えて別の設定から作り直していこうかな、と。それによって、どの程度違いが出てくるのか楽しめればいいなあ。


 今度のルートの基本設定は、ペガサスは体内内蔵の謎物質で空を飛ぶ、というもの。……あれ? 一緒じゃん! いやいやいや、今度はラピュタ的飛行石で行ってみようかなと思ったり。前回までのルートが「蹄で駆ける」のを再現しようという趣旨だったので、今度は「翼でごー」をメインにしてみましょうかね。


 本格稼働は、次回からなんですが、そのプレ段階としまして、「ラピュタの飛行石」の効力等に関して考察してみましょう。前に文芸部の部長さんにアドリブでぶちかましたものを思い出しつつ考えていきませう。これによって、どこをどうするとどうなるのか、完全に同じものになるのか、ちょっと違うものにするのか、ちょっと違うものになるのか、見定めてみましょうかね。ああ、ちなみに設定資料とか一切見たことないんで、ホントかどうかはマユツバ理論ってことでひとつ。


 てことで、「天空の城ラピュタ」を観てない人、あるいは忘れた人そっちのけで進めていきます。興味があれば映画をそのような観点から観てみても面白いかと。てかこれやるために私DVDでまた観ちゃいました。


 基本的な設定から。

 ラ1−1 飛行石は自然状態では結晶化しない。
 ラ1−2 飛行石を結晶化させる技術はラピュタ人が開発した。
 ラ1−3 ラピュタ人は飛行石の力を他にも引き出すことができる。
 ラ1−4 ラピュタの力を引き出す鍵は「飛行石のペンダント」である。
 ラ1−5 「飛行石のペンダント」の力は通常封印されている。
 ラ1−6 「飛行石のペンダント」の力は封印解除により呪文や動作を知れば誰でも使えるようになる。

 1−6については確定ではありませんが、こうしておかないと、ヒロインであるシータと「滅びの呪文」を一緒に唱えた主人公パズーがアホみたいになるんで(だって一緒に唱えるという行為に意味がなかったことになりかねない)。あ、あとポム爺さんのシーンから飛行石は共鳴する、という特性もありますな。

 とまあここまでは、おおよそ観てれば分かることで。問題は、「飛行石の力とは何だったのか」という点。この辺りを解読しておかねば、飛行石の力の本質や限界、そこから導き出される現象に言及できますまい。

 まずキーになるのは、

 ラ1−7 飛行石の持つ力は「何かを飛べるようにする」ものではない

 という点。「え?」と思われる方もいらっしゃるでしょうね。しかしよくよく観れば分かるが、飛行石の力が思い切り発揮された際、何かを自由に飛び回らせるシーンはひとつもないのである。どころか、OPテーマの古い絵みたいなものが出てくるシーンで、天空の島はすべてプロペラで浮いて、プロペラで飛んでいたりするわけでして。まあそれは伝承みたいなもんだとしても、実際問題、飛行石のペンダントってすんごい力を持っている設定なわけですよ。しかし、長年石を見てきたポムじいさんが「初めて見た」といいビビり入るくらいの結晶がですね、14歳くらいの小娘を持ち上げることすらできないんですわ、あれ。さよう、最初の方でシータが飛行船から落ちて飛行石が力を発揮するんですが、シータは飛ぶんじゃなくて、落ちてるんですよずーっと。一時も停まることなく。

 ラ1−8 飛行石の力は、上向きの浮力を与えること

 ではないかと仮説を立ててみたり。どの程度の浮力が与えられるかは、石の大きさとかに関係するのではないか、と。ということは、都市ひとつまるまる浮かべて、釣り合いを取って浮かべたままにしていたラピュタの飛行石はどれほど化け物だったか分かるというものです。

 ラ1−9 飛行石の力は所有者(命令者)を中心に発揮される。
 ラ1−10 飛行石の力は接触により伝達される。

 ちと分かりにくいですかね。仮に飛行石の力が飛行石にしか及ばないのだとしたら、ペンダントの飛行石って力を発揮した段階ですっ飛んでしまいそうですし、首から下げてて所収者に力が及ばないなら、ヘタすりゃ首吊りです。あと接触による伝達は、二度目のフリーフォール時(線路から鉱山跡に落ちるとき)に分かります。最初抱き合ってたシータとパズーは浮力を得るんですが、手を握っているだけでパズーの落下速度も大幅に減るのです。廃坑に入ったとき、パズーが手を放した途端、パズーはシータより早く自然落下で着地しますし、手が離れた瞬間、シータの落下がさらに遅くなります。


 さて、ラピュタの飛行石が映画後半では出てくるのですが、この力は、「ラピュタを浮かべる」「ラピュタの雷」「ロボットの起動」辺りとして展開してきます。飛行石が持つ力を「上向きの力」とすれば、ラピュタを浮かべている飛行石は尋常じゃない力を持っているわけですが、ここでふと疑問が。飛行石の力とラピュタの重量って釣り合ってますよね? 計ったように? 何で? 飛行石のペンダントの力はシータの重さよりも小さなものだったから、力を発揮しても落下は防ぐことはできなかった。もし逆に飛行石の力が大きければ、飛び去ってしまったでしょう。ラピュタの飛行石がラピュタを浮かべているという事実は、そこに住む分にはかまわないんでしょうけど、例えば、ラピュタを上下させる必要性が出てきたとしたらどうなるんでしょう。力がイコールであるとしたら、飛行石を備え付けたままラピュタを地上に降ろすためには、重しを載せるくらいしか思いつきませんでした。じゃあ高度を上げるには? そうしたことをつらつら考えていると、

 ラ1−11 ラピュタの飛行石は力をコントロールすることでラピュタを浮かべている。

 のではないかな、と。つまり本来飛行石の力>ラピュタの重量がデフォルトで、それを飛行石の力=ラピュタの重量になるようにコントロール、というか制限。余った力を別のところに使っているというのはどうよ? 上向きの力は力ですから、エネルギー変換ができるわけですわな。蒸気機関は蒸気がモノ持ち上げる力を利用してエネルギー変換するし、内燃機関はモノが燃えるときの爆発力をエネルギー変換するわけですな。飛行石の余った力を別のところに向ければ、例えばロボットの動力源、例えばラピュタの雷、例えば気圧を下げる、などといった行為ができるのでは。ラピュタの科学力は世界一いぃぃ!

 ロボットの動力源が飛行石のエネルギーであったとすれば、いくつか説明できることが増える。要塞のシーンで、壊れたと思われていたロボットが動き出しますね。あれはシータが飛行石を発動させたことを契機に再起動するわけです。ロボットがシータに対して礼をしてみせる場面があるんですが、あのとき、ロボットの胸にあるラピュタの紋章に向かって、飛行石のペンダントから光がびーっと飛びます。あれはいったい何だったのか不思議だったんですが、ありゃあエネルギーの補充だったのでは? ロボットはシータを守るようにビームをまき散らして要塞を火の海にするのですが、シータと会う前と会った後では、その活動量がまったく違います。飛行石から光を受けるまでに、直接攻撃をばしばし受けてたにもかかわらずロボットが放ったビームはたしかたった3発です。閉じこめられていた部屋の入口を壁ごと吹き飛ばす、縦穴の蓋が閉じられたときにそれを吹き飛ばす、シータがムスカに捕まっている橋を一閃して焼き切る、です。飛行形態にしても、縦穴を最初から飛べばいいのに、実際に飛んだのはシータ(と飛行石)を確認してからです。それが途中からビームは乱射しまくりですわ。ということは、ラピュタから墜落したロボットはシャットダウンしていたものの、飛行石の力を感じて再起動、中に残っていた少ないエネルギーで飛行石とその持ち主への接近を企てたのではあるまいか。

 てことで、

 ラ1−12 飛行石のエネルギーはいろいろ変換できる。


 さて、飛行石の効果が「接触発動」だとすれば、クライマックスでのラピュタ崩壊はどうなるか。滅びの言葉を唱えると同時に、巨大飛行石は上に向かってカッ飛んでいきます。その際、ガラスが割れるような描写があるんですが、これって飛行石を固定していたエネルギーフィールドが砕けたのでは? 上の推測設定を元にするなら、エネルギーフィールドを作り出して、そこからどんどこ余剰エネルギーを吸い取って活用していただけでなく、それによって「接触」が発生し、上に向かう力がラピュタの下部に伝わっていたと思われます。滅びの言葉によって飛行石が解放されたのならばどうなるか。具体的にいうならエネルギーフィールドとの接触が断たれたならば。まず飛行石が本来持っていたはずの上向きの力が復活します。膨大な力をエネルギーフィールドが支えられず、フィールドが崩壊(フィールドが耐える可能性もあったかも)。そこから押さえつけるものもなく、飛行石が飛び立つ、といったことになります。同時に、飛行石と接触する形で浮力を得ていたラピュタ下部が次々に落ちていきます。巨大樹に引っかかった飛行石がそれを持ち上げる形で上昇を続け、巨大樹と根っこに接触していなかった部分は次々に落ちていったわけですな。


 ところで。「ラピュタ」に限らず、映画とか小説等で、「私ならこうするのに」ということってあるわけでして(ない?)。そういうのは不満からだったり、何故こうなるのか、という疑問からだったりするのです。「ラピュタ」に関していえば、後半ラピュタが何故海上で大暴れしているのか、ということがどうも。ラピュタの雷ぶっ放すのも、将軍たちを落っことすのもすべて海の上。もしラピュタのダークな面、破壊力等を効果的に示すのであれば、海で爆発起こすより、地上を吹っ飛ばした方が強烈でしょう。それをしないのは、ジュブナイルだから? ちっ、私もスレてしまったということか。


 後半の展開をちょっとイジってみると。ラピュタ移動→ラピュタの雷で山ひとつ吹き飛ばして威力を誇示→将軍たちは地面に叩きつけられる(が、そこまでは映さない)という流れにし、抵抗しようとするシータとムスカの会話。

 ムスカ「ははは。聞き分けのないお姫様だ。あの街に見覚えがないかね」
 シータ「……え」
  ト、シータ、顔色を変える。

 いつの間にかラピュタは鉱山街に接近している。空中戦艦とラピュタの戦い。ロボットたちの出撃。それを見上げる鉱山街の人々。空中戦艦撃墜。鉱山街の外、谷の上辺りに墜落する。

 ムスカ「もう少しで街に落ちるところだったな」
  ト、ムスカ、にやりと笑う。
 ムスカ「君の聞き分けがよくないと、あの街は新生ラピュタによって最初に滅ぼされる街になるだろう
 シータ「そ、そんな……」
  ト、シータ、息を呑んで、街の映像を見る。

 隙を見てペンダントを奪い、シータが逃げる。逃げ回っているうちにパズーと接触。
 シータ「パズー、これを。海に、捨てて。街が……」
  ト、シータ、ペンダントを渡す。


 後はしばらく通常通りに展開。ムスカが鉱山街を人質に脅迫してくるのがポイントで、「鉱山街を救うためにムスカにラピュタを自由にさせる」と「鉱山街を見捨ててラピュタを滅ぼす」という二択が発生するわけです。シータとか気にしそうだし。うーん、これで結構難しい問題になりました。こんふりくとです葛藤です。街の上空をロボットが飛び回るとこなんて入れたりして。


 場面が流れて、パズーがシータと合流。「シータと話がしたい」で3分間の時間をゲット(オリジナル通り)して抱き合う少年少女。

 パズー「おばさんたちの縄は切ってきたよ」
  顔をあげるシータ。
 パズー「街の人たちもみんな避難してる。大丈夫。鉱山の人たちは強いんだ」

 という流れにして、合流するまでのシーンで、街のカットを入れておくと。最初はドーラ一家が街の人を誘導するかと思ったがちとふさわしくない。ので、街の人たちは親方や鉱夫たちに導かれて避難するシーン。どこへか? 前半で出てきた廃坑ですわ。ポム爺さんが案内するわけでございます。ペンダントを持っていたパズーは、その場面を何となく分かった、とファンタジー設定。


 オリジナル通りに滅びの言葉でラピュタが崩壊。ラピュタのパーツは鉱山街に降り注ぎ、洞窟がぐらぐら揺れるわけです。同時に、フルパワーの飛行石に共鳴して、廃坑内の飛行石成分が力を発揮、上向きの力全開で洞窟を支え続けるのです。もちろん、中では星空めいた光景が乱舞してるシーン。


 でエンディングは、ドーラ一家と別れたパズーたちが街にゆっくりと降りてくる。洞窟から出てきた街の人たちが手を振って迎える、みたいな感じですかね。あ、ちなみに、落下したラピュタパーツとかを使って街の復興もしちゃいますが、これは後日談(おい)。

 などとオレラピュタを嘘理論で展開してきたわけですが、どんなもんだったですかね? 上でいってた推測理屈にはでっかい穴とかあるんですが、その辺をどうしたもんかなあ。無視。ちなみに、穴はロボットに関して。地上に落ちたロボットはラピュタとの接続が途切れても再起動が可能でした。なのに兵士たちを襲っていたロボットたちはいきなり壊れてしまうわけです。この違いはどこから来たのか。もうひとつ、何故花摘みロボット(仮称)は動いていたのか。まあこじつけるなら、ラストで飛び去るラピュタに幻を見た、ということもできますがねえ。


 まあラピュタの飛行石に関してはこんなとこでしょうか。ここら辺の設定を生かしたり殺したり無視したり抹殺したり発展したり転がしたり転がったりしつつ、Bルート「翼でペガサスは飛ぶのよ」に進みたいなあ、ということで次回へ続く。めいびー。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第8回(2007年8月下旬


 てことで8回目というか、Bルート1回目。前回は幕間ってことで、「ラピュタ」に関してトチ狂ったことを延々語ってましたが、まあそういう過去には捕らわれずごー


 さて、このルートの基本方針は、「何とか翼使ってペガサスを飛ばそうよ」ってことをまず確認。前のAルートは「空中で走るペガサス」の再現だったので、翼を使ってペガサスが飛ばないという結果になったのでした(翼は姿勢制御等のために用いる)。


 翼を使って飛ばすとすれば、やっぱりネックになるのは体重。羽ばたきに使う筋肉を増やして翼を巨大化するか、逆に馬体を軽量化するかですね。鳥の筋肉の大半は羽ばたきのためにあるわけでして、それを考えると、馬一頭浮かすにはかなりの肉がいりますか。というか、そこまであんまし翼に肉回すと、馬のように走ることが難しくなるような気もしてきますが。じゃあってんで軽量化に励めば、前脚いらんよなあとか後脚の肉いらんよなあとかどんどん鳥ちっくになっていきそうで。なんてことを考えていくと、ペガサスじゃない別のイキモノになりそうなんで、やはり「飛行石」の導入ですか。


 自由に空を飛べるアイテムを導入すればそりゃ別に翼なんていらんわけでして。やはり「飛行石」のような感じで重さを打ち消す方向でどうよ?

 B1−1:ペガサスは体内に体重を軽減させる謎物質を持っている。

 この辺が基本になりますかねえ。で勝手にふわふわ浮くほどではないという制限を設けて、羽の意味を出しましょう。

 B1−2:体重の軽減したペガサスは羽を使って浮遊及び飛行が可能になる。

 おう、目標達成。Bルート、完。って終わらせてどうする自分。もちっと細かく詰めていきましょうか。

 謎物質を固形物にしてみましょうか。体内にあって作用すると。んでわ、その作用範囲はどんな感じになるのかな。「ラピュタ」だと作用は接触によるものでしたが、ペガサスが飛ぶことに関しては、接触だろうが範囲だろうがあんまし違いはないんでしょうがねえ。とりあえず効果を範囲にしてみます。ペガサスの謎物質を中心に、そうですねえ、馬の大きさを考えてみるに、物質が馬の中心にあったとして、単位はメートル法換算で半径1メートルくらいあればペガサス入りますかね。範囲が狭いと、ペガサスの首だけ入らなくて肩が凝るとかあるかもしれません。

 B1−3:ペガサスは謎物質を中心として半径約1メートルの重量軽減フィールドを形成する。

 ふんふん、とイメージしていくとここで問題発生。例えば人が乗った場合、どうなるんでしょう。フィールドから上半身だけはみ出すと影響は? また、半径1メートルってことは、乗馬せず左右に立ってるだけ人にも作用しますわな。てか、乗らなくても飛べるんじゃ?

 また、例えばそのフィールドは、子馬と親馬では大きさが違うんでしょうか。大きさが同じなら子馬の方がたくさん入る余地があるってことになりかねません(動けるかどうかは別として)。うーん、その辺は、

 B1−4:謎物質のフィールド形成力及び重量の軽減力は成長等で変化する。

 とするのが無難ですかねえ。あと、ぱっと思い浮かんだのは、「親から子にどうやって謎物質は伝わるのか」ってことでしょうか。つまり、後から自然発生する器官なのか、母から枝分かれするように(例えば体液のような感じで)形成されるのか。生まれてからできるのであれば、生まれたてのペガサスは飛べないことになりますわな。親の体内でどうにかして形成されるのであれば、ヘタすると、普通のペガサスよりも孕んだペガサスの方がフィールドが大きいことになるかもしれません。んーと、

 B1−5:謎物質は母馬の体内で分かれ、子馬の中で育つ。

 にしてみましょうか。するってえと、子馬産んだばかりの母馬はフィールドが不安定だったりちょっと小さくなったりしてるのかなあ。

 B1−6:子を産んだペガサスはしばらく飛行が不安定になる。

 うーん、なかなかだと思うんですが、どうにも近くにいるだけで浮かぶ、という効果:範囲のイメージがワタクシ的にはいまひとつだなあ。いろいろ利用はできそうなんですが。

 ちょっと巻き戻して、「効果:接触」を考えてみますか。接触で体重が減るのであれば、半径1メートルとか考えないでいいから、乗ってる人込みで肩凝りの心配もありませんな。

 B1−3’:ペガサスは謎物質を通じて接触を媒介に重量を軽減させる。

 これでもやっぱり軽減させる量とかが多分フィールド制にするよりももっと具体的なイメージになりそうですなあ。

 B1−4’:謎物質の重量の軽減力は成長等で変化する。

 以下略で、

 B1−5’:謎物質は母馬の体内で分かれ、子馬の中で育つ。
 B1−6’:子を産んだペガサスはしばらく飛行が不安定になる。

 てゆーか、1−5と1−6って一緒やん。うーん、あとどっちのルートでも成長等で能力変化があるってことは、人工的に強化できる可能性があるってことで。

 B1−7:重しをつけたりすることで謎物質の力をアップさせたりできるかもよ。

 うわ、何かまた変な方向に行きそうな予感。……あれ? 「効果:接触」ルートでも、馬に乗らず横にいるだけで浮かぶことが可能なんだ。触ってればいいんだから。

 てことは結論:効果が接触でも範囲でもいまいち

 おぐうっ。このルートダメっぽい。いや、もっと違いを考えていけば突破口があるかも。「接触」と「範囲」の違いで何が起こるのかとか。どうにかならんか。ぐぐう。しかしどうも私の勘がダメダメといってるので、とりあえず思考停止。この二つをまた進めるにせよ、他の方向性も考えておかねばなりますまい。どこまで巻き戻せばいいかなあ。くるくる(←巻き戻し中)。

 1−2くらいまでは問題なしですかのう。やはり「飛行石」をどうするかってことかなあ。……はっ。思いついたざます! 「翼」3番目のルート、ぶらーっど。というところで、下旬が終わって月が切り替わりましたので、今回ここまで(おい)。続きは、次回また、多分、めいびー。いや、まあ、全然違うものになってる可能性がなきにしもあらずですが。そんときはそんときっすよ。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第9回(2007年9月上旬


 というわけで、第9回です。って9回!? 3ヶ月もやってんのか私。ともあれペガサスが飛ぶ世界めいきんぐ「翼で何とかひとつ」ルート2回目です。

 前回は、謎物質の効果範囲をいじってて、「接触」「範囲」のどちらもいまひとつな感じで終わってましたか。牝馬の胎内に子どもができたときに効果範囲はどうなるか、ということからペガを浮かせる作用のある謎物質について前回の最後閃いたものがありました。


 B2−1:謎物質は血液中を流れている。


 あ、これ行けるかも。で、


 B2−2:謎物質の効果はごく狭い範囲である。


 なんてのはどう? う、でもこれだと血管がぷかぷかなりそうだ。それに例えばペガサスを流血させたら血がぷかぷかと浮いてそうです。それはそれでいいかも、と思いつつも、数秒考え、ガス交換みたいな感じでどうよ? と閃く。より具体的にいうと、酸素がそうであるようにヘモグロビンみたいな物質によって血管を運ばれ、そっから各細胞に投入されると。そんで、

 B3−3:血管を運ばれた謎物質は、体の隅々から軽くする。


 効果範囲が直近なんで、隣に並んでても浮かぶことはありませんよ。でその謎物質を生み出す器官があって、そっから血液に投入される仕組みで行きましょうかね。んじゃ、実際飛ぶときはどうなるのか。ペガサスが軽々浮かぶような力を謎物質が――、ええと、謎、謎とうざったくなってきたので名称を決めましょう、例によってテキトーに。


 B3−4:謎物質を産出する器官を「バグジー体」、謎物質を「ペレアドク物質」と呼称する。


 由来については深く聞かないように。片方はAルートの逆だ。で余ったのをアレンジして器官名につけただけ。


 話を戻して、ペレアドクの力で、ペガサスがどの程度軽くなるのか。羽ばたいたら軽々と舞うくらいのパワーだとしてみますか。そうすると、ですね、浮かぶのはいいが、ペガのやつ、ゆっくりとしか降りてこれないんじゃないかという気がしてくるのです。羽ばたきを止める→ゆっくり降りてくる、そんな流れになってきて、風情も何もありませんな。


 B3−5:ペレアドク物質は、通常状態でそこそこ体重を軽くしてくれる。


 ぐらいにしておいた方が無難かな。んじゃ、飛ぶときはどうするのか。翼をでかくデザインするか。いやいやいや。せっかく血に流してるんです。


 B3−6:血液中のペレアドク物質の量は一定条件下において増減する。
 B3−7:ペレアドク物質の量は激しい運動をすると増える。


 というのはどうでしょう。あ、一応制限も。


 B3−8:ペレアドク物質の量は上限下限がある。


 極端に増えることも減ることもないってことで。これらの条件でどうなるかってえと、


 B3−9:離陸する前にペガサスは走る。
 B3−10:飛行中にも負担を減らす際には脚を動かす。
 B3−11:高度を下げるときには脚を止めて滑空する。


 お、なかなかいい感じじゃないですか? あとは、


 B3−12:訓練等によってペレアドクの量はある程度底上げ可能。


 ということで例えば重しをつけて過ごさせる。これで通常の分泌量が増えるわけで、そうすると重しを取って人を乗せるなんてことも可能になってくるかと。


 ううむ。前回のルートよりこっちの方が掘り下げていくと面白そうな気がします。今回はここまでにして、次回はもう少し突っこんで考えてみることにしましょうかね。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第10回(2007年9月中旬


 というわけで、第10回です。10回目なんですが、諸般の事情により、お休み

 イベントで馬を見たんですが、動いてる馬ってかなりデカく見えるよなあ。翼をつけたらどうなるか、などと考えてみたりして。記念写真に写ってる馬は、そんなに大きく感じないんですがねえ。


 次回は、どうにかちゃんとやりたいなあ。どうなるかなあ(自信なっしんぐ)。


 などととりとめなく書いてたら、そろそろ眠くなってきました。上みたいなことはしょっちゅう考えていることなんで、また機会があったら書くことにしましょうかね。今回はこのくらいで。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第11回(2007年9月下旬


 というわけで、第11回です。11回目なんですが、考えてみれば実質9回目のような気も。前回欠番だし、しばらく前に「ラピュタ」話に終始した回があったし。ともあれ、この連載部分は、「ペガサスが飛ぶような世界」をテキトーに妄想設定してみる企画でございます。ノリと気分でやってます(きっぱり)。おさらいしますと、Aルート「ペガサスは蹄で宙を駆ける」が第1回〜6回、第7回に閑話挟んで、Bルート「ペガサスは翼で天を舞う」編が第8回〜ってことですな。んで第10回がお休み。第8回でBルートがいきなり終わりそうになり、第9回で持ち直した辺り。


 Bルートのキモはペガサスを飛ばせるために、いかに馬体を軽くするかという方向に進めていったことですか。そのために体重を軽くする謎物質を設定。最初は「飛行石」みたいな感じで進めていったのですが、第9回で血液中の成分で細胞からキレイ、じゃない軽くするとセッティング。

 ペレアドク物質は運動することによって血中に増加するので、飛んでいる最中など体重を軽くするために足を動かす等の動作をすることで「宙を駆けてる」感じも演出できるようになりました。ただし、「翼で飛ぶ」を生かすため、ペレアドク物質の作用は体重をマイナスにするわけじゃなく、そこそこ軽くする程度にしました。


 んでこっから今回の本題。まっこと残念なことですが、このルートは閉鎖されることになりそうです。

 きっかけは、今まで組んできた設定だと、野生のペガサスは人を乗せて飛べないのではないかと思い至ったこと。だって、馬体を翼で飛行できるまで軽くして飛んでいるところに例えば装備込みで70キロくらいの重さが加わったら、どうなるか。そりゃ念のため、

 B3−12:訓練等によってペレアドクの量はある程度底上げ可能。
 なんて設定して、ペガサスライダーへの道を確保しようとしましたがね。考えてみれば、訓練でペレアドク物質の量が増えたとしても、乗ってる人の体重が軽くなるわけじゃないし、結局重いものを飛ばすことに変わりない。てことは、この状態で飛ばせるためには、翼の強化か人を軽くするかくらいしか浮かばないですなあ。馬体を軽くしてもあんまし関係ないし。


 てな感じでちょっと行き詰まり気味。もう少し考えてみますかねえ。もしかしたら次回辺りさらなるペガ進化を遂げてるかもしれないし。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第12回(2007年10月上旬


 というわけで、第12回です。前回ちょっとこれまでのまとめをやって、「翼でペガサスを飛ばせる」Bルートはしんどいなあということになったのでした。


 どうにかならないかなあと考えた結果、どうにもなりませんでした。ちょっとイメージしてみまして、馬ってのは人乗せて走ることができるんだから、馬体重をかなり減らしたペガなら人乗せて飛べるんじゃないか、と思いかけましたが、どうにもイメージできず


 つまるところ、馬のスタイルって、走るためのものですわ。胸、腹、腰、背中、腿、足。筋肉の付き方がそうなってます。そこに翼をつけても、飛ぶための筋肉が、ない。いや、そんなこたあ最初から分かってやってて、だからこそ「謎物質」作ってどうにかならないかとやってみたわけでございます。でもなあ、鳥を考えると、鳥のスタイルって、胸とかの筋肉が翼を動かすことに費やされてるわけで、邪魔な部分をそぎ落として軽くして、みたいな感じっしょ。だったら、馬が飛ぶには、走るんじゃなくて飛ぶための筋肉をつけねばならない。そうすると、そりゃもう馬じゃないっすわ。と前にも書いたような状態になるわけです。


 うーん、やっぱちっと疲れが残ってるようで。あんまし妄想エンジンが稼働してないっていうか、Bルートのペガ飛行イメージがわりにありふれてるんで面白くないってもあるんですかね。だってAルートの蹄で飛ぶペガほどインパクトもないしね。


 というわけで、いろいろもう少し考えてみたいんですが、忙しくなってきてるってもあるんで、いい案が出なかったら、Aルートに戻りましょうかね。ちょほほ。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第13回(2007年10月中旬


 ぽてぽて散歩しながら、Aルートのイメージを詰めることにした。妄想エンジンが回り始め、展開した御題は「ミノタウロスによるペガサス狩りの方法」大雑把に方法を考えていたところ、ふとあることに気付く。


 「ミノタウロスは何故ペガサスを狩るのか」という根元的な問題。人は何故狩りをするんでしょうかっていったら、まず食べるためですよね。んん?

 ところで、この記事見てる人にはミノタウロスなんて改めて説明するまでもないでしょう。人と牛を合わせたような状態で、下半身、首から上が牛、腕と胴体が人間のような感じですね。さてここでひとつクエスチョン。ミノタウロスのベースは人なんですかね、牛なんですかね。外見は分かりました。じゃあ内臓はどうなってるんでしょう。胃袋が四つあって反芻したりするんでしょうか。ここでようやく上の問題につながります。ミノタウロスって何食ってるんでしょう?


 食べるために狩りをするのであれば、ミノはペガ食うわけですね。頭部は牛ですよ。消化器系はどうか分かりませんが、肉食うの? 脳内記憶を検索して情報を呼び出します。ミノはクレタ島のミノス王の王妃の息子として生まれ、粗暴だったのでイカレ発明家のダイダロスが命じられて作った迷宮ラビュリントスに閉じこめられます。ダイちゃんは迷宮作っただけじゃなく、ミノが生まれた直接原因(牛に惚れる呪いをかけられた王妃が思いを達成できるようにコスプレさせたりしてる)を作ったり、よけいなことしてるんですなあ。その結果ダイちゃんと息子さんはクレタ島に閉じこめられ、脱出しようと翼を作って飛んだはいいものの、息子さんは太陽に近付きすぎて墜落しったり(名をイカロス)。ともあれ、迷宮に生贄の少年少女が七人だか送られ、最後はそれに紛れ込んだテセウスに殺されます。そのためミノといったら迷宮の奥にいるってイメージがあるんですが。生贄の肉食ってたって確証が脳内情報で得られず。生贄送り込んでたのは人間側の都合で、ミノは食ってなかったということもありえるなあ。でもそうなるとそいつらどうなったんだろう。何となく、白骨死体がごろごろみたいなイメージがありますが、襲われたりしたらミノは正当防衛しただろうしなあ。それよりラビュリントスの換気とかどうなってるんだか。臭いが相当籠もってるような。いやいや待て待て、ラビュリントスって地上に作ったんじゃなかったっけか。だとしたら青空迷宮だったのかも


 閑話休題。出典については後で調べることにして。考えていくうちに、ミノ吉が菜食主義でもいいなあという気分になってくる。狩りを終えたベジタリアンミノたちが酒場とかで丼メシと葉っぱとビールで乾杯しているイメージが浮かぶ。ビールを飲むと肉が軟らかくなったりするのです。う、こ、これで行きましょう、ぜひ。


 13A−1 ミノタウロスはベジタリアンである。


 過去の設定で、

 設定4−1:ミノタウロスは人間と交易をしている「山の種族」である。
 設定4−2:ミノタウロスは人間とある程度言葉が通じる。
 設定4−3:ミノタウロスは大勢力ではない。

 というのがあるので、ここら辺から持ってきて、

 13A−2 ミノタウロスが狩りをするのは基本的に交易のためである。
 13A−3 ミノタウロスは肉を食べないので、ペガサスの皮膚や骨や羽などのみを用いて装飾品などを作ったりもする。
 13A−4 ミノタウロスはビールを飲む。


 などと変な方向に脱線してみる。や、これはこれで楽しい。


 後日、調査。アポロードスの『ギリシア神話』(岩波書店)によれば、ミノ吉くんは「彼は頭は牡牛であったが、他の部分は人間であった」そうだ。戦でなかなか乾酪しなかったアテネはミノスの祈りに応えたゼウスの呪いでヤバいことになり、降伏し、ミノスの要求を呑むことになった。


 (前略)ミーノースは彼らに七人の少年と同数の少女を武器を持たずにミーノータウロスの餌食に送ることを命じた。これは迷宮内に閉じこめられていて、この中に入った者は外に出ることができなかった。


 さらにテセウスがミノタウロスを殺すエピソード。テセウスに恋したミノスの娘アリアドネは生還したら自分を連れて行けと要求する。要求を呑むなら援助しようと。


 (前略)テーセウスは誓いをしてこれに同意したので、彼女はダイダロスに迷宮の出口を教えるように頼んだ。彼の教えに従ってテーセウスが入る時に糸玉を与えた。テーセウスはこれを扉に結びつけて、引きつつ内に入った。ミーノータウロスを迷宮の一番端に見出し、これを拳で打って殺し、糸玉を引きつつ再び外に出た。


 こここ拳でですか!? こうも「ベアナックルで殺りました」と書いてあると凄みのある格闘家みたいですがどうよ? まあ生贄に紛れ込むので武器が持ち込めなかったのかなと思わないでもないんだが、他の少年少女と一緒だったとは書いてないしなあ。あ、もうひとつの迷宮の問題については。


 ミーノースはテーセウスとその仲間の逃亡を知って、ダイダロスに罪ありとし、彼とミーノースの女奴隷ナウクラテーとの間に生まれた子イーカロスを迷宮内に幽閉した。彼は自分と子供のために翼を作りあげ、飛びあがらんとする時に、翼が太陽のためにその膠が溶けて放れないように高みを、また翼が湿気のために放れないように海の近くを、飛ばぬように、と子供に命じた。しかしイーカロスは父の命を無にして、夢中になってしだいしだいに高く飛んだ。そして膠が溶けて、彼の名によってイーカリアーと呼ばれている海に落ちて死んだ。


 脱出できないような迷宮に幽閉されてて飛んで逃げれたんだから、こりゃ青空迷宮でしょう。それにしてもテセウス、ワイルドなイメージになってきたなあ。と思いつつ、本棚を発掘したらブルフィンチの『ギリシア・ローマ神話』が出てきた。しかも岩波版と角川版で二冊。何だかなあとぱら見してみる。アポロードスは断片であちこちに情報が散らばってるんですが、ブルフィンチの方は項目別になってます。とりあえず岩波の野上弥生子版を。


 その時アテナイ人は、クレタの王ミノスに納めるべき生贄のためにひどい憂き目を見ていました。この生贄というのは、七人の少年と七人の処女から成っており、かつそれはミノタウロスといって、牡牛の身体で人間の頭をした怪物の餌食とされるため毎年送られるのでありました。


 はあはあなるほど……えっ!? 牡牛の身体で人間の頭? ミノイメージまた変な方向へ。さらに話は続き、


 この怪物は非常に獰猛な獣で、ダイダロスという人のつくった迷宮の中に置かれていましたが、その迷宮がまたたいそう巧みな組立で、誰でもその中に閉じこめられると、どうしても出口を見つけることができませんでした。ここにミノタウロスは怖ろしいうなり声をあげながら、人間の生贄で飼われていたのです。


 扱いがケダモノになってますよ。ちなみにテセウスが出てきてからは、


 (前略)王の娘のアリアドネはその席に連なっているうちに、深くテーセウスを思うようになりました。テーセウスも、彼女の恋に報いました。アリアドネは怪物を突く劔と、一つの糸毬をあたえました。その糸毬さえあれば、迷宮の出口が分かるのでありました。
 テーセウスは首尾よく怪物を仕とめて、迷宮から逃げのびました。



 ブルフィンチでは武器使ってるっぽいですなあ。いやでも、剣を使ったとはどこにも書いてないんで、持っていっただけで実は拳で殴り殺しているという叙述トリックなのかも。んじゃあってんで、角川の大久保博訳はどうなってるのか見てみた。


 当時アテーナイの人々は、クレーテーの王ミーノースに強いられて捧げ物として供えなければならない生贄のために深い苦悩にひたっていました。この生贄は七人の青年と七人の処女とからなっていて、それを人々は毎年餌食として頭が牡牛で体が人間の形をしたミーノータウロスという怪物に送らねばならなかったのです。怪物は非常に力が強く、気性も荒かったので、ダイダロスが作った迷宮に住まわされていました。この迷宮は実に巧みに造られていたので、一度この中に入れられると誰も独力では出てこられなかったからなのです。ミーノータウロスはこの中を歩きまわり、人間の生贄を餌にもらっていました。


 あれ? 今度は頭が牛になってる。どっちかが誤訳ですかな。テセウスのシーンは、


 (前略)ところがその席にいた王の娘のアリアドネーはテーセウスの姿を見て深く愛するようになり、彼もまたすすんでその恋に報いました。そこで彼女は一ふりの剣を彼に与えて、これでミーノータウロスと戦うようにと告げ、また、糸玉を与えてこれを頼れば迷宮から出てくることができますからと言いました。お蔭で彼は首尾よくミーノータウロスを殺して迷宮から逃れ出ると、(以下略)


 何だかやけに追加描写があるんですが、原文読んだわけじゃないんで、角川が多すぎるのか、岩波が少ないのか分かりませんが、角川版だと「お蔭で」といってるんだから、テセウスは剣で戦った可能性大ですなあ。時代的にはブルフィンチの方が後代だし、元々素手だったのが、「それはちょっと」ということで武器を持たせたのか、あるいは異本があるのか。ついでのついでに図書館で借りてきたミヒャエル・ケールマイアーという人の『あなたが知らなかったギリシア神話』(河出書房新社)なんて本をひもといてみますと、戦でアテーナイは降伏、アテーナイ王家を率いてたのはテーセウスで、


 ミーノース王はテーセウスと取り引きをし、毎年、娘と若者を九人ずつクレータ島に引き渡すよう、要求しました。ミーノータウロスの餌にするためです。


 暴れるミノタウロスについては、


 パーシパエーと牡牛の交わりからは、怪物が生まれました。ミーノータウロスです。ミーノータウロスは、頭は牡牛、体は人間の男の子でした。たいへん危険な存在で、息をのむほど醜いばかりか、パーシパエーが人の道に外れたことをしてしまったということをつねに目の前につきつける証拠でもありました。
 ミーノータウロスは頭痛の種でした。市に出ては、人びとに襲いかかりました。いつ暴れですか、分かりません。またしてもダイダロスが呼ばれ
(以下略)


 男の子の体ですか!? また意外なイメージが。その後話はダイダロスのことになってるんですが、思い出したようにテセウスの話に。


 ここで、テーセウスに目をとめてみましょう。テーセウスは迷宮に入りこんで、ミーノータウロスを見つけ、これを殴り殺しました。そして、市を怪物から解放し、アリアドネーとともにクレータ島をあとにしました。


 ベアナックルファイター復活ですよ、テセウスさん。ケールマイアーのこの本、今見たとこの前後を眺めてみると、糸玉についてはこれを考えたのはダイダロスなのだよ実は、みたいなことが書いてあったりする。ブルフィンチ版ではダイダロスのアイディアだって点は書いてないので、より古い版を検証して再話した可能性がある。というかそれぞれの後書きとか解説とか読めばもう少し流れが分かるのだろうけど、そこまでやってる余裕が今回なっしんぐ、そーりー。


 ギリシア神話だけでもこうしていくつかのバージョンを見るに、誤訳の可能性もあるがいろいろとミノタウロスの形状もパターンがあるなあ。他の小説とかゲームとかも考えると、ミノ吉の定義からした方が楽しいかもしれない。とりあえずベジタリアンってことは決めたけどねえ。


 振り返ってみるに、ミノ話メインで全然ペガ話になってませんが、まあ気にしない気にしない。次回はミノ考察の続きか、狩りの具体的方法について、になるかなあ。妄想エンジンの動き次第ですが。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第14回(2007年10月下旬


 さて、前回あたりから気が付くとミノタウロスデザインに話がすり替わってるような気がしますが、気にしてはいけません、私も気にしません。


 ところで、前回ブルフィンチの訳が角川と岩波で違うというようなことを書きました。岩波版のミノ吉が頭が牛で体が人間、角川版が頭が人間で体が牛、でした。どっちかが誤訳だろうと思ったわけですが、よくよく考えてみるに、誤訳じゃない場合ってのもありますな。そこで問題、このように訳が違うケースってのはどんなときでしょうか?


 私が考えついたのは原文読んでないから分かりませんが、「半人半牛」とか「合いの子」とか「ミックススタイル」などといった描写の訳だった場合。つまり、どっからどこまでが牛で、どっからどこまでが人なのか書いてなかったケースですね。これだと訳を分かりやすくしようとしたら、違ってくるかもしれません。


 そもそも、「半人半○」という表現は結構いろいろとやれそうな気がします。例えば、「半人半魚」といったらどうでしょう。「人魚」ならばおそらくたくさんの人は上半身女性で下半身魚、といった姿を連想するんじゃないでしょうかね。男でもいいんですよ、もちろん。でも逆に上半身が魚で下半身が人間でも「半人半魚」ですな。また北欧あたりでしたか、アザラシの皮を着ぐるみのようにかぶった妖精がいたかと記憶してますが、時間の半分を魚、もう半分を人間の姿で過ごすってのも「半人半魚」といえないことはない。他にはってえと、魚っぽい人間ってのもありますね。クトゥルフ神話でいう「深きものども」とかインスマス人。人だったものが次第に魚に似てくるんですけれど、これも「半人半魚」でしょう(半魚人ってのもそうですな)。んじゃ逆に人っぽい魚だっていいわけで。ううん、表現とイメージっていろいろやれますなあ。


 さて、前回進めていたミノタウロスの設定の続きで。ミノミノいってましたが、実際どういう姿を基本にするかってことを遅くなりましたが決めておきましょう。人頭牛身……でもいいんですが、狩りとかしにくそうだ。手は人のようであった方が道具が使いやすいでしょう。んじゃ、ポピュラーな牛頭人身スタイルで。足は、どうしましょうかね。このタイプだと牛の足と人の足の二通りがあるんですが。独断と偏見で後者にしますか。ただそれだとちょっと獣っぽくないんで付け足して、と。


 14A−1 ミノタウロスは牛に似た頭、人の体を持つ。
 14A−2 ミノタウロスは下半身が毛深い。
 14A−3 ミノタウロスには尻尾がある。


 こんな感じで。あと前回ミノがペガのパーツを用いて装飾品を作ってるって設定がありましたが、その辺から広げて。装飾品にするなら、羽飾りとかがまず浮かびますか。ただ羽を使うんじゃなくて、色つけてカラフルなのはいかがでしょう。となると、染色の技術かなあ。いやいや待て待て。たしか……


 設定3−8 ペガサスにはいろんな毛色のものがいる。


 別に染めなくても良さそうでーす。でもその手の技術を何か持ってるってのはよさげですか。まあせっかく人身にしたんだから、すっぽんぽんってのも味気ない。服着せましょう。交易で服手に入れるってよりも、織物とか縫い物とかやってる方がいいかなあ。てことで閃く。


 14A−4 ミノタウロスの女性は手先が器用。
 14A−5 ミノタウロスの女性を中心に織物等が発達。


 貫頭衣のようなタイプだと、角が引っかかりそうなんで、



 14A−6 ミノタウロスの衣服は巻き付けるようなタイプと袖を通して前で留めるタイプが主流。


 ふははははっ、いいイメージが浮かびましたぞ、いいやん、和服でビールやってるミノタウロス。あと飾りは、例えば角に引っかけるような飾り紐とかそういうのはどうだろうか。まとめとして、ややダブリますが、


 14A−7 ミノタウロス男性は膂力に優れ、主に農耕作業や狩猟を行う。
 14A−8 ミノタウロス女性は男性より膂力が劣るが、その分手先が器用で採集や機織り等を行う。


 というような役割分担ですかね。もちろん例外もあるでしょうが。あ、牛頭にしちゃったんで追加。


 14A−9 ミノタウロスはよだれをいつも垂らすわけではない。



 さらに、交易をやってる少数種族ですから、


 14A−10 ミノタウロスの輸出品は、生きたペガサス、ペガサス製品、織物、野菜等である。
 14A−11 ミノタウロスの輸入品は、食物、鉄、金属製品等である。
 14A−12 ミノタウロス社会は物々交換が基本。


 こんな感じでしょうか。ちょっとはイメージが見えてきたかなあ。


 そろそろヘバってきたので、今回この辺りで打ち止め。って、ペガ話ほとんどしてねーっ。ま、ええか。次回こそはペガ狩りについてちょっとやってみましょうかねえ。やれるといいなあ。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第15回(2007年11月上旬


 第15回です。5ヶ月ですかあ。まあいろいろ思うことあるようなないような、そんな感じですが、とりあえず進めます。


 前回はミノタウロス族がちょいと和風テイスト(しかもベジタリアン)になってきたあたりでしたか。羽飾りとか角飾りとかどっちかってえとネイティブ・アメリカンな方向を考えてただけにちょいと意外。


 今回はペガ狩りについて、ちょいと考えてみますか。ペガ狩りの意味としておさらいしておきますと、菜食になっちゃったんでミノたちは別にペガを食うわけではない。交易をするための輸出品として生きたペガサス、死んだペガサス、ペガサス製品がある、とそんなとこ。さらにだいぶ前に設定したもので、

 設定3−12:メリグリン結合物質にメリグリンより結合しやすい物質がある。
 設定3−13:メリグリン妨害物質はミノ粒子と後に呼称される。
 設定3−14:ミノ粒子はミノタウロスによるペガサス狩りに使われていたものである。
 設定3−16:ミノ粒子はわりと滞留して残る。
 設定3−17:ミノ粒子は燃える。

 この辺りを生かしてセッティングを続けねばなりますまい。もちろん、面白そうなら変えてもいいわけですが、変えるならその影響をきちんと見極めないとねえ。あ、メリグリンってのは空気を硬貨させてペガサスを飛ばせるものです念のため。


 でミノ物質が自然にぽこぽこ湧いてる(温泉で硫黄取るとかそういう感じで)ってのもよさげなんですが、ミノたちが作ってる方が楽しそうですな。そうすれば後にミノ粒子が人間に知られて戦争利用される際に交易物資として使えるし。あ、でも採集できるやつでも交易物資にはなるんか。うーん、とりあえず進めてみることにしましょうか。


 ミノたちの設定からすると、例えば岩から削って作りましたというより、植物性の方が合いそうですなあ。深く設定せずに、

 設定A15−1:ミノ粒子の大元になるのは特定の植物の実である。

 くらいにしておきましょうか。んで、それをどうするかっていうと。

 設定A15−2:特定の植物の実にミノタウロスの胃液、唾液を合わせたものがミノ粒子の元になる。

 いや、せっかく牛ベースのミノって設定が前回決まったんで、それっぽくそれっぽく。反芻ですな。戻したものを吐き出して、それを、

 設定A15−3:できたミノ粒子の元になるものを乾燥させて、粉末状になるまですりつぶすとミノ粒子になる。

 とこんなところ。実際のペガ狩りの工程になりますと、殺してもいい場合と生かして捕らえる場合では多少違いが出てきますね。殺していいんだったらそれこそ矢を射かけてもいいわけだし。今回は生かして捕らえる方で。ミノ吉たちは飛べないので、ペガがいったん宙に逃げたら追いかけるのが困難になりますな。それに攻撃しかけると傷をつけるし、ヘタしたら足を踏み外して死ぬ可能性もある。なのでまずペガを飛ばせないというのが前提。

 設定A15−4:ミノタウロスは地上にいるペガサスを狩る。

 あくまで生かして捕らえる場合は、ですね。殺していいんだったらその限りではない。んじゃそのためにどうするかっていうと、配置としては待ち伏せする者がいて、追い込む者が逃げ道をそちら以外塞ぐ形でごー。

 設定A15−5:ペガ狩りにおいてミノタウロスはミノ粒子を宙に散布する。

 この方向にペガサスが突っこめば、泥沼に足を踏み込んだのと同じ状態になり、飛行が困難になるかそもそも飛べなくなります。状況によってはこれに「群れを狙う」というオプションを追加してもいいかもしれませんね。群れが混乱して飛び立つような状況だと、空気中の場が荒れます。メリグリンの硬化が不安定になるため、飛び立ちにくくなります。その状態でミノ粒子散布空域に踏み込めばさらに効果的でしょうな。


 で落ちたり飛べなくなったりしたペガに向かって投網。近寄ると蹴られそうだし。走られると追いつけないかもしれないし。

 設定A15−6:ミノタウロスはペガサスの飛行する秘密が足にあることを知っている。

 ってことで、動けなくなったペガサスを足を縛ります。縛り方としてはどちらかの足を前後で縛るか、右前と左後といったように交差させるように縛ります。これによって、蹄からメリグリンを排出しても飛べないような状態になるってことで。


 まあこんな感じですかねえ。ペガ狩り。さてこっから次はどう持っていったものか、と考えつつ、今回このくらいで。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第16回(2007年11月中旬


 第16回です。さくさく行きましょう、今回のミノ話。


 前回ミノのペガ狩りに関する設定をおおよそ固めてきたのでした。結構楽しくなってきたので、もう少しミノタウロス族に関する設定を詰めていきましょうか。


 人間との交易を行っている、という話を書きました。少なくとも言葉が通じるような環境にはあるわけです。んー、言葉言葉、

 A16−1:ミノタウロスは独自の言語を持つ。
 A16−2:ミノタウロスは人間と言葉を通じ合わせることが可能。
 A16−3:ミノタウロス語を人間はおおよその理解できるがしゃべることはできない。

 とまあこんな感じでどうよ。ミノ語の抑揚などでだいたいのニュアンスは分かるけれども、というところか。

 A16−4:交易の際には人間の言葉が用いられる。


 では、文字に関してはどうだろうか。独自の文化を持つっぽいことは分かったわけですが、ミノタウロスは文字を使うか。途中で混ぜたイメージがネイティブアメリカンとかそういうのだったので、何となく、

 A16−5:ミノタウロスは文字を持たない。

 ということで。その代わり、

 A16−6:ミノタウロスは自分たちの歴史や物語や考えを歌にする

 てのは結構いい感じではないか。とまあここら辺まで考えたところで一気にイメージが加速。

 A16−7:ミノタウロスは自分たちの魂が角に宿ると考えている。
 A16−8:ミノタウロスは自分が自分であることを示すため、様々に角を飾り立てる。
 A16−9:ミノタウロスの角に触れることができるのはその親しいものに限られる。
 A16−10:不用意にミノタウロスの角に触れることはかれらを侮辱することになりかねない。

 角文化発生ですよ、ミノ吉たち。そっからフィードバックさせて、

 A16−11:ミノタウロスは男性、女性を問わず子どもの頃から角を生やす。
 A16−12:子どもの頃には何度か角は生え替わるものの、大人になってからは生え替わりはなく、成長するのみ。
 A16−13:大人になってからの角の成長はあまり著しくはない。
 A16−14:野放図に伸ばした角は美しくない、とされるため、角の手入れは欠かせない。

 ということで、さらに、当然のように出てくるのが、角を失ったミノタウロスはどう扱われるかということですが。どうしましょうかねえ。社会的弱者になるってのもひとつの考えですが、

 A16−15:角を失ったミノタウロスは「角守」と呼ばれる職に就く。

 最初は「特殊な職業に従事する」だったんですが、ちょいと別のとこから思いついたのがあったので、「角守」については後述。

 次はちょいと方向を変えて、ミノタウロスの死について。ミノタウロスも生き物ですから当然死ぬわけです。死んだときにどうするのか。土葬、火葬、水葬、鳥葬、風葬、いろいあって、それぞれの文化の死生観に結びついているわけですな。ミノたちはどうするかってえとまず、

 A16−16:死んだミノタウロスの角のうち、立派な方を切り落とす。

 だってそこに魂があるから。残りは、

 A16−17:ミノタウロスの遺体は専用の穴に入れ、上から土を掛けて埋葬。
 A16−18:埋葬して一定期間過ぎたミノタウロスの遺体は掘り起こされる。
 A16−19:ミノタウロスの骨のみが土から選別され、砕かれ、撒かれる。
 A16−20:骨以外のものが混じった土は、畑に混ぜられる。

 んで、野菜となり、ミノタウロスに食われるリサイクル。残された角の方はといいますと、

 A16−21:死んだミノタウロスの角は、角笛に加工され、一族専用のスペースに飾られる。
 A16−22:ミノタウロスの角笛は破棄されることはない。

 身内だったりご先祖だったりするわけで歴史を伝承歌にしてる彼らは、角笛を大事に扱います。

 A16−23:角笛から出る音は、死んだミノタウロスの記憶であり囁きであり叫びであり諭しであり猛りであり物語である、とミノタウロスは考えている。

 大事なものですから、

 A16−24:一族の角笛を守るのが「角守」の主な仕事である。

 そこから派生して、

 A16−25:「角守」と一族の長クラスは角笛を吹く=語り部となることができる。

 結構重要な職ですよね。てことは、

 A16−26:「角守」にするためにあえて角を折る、折られるミノタウロスもいる。

 あと歌を大事にする彼らは、

 A16−27:ミノタウロスは自分たちの歌に誇りを持つ。
 A16−28:ミノタウロスは人間の歌を歌わない。


 という感じでミノタウロスがだんだん見えてきたなあと思う今日この頃。てかミノタウロスよどこへ行くって感じですが。次回はもう少し人間とからませてみるか、あるいはペガはどうなったという話。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第17回(2007年11月下旬


 第17回となりました。いかにミノタウロスの世界を作るかというこの企画ですが……あれ? ペガは? という気もします。気がするだけで別に気にしませんが


 ともあれ、ミノタウロスの設定が楽しくなってきたので、さらに続けてみんとす。前回、角にまつわる文化を設定したんで、今度はもう少し枠を広げてみましょうかね。人間との絡みです。大陸制覇を狙う帝国がいて、というのはずいぶん前にでっち上げました。で帝国が辺境伯とやらと戦争になっているということも。そっから導き出されたのが、ミノタウロスが有力な種族であったら、まず帝国が戦っているだろうみたいなことだったのかな。そこらからふっ、と湧いて出たのが、


 A17−1:ミノタウロスにはいくつかの部族がある。
 A17−2:いくつかのミノタウロスの部族は父祖伝来の土地を失っている。
 A17−3:土地は帝国側に詐欺同然に、あるいは武力によって奪われた。


 なんちゅーか、ビー玉だかビーズだかでマンハッタン売りました、みたいな感じ? んで、


 A17−4:土地を失ったミノタウロスのうち、一部は傭兵として活動している。


 ミノタウロスの傭兵団がいるんですな。何となくそういうもののイメージが浮かんだので。多分、戦闘に向かないものは他の部族を頼ったりとかしてるのでしょう。さらに妄想は進み、前回の角にまつわる話と絡んで、


 A17−5:土地を失った際、その部族の角笛の大半が破壊されたか散逸してしまっている。


 角を飾り立てたりしてたでしょうから、装飾品としても価値があると思われたのかもしれません。ということは、


 A17−6:傭兵などをしているミノタウロスたちは、散逸した父祖の角を求めている。


 ってのはどないだす? ちなみに、


 A17−7:有名なミノタウロス傭兵団の頭領には「赤兜」や「角折れ」などがいる。


 などと後でキャラに使えそうな設定をテキトーに作って放り込んでおくと楽しそうだ。咆吼したり歌いながら突撃していくミノたちのシーンを考えていたら、「何か、騎獣がほしいのう」と思う。しかし、


 設定4−7:地上の生物で「馬」のように軍事利用できる生物がいない、または発見されていない。


 というのがあったので、抜け道を考える。この辺りですでに「帝国に土地を奪われたミノたちが帝国に協力的だとは思えないなあ」となっていたので、


 A17−8:ミノタウロス傭兵団は辺境伯に与して帝国打倒を計る。
 A17−9:辺境伯に協力する条件として、帝国打倒後の土地の回復及び角笛の奪還回収の約定があった。


 あと、ミノってどのくらいで成長するのだろう、という疑問も浮かぶ。傭兵やってると死なないわけじゃないだろうし、兵の補充なども考えねばならない。


 A17−10:ミノタウロスはおよそ10年で大人になる。大人になってからの成長は緩やかに長く続く。


 これで後方からの補充ができます。あとは騎乗用の生物ですが、先の設定を破らぬようにして、


 A17−11:ミノタウロスの騎乗用生物は、少数の部族で育成されていて、ほとんど外に出ることはない。
 A17−12:ミノタウロスの騎乗用生物は、大層力強く頑健である。


 だって重そうなミノタウロス乗せるわけだし。馬で例えたら黒王クラスか? どんな生物にするかとつらつら考えようとして、あっさり決める。


 A17−13:ミノタウロスの騎乗用生物は一角馬である。


 ペガやミノ吉出してユニ公を出さないのはどうかという気もするし。で翼のないペガサスであるところの地上馬は、


 設定4−10:辺境伯の領土では「地上馬」の開発・育成・訓練が行われていた。
 設定4−12:騎馬隊を用いた戦いの後、帝国と辺境の争いが新たな展開を見せる。


 辺境伯側の「秘密兵器」であったわけで、だったら、


 設定17−14:ミノタウロスたちが地上馬の訓練をやった。


 というのは面白いかもしれない。もちろん、騎馬隊で帝国軍を蹴散らすときにはユニ公に跨ったミノ傭兵団もいるわけです。


 まあこんな感じで所要時間5分くらいの妄想終了。せっかくユニ公が出てきたので、次はその辺りを詰めるか、帝国との関わりとかもう少し掘り下げてみるかなあ。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第18回(2007年12月上旬


 第18回です。ミノ話。


 大いなる《シ=キ》といえども、永い永い年月の果てには弱ってしまうことを避けられなかった。

 《シ=キ》、すなわち我らの大いなる父であり母。角を持ち、蹄を持ち、天を駆け、地を駆け、歌を奏でるもの。力を持ちながらも力に溺れることなく、武器を持ちながらも、他者を傷つけることなく、駆けれどその蹄で潰すこともなく。

 その大いなる《シ=キ》。我らの祖は永い年月の果てに、三人の子を呼び寄せた。子らは《シ=キ》の徴を持っていたが、《シ=キ》よりも弱く、《シ=キ》よりも遅く、《シ=キ》よりも劣っていた。

 大いなる《シ=キ》は子らを呼び寄せ、語る。汝らに己の力をさらに与えよう。だが、その力を得るためには何かを手放さざるをえないと知れ。

 子らは大いに悩み、それぞれの願いを父なる《シ=キ》に告げた。

 賢き子は告げた。我が望みは歌。歌い、歌い、歌い果てること。

 《シ=キ》は応えた。然り。汝により強き歌を授けよう。

 賢き子は強き歌を手に入れた。同時に、蹄の半分を失い、飛ぶことも、駆けることもできなくなった。《ラシ=ア》すなわち「歌う角」の始まりである。

 猛き子は告げた。我が望みは駆けること。駆け、駆け、駆け果てること。

 《シ=キ》は応えた。然り。汝により強き蹄を授けよう。

 猛き子は強き蹄を手に入れた。同時に翼を失い、歌を失った。《ラシ=ス》すなわち「駆ける角」の始まりである。

 さて子らの中でもっとも愚かで、もっとも弱き子が最後に大いなる《シ=キ》に告げた。我が望みは、享楽。先への不安も、過去の恐怖もなく、今を楽しむこと。歌い、飛び、駆け果てること。

《シ=キ》は応えた。然り。汝に今を楽しむことを約しよう。

 弱き子は享楽を手に入れた。同時に、言葉を失い、角を失った。

 賢き子、猛き子らがそれぞれに満たされているそばで、弱き子は嘆いた。我は魂の器を失ったのだと。しかしその嘆きもすぐに過去のものとなり、忘れ去った。

 《シ=キ》が弱るにつれ、弱き子の不満は度々にその蹄を突き上げた。忘れては《シ=キ》の角を見るたびに思い出した。先のことを考えぬその蹄は、ついにある日《シ=キ》を襲った。

 《シ=キ》は失われ、かの弱き子は《シ=キ》の血にまみれた蹄で飛び去った。したたった血から《リシア=サス》すなわち「嘆きの草」が生えた。かくして、かの弱き子をして《ラド=ガ》すなわち《血の蹄》が始まった。

 ゆえにこそ、我ら《ラシ=ア》は兄弟たる《ラシ=ス》らとともに、大いなる《シ=キ》を殺めし《ラド=ガ》を狩るのである。それこそが《シ=キ》の仇を討つことであり、同時に魂なき子らを《シ=キ》の御許に送ることだからである。

――「歌の角」の最古老ギ=スナの角笛の歌



 ……なんて話を勢いで作ってみた。勢いでやってるだけにもう少しブラッシュアップする必要性はかなりありますが、まあ、まあ、よしとしませうか。大筋決めるのにおおよそ3分ってとこでしょうか。きっかけは前回ユニ公をミノ吉たちの騎乗生物にするという話をでっち上げたことですか。最初はユニ公たちを「蹄の兄弟」と呼んでることにしようと思い立ち、いや待てよと踏みとどまる。で、「角と蹄の兄弟」に変更しかけ、や、と思いとどまる。そこまで来たら、同じようなナマモノとしてペガさんたちを入れないのもどうか。ということで蹄三兄弟路線に決まりかける。が、前の設定から、ミノ吉たちはペガ狩ってるというか、そっから話が始まってるわけですわ。んで、上のような話に落ち着く方向で。テキトーに造語ちりばめつつ。角があって、蹄があって、そんで強い生物をご先祖にしようとして、出てきたのが《シ=キ》。イメージソースはジラフじゃない方のキリンですな。そっから枝分かれした、という神話を持つという設定でござんす。そんでさらにミノがペガを狩る理由をくっつけたわけですな。多分、この後も語りが続いて、最初のペガを追いかけるてな展開になるんでしょう。

 A18−1:ミノタウロスがペガサスを狩るには神話的な理由がある。
 A18−2:ミノタウロスの神話によれば、ペガサスから力を失わしめるには「嘆きの草」を用いるとよいとされている。

 といった感じで、ミノ粒子を生み出す草まで神話由来にしてしまう力業。ユニ公もこのストーリーだとミノたちに親しいのでしょう。使えます。もちろん、この神話から、

 A18−3:ミノタウロスは自分たちのことを《ラシ=ア》すなわち「歌う角」と呼ぶ。
 A18−4:ミノタウロスたちはユニコーンのことを《ラシ=ス》すなわち「駆ける角」あるいは「角の兄弟」と呼ぶ。
 A18−5:ミノタウロスたちはペガサスのことを《ラド=ガ》すなわち「血の蹄」と呼ぶ。

 こうした背景を考えていくと、前回出た、

 設定17−14:ミノタウロスたちが地上馬の訓練をやった。

 というのはミノ的にはどうなんだろう。地上馬は翼を失ったペガから作られたわけだし。結構複雑なんではないかという気もする。


 その辺りを考えつつ、次回はミノタウロス傭兵団に関して、考えてみようかなと思わないでもないが、実際どうなるかは分かりません。気分と状況次第ですかな。んな感じで今回ちょっと短めですがおしまいー。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第19回(2007年12月中旬


 第19回ミノタウロス神話の続き。


 「歌う角」と「駆ける角」による「血の蹄」追跡は失敗に終わった。「血の蹄」にはきょうだいが失った翼を持っていたからである。

 それでも「血の蹄」が見える限り、怒り狂った「駆ける角」に跨った「歌う角」は追い続けた。太陽が三度上がり、三度沈んだとき、ついに「血の蹄」を見失った。翼あるとがびとは、山を一気に越えたのである。

 うなだれて、「歌う角」と「駆ける角」は死した「祖角」の元へ戻った。「祖角」のなきがらをそのままにしてきたことをようやく思い出したのである。

 だが、親殺しの場に戻ってきたかれらは「祖角」のなきがらを見つけることはできなかった。周辺には三日前になかった花々が咲き乱れていた。

 「祖角」のなきがらを探す「歌う角」と「駆ける角」だったが、いかにしても見つけることはできなかった。

 代わりに、別のものを見つけた。

 花の中に横たわり眠るいきもの。

 「歌う角」と同じ姿をしたいきもの。

 「駆ける角」と同じ姿をしたいきもの。

 かくして「歌う角」と「駆ける角」はそれぞれのつがいとなるべきものを得た。
――「ねじれ角」のガ=スンの角笛歌



 という話を引き続き勢いで作ってみた。いや、前回の話をこしらえたときに、ふっと思ったわけですよ。ミノ吉とユニ公とペガさんが分化したのは分かった。でも、どうやって増えたんだ、こいつら。単為生殖ですか? 神話とか昔話の類だからと手を抜くわけにもいきません。大人の秘密でコウノトリを呼ぶでもいいのでセッティングしておかねば私の心の平安が得られませんぞ。ということです。


 上の話と前回の話から派生して新設定を追加。

 A19−1:ミノタウロスの神話で語られる「歌う角」となった最初のミノタウロスは雄である。
 A19−2:ミノタウロスの雄の手は元々蹄であったとされ、最初からその形態であった雌に比べると不器用である。


 「歌う角」たちの古き角笛は語るのを聞いた。

 「祖角」の亡骸は見つからなかった。

 大地の恵みに姿を変えた、というものもいる。

 「歌う角」たちの古き角笛は語るのを聞いた。

 否。

 「祖角」の亡骸は盗まれた。

 親殺しの場で見つかったのは、花々、大地の恵みと「歌う角」「駆ける角」のつがいとなるべきものたち。

 ならば、「血の蹄」はいかにして増える。

 ならば、「血の蹄」はいかにして増えた。

 親殺しの場には「血の蹄」のつがいとなるべきものがいた。

 「血の蹄」は親を殺し、「血の蹄」のつがいとなるべきものは親を盗んだ。

 かくして、「歌う角」と「駆ける角」の一族は「血の蹄」の血筋を憎む。

 かくして、「歌う角」と「駆ける角」の一族は「祖角」の亡骸を求める。

 今に至るまで。

――「双天角」ニイ=トトの角笛の歌


 なんてのも続けていってみる。さらに、


 「母なる角」の歌を聞いたものの歌を耳にした。

 「母なる角」の歌は語った。

 「祖角」の亡骸は、大地に戻った。大地の恵みとなった。

 角のないものが現れて、その場に残された「祖角」の角を持ち去った。

 魂の器を失ったもののため、「祖角」の角を持ち去った。

 ゆえに、

 「歌う角」と「母なる角」の子らは「祖角」の失われた角を探すのである。

――「長耳」エイ=ジの角笛の物語


 てなわけで、

 A19−3:ミノタウロスは「祖角」の角笛を探し求めている。

 そんな感じで基礎固めをしておくと、種族的な特徴がよりはっきりしてくるかなあ。前祈りの言葉とかののしり文句なんかに応用して使うと奥深く見えます。あと常々前に作った設定につなげたりしていくとよろしい。例えば今回でいったら、16回あたりで出てきたミノタウロスの葬儀などは、「祖角」が死して大地の恵みになったのに由来して、角を残して大地に還るみたいなとこにくっつけられるし、ミノの蹄が手になったというのは雄雌の膂力に優れてる・手先が器用といった違いにからめるわけですな。ほうほう。


 そろそろ力尽きそうなんで今回このくらいで。次回こそは神話から抜け出して、もちっと別の話でごー。になるかも。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第20回(2007年12月下旬


 第20回ミノタウロス話まだまだ続きます。


 A17−3:土地は帝国側に詐欺同然に、あるいは武力によって奪われた。
 A17−4:土地を失ったミノタウロスのうち、一部は傭兵として活動している。
 A17−7:有名なミノタウロス傭兵団の頭領には「赤兜」や「角折れ」などがいる。


 という設定を前に作ってたんで、その辺りとからめつついきますか。


 まずこれまでの話から、ミノタウロスが角を大事にするという設定ができてます。そこへ付け加えると、


 A20−1:ミノタウロスの角は日常生活を送っていればさほど問題ないが、戦闘では折れることがある。


 ミノ吉は人間よりもデカいことが多いので、直撃を食らう回数はそんなにないんでしょうが、ともあれミノたちにしてみれば「角が折れる」というのは大問題です。


 A20−2:ミノタウロスの頭部の防御は角を中心にして考えられ、「角兜」といったものになる。


 実際には兜に角が生えてるという形式じゃなくて、角に兜がついている感じですかね。角を守るために角カバーをつける。そっから角カバーに顔面を保護するパーツをくっつけていったものです。また、対人間ということになるなら、体格差を考えて、顎カバーも必要となります(突き上げるように狙われることがあるので)。さて肝心の傭兵団ですが、

 A20−3:有名なミノタウロス傭兵団には「武勲の角笛」と「赤角」の二つがある。
 A20−4:帝国対辺境の戦いが起こったときの「武勲の角笛」団長は「角折れ」シン=ズウ、「赤角」団長は「赤兜」ジ=ライである。


 ということで名前をテキトーに決めてみる。また、せっかく名前をつけてあげたので、他にもいろいろと付属品を。


 A20−5:「角折れ」シン=ズウは、帝国との戦いで両の角を折られている。
 A20−6:「角折れ」シン=ズウは、自分の角を「物語を失った角笛」として所持している。
 A20−7:「赤兜」ジ=ライの異名の由来は、角で敵を串刺しにしておのれの兜を赤く染め上げたことから。
 A20−8:「赤兜」ジ=ライは、戦場で敵をおのれの角で串刺しにすることを好む。


 とそれぞれに性格が見えるようなことをくっつけてあげる。さらに二つの傭兵団を彩ってみんとす。


 A20−9:「赤角」団は、みな赤い角兜をかぶっている。
 A20−10:「赤角」団で、唯一赤い角兜をしていないのは団長である。
 A20−11:「赤角」団は帝国によって土地を奪われていて、帝国憎しの念で固まっている。
 A20−12:「赤角」団はおもに辺境で活動する。
 A20−13:「赤角」団は傭兵契約が行われていないときには、訓練を行っている。


 ってまずひとつ。この辺の設定とからめて、


 A20−14:「赤角」団が主に地上馬の訓練を行った。


 さらに団長の設定で、


 A20−15:「赤兜」ジ=ライは自分の角に絶対の自信を持っており、角を防護しない。


 なんて感じでいかがでしょう。もう一方の傭兵団はってえと。


 A20−16:「武勲の角笛」団は、帝国によって土地を奪われたミノタウロス一団であるが、帝国打倒よりも父祖の角笛奪還に執念を燃やしている。
 A20−17:「角折れ」シン=ズウが角守にならないのは、父祖の角笛がことごとく奪われたせいである。
 A20−18:いくつかの角笛は奪還された。
 A20−19:傭兵契約のないときには「武勲の角笛団」は小隊規模で帝国内に散開し、角笛の探索に努めている。


 なんてことでどうよ。あと、


 A20−20:最終的に「武勲の角笛」団は帝国打倒の方向に行く。


 とりあえず実際の傭兵の動き等については、またいずれ。


 とまあ、半年くらい続けて来ましたが、どんなもんなんでしょうねえ。そのうち、作品のひとつふたつ書いてみるかなあというところですか。


 てなわけで、どう動くか現時点では分かりませんが、来年も続きます、このコーナー。よろしく。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第21回(2008年1月上旬


 第21回まだまだやりまっせー。といいつつ、前回のをふと見て呆然とする。第20回なんで、AルートってことでA20−○○という設定番号を振ってたわけですが、途中から数字が上がってやがりますよ。A21とかA22とか。よしってんでこっそり修正。気づいた人は気づかなかったことにしてください。


 んでわ、気を取り直して。……何をしましょうか。ミノ話でもいいんですが、ふと、まだ詳しく取り上げてないナマモノが残っていることに気づく。


 ってことで、今回はユニ公について考えてみます。とはいえ、ユニコーンはペガサスと同様、わりとイメージが固まってる気がします。白馬で長い角があって、乙女とくっついてる。とりあえず角から。ユニコーンのユニはユニフォームのユニなので(ユニチャームのユニかどうかは知らない)、基本的には一本ですな。もっともゲームなどによっては本数の違うやつとかありますけど、そういうのだとすでに名前がユニコーンじゃない。例えば「女神転生」シリーズには二本角の「バイコーン」や「ウィザードリィ」シリーズに出てくる「ノーコーン」とか。この手でいけば「トライコーン」とかまで出せそうな気もします。って、ノーコーンは単なる馬じゃないかという気がしないでもないですが、そりゃ気のせいってもんで。実際の設定では、「角が折れて気の狂ったユニコーン」のことを「ノーコーン」といってたかと。


 ユニコーンに顕著なのは、癒しとか純潔とかのイメージでしょうか。「ソードワールド」におけるユニコーンは癒しの精霊力が強烈で、折れた角でさえ強い癒しの能力を持ち続けます(力尽きたら壊れますが)。純潔のイメージと乙女だけが触れられるというのと白いという要素が絡み合って、この種族を形成してるんでしょうか。でも本来はもっとケダモノだった記憶があるんですが。


 ペガサスはギリシア神話系の生き物ですが、ユニコーンは神話っぽくないなあ。由来は何だろう。博物誌系の気がします。ちょっと調べてる時間がなかったので、手近の資料を、ぴかぴかぴかーん。「げんじゅうじてんー」(大山のぶ代風)いやこの本結構面白いのですよ。50年くらい前にこれ書いたのボルヘスですが。目次眺めててもびっくりするようなセレクション。初っぱなの「ア・バオ・ア・クゥー」から「カフカの想像した動物」とか「バルトアンデルス」とか「スウェーデンボリーの天使」「スウェーデンボリーの悪魔」「エロイとモーロック」に「とうてつ」(←漢字が出なかった)いやいやユニ公はどうしたよ。「ユニコーン」という項目はなかったんですが、「一角獣」と「中国の一角獣」がありました。後者は「麒麟」について。前者がユニコーンです。ちょっと引用。


 セヴィリアのイシドールスが七世紀はじめに著した『エティモロジー』には、一角獣の角の一突きは象をも殺す、とある。これとおそらくそっくりなのが、シンドバッドの第二の航海に出てくるカルカダン、つまり犀の同じような勝利である。


 あ、その前にプリニウスの引用をしてますな。孫引きになっちゃいますが、


 もっとも獰猛な動物は一角獣で、これは胴体は馬に似ているが、頭は雄鹿、足は象、尾は猪にちかい。太いうなり声をあげ、一本の黒い角が額の真中から三フィート突き出している。この動物を生け捕りにするのは不可能だといわれる。


 と読むほどにユニ公のイメージが崩れていきますな。てか、これ犀っぽいよなあ。ごついし。じゃあ「トライコーン」とかになったらトリケラトプスなのかもしれん。


 さらに引用が続き、ユニ公の捕獲方法について。


 中世の動物物語集の教えでは、一角獣を乙女の手で捕らえることができる。ギリシアのフィジオロゴスにはこうある。「どうして捕らえるか。その目の前に乙女を置くと、その膝に跳びのってくる。そこで乙女はこれを愛情で温ため、王たちの宮殿へ連れていく。」


 いや、跳びのられたら潰れないか乙女。ちなみにその直後の引用。


 レオナルド・ダ・ヴィンチによれば、一角獣が捕らえられるのはその情欲のためである。情欲ゆえに自分の凶暴さを忘れて少女の膝に頭をのせ、そうして狩人に捕らえられる。


 今度は潰れなさそうだが、ユニ公エロい生き物のようですな。ちなみに「ソードワールド」のリプレイにそうした話が出てきます。宮廷に連れてこられたユニコーンが騒動を起こしている。この世界ではユニコーンは保護動物で、隣国から密輸で連れてこられたユニコーンを国際問題になる前に送り返す話になるんですが、そのために宮廷で世話をしなくてはいけない。ユニコーンは知恵ある生き物なので、下手な扱いはできないし、乙女しか触れないので乙女という触れ込みの女性たち、貴族の娘たちが連れてこられるのだが、誰が触れて誰が触れなかったというゴシップが蔓延し、というヨタ話。


 まあユニ公のイメージはこんな感じですが、じゃあどういう設定を組み込みましょうかねえ。色については、ペガがそうだったんで、


 A21−1:ユニコーンの毛並み、毛の色についてはいろいろある。


 ということにひとまずしておきます。角の数については、


 A21−2:ユニコーンの角は一本とは限らない。
 A21−3:ユニコーンの角は複数ある場合でも、目立つのは一本だけ。


 てなことにしとくと、「ユニコーン」の名にさほど矛盾しないかなあ。攻撃力に関しては、これまでのミノ神話とか軍馬のように使われることからある、と断言してかまわんでしょう。


 こっからミノとかとの関わり合いとかその他諸々の設定に取りかかっていくんでしょうが、そろそろ時間なんで、今回このくらいにしておきましょうかね。次回はユニ公の能力について考えますか。癒しの力はあるのか。純潔なのか。そして、エロいのか?












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 ペガサスが飛ぶ話。 第22回(2008年1月中旬


 第22回ユニ公のエロい話。……いや、別にエロくなくてもいいんですが、こないだちょこっと話がソードワールドの引用から。テーブルトークRPGのリプレイなんで、行の頭にあるのが発言者の名前になります。GMはゲームマスターね。密輸団を倒してユニコーンを入手した冒険者たち、ユニコーンは王宮に預けられ、体力の回復を待って、隣国ラムリアースに送り返されることになります。その護衛を依頼された主人公たちが王宮に招かれて、というとこ。


 バス そうですぞ、タダでさえこの王宮内では「ユニコーンの世話をしろ」といわれて、働く女性たちにセクハラ問題が大蔓延。次々に女官たちがサボタージュを始めるという大騒動が起こったばかりだと聞いております!
 GM いつの間に!(笑)
 ヒース となると、このユニコーンを今まで世話をしていた女性たちは、一体どういう身分なんだ? 事情を知らない連中に任せられるような仕事じゃないだろうし、貴族の娘さんたちは、もともと厩舎になんぞ近寄らんだろう。
 バス それに加えて、貴族の娘さんがたには、後暗いことが一杯でしょうからな(笑)。
 GM 騎士団長のディーターさんの歳の離れた妹さんとかに、お願いしていたようです。だから、そのまま彼自身が依頼の仲介に来たようですね。
 バス 「私の娘にさせようとしたところ、できなかったので、一家が崩壊しいました」なんてこともありそうですな(ぼそ)。
 一同 (大爆笑)
 ヒース こ、こええ! それはマジでありそうだ!(笑)
 エキュー 「こんな厄介なモノは、とっととラムリアースへ返品してしまえ!」と(笑)
 バス きっと、今、城内は素晴らしく微妙な空気に満たされているはずですぞ。「××伯の娘は、近づけなかったようですぞ」「何と! お相手は一体……」「■■侯の……」とゴシップ大蔓延中。
 ヒース 史上最悪な生き物だな、ユニコーン(笑)
 エキュー 最初は美しい生き物だから大切に置いておこうと看病していたけど、そういう弊害が出てきたから、とっとと熨つけて返してしまえと(笑)
 ヒース 騎士団に任せると、家庭崩壊した騎士にばっさりやられてしまう危険性があるから、俺たちへとお鉢が回ってきたのか! これで納得したぞ、ユニコーン!
 GM いや、納得されても〜〜(涙)。
 バス いやー、最近城内での刃傷沙汰の噂が多いなあと気にしてはおったのですが、これで納得ですぞ(笑)。
秋田みやび/グループSNE『走れ! 神秘の大森林』


 いや、これって結局「ユニコーンに触れられるのは乙女のみ」という辺りから出てきてる話なんですが、フツーの小説などだと絶対出てこないような展開ですよなあ。でも実際問題として考えると、外せないことでもあるはず。


 でもまあ、とりあえず今度設定するユニ公どもがそんなナマモノであるかどうかは分かりませんが。


 あんまし時間もないので、今回駆け足で行きまする。最初に設定したペガさんず、次のミノ吉たちと、まっとうに仕込んでいくつもりで変な生き物になった気がなきにしもあらず。なのでユニ公は最初から変な生き物にするつもりでいこうかと思います(おい)。


 ざくざく思いついたことを挙げてきます。解説しきれなかったら次回持ち越しで。

 A22−1:ユニコーンの特徴は回復能力にある。
 A22−2:ユニコーンの回復能力のキモは角にある。
 A22−3:ユニコーンの角には生命力が蓄積される。
 A22−4:角に蓄積された生命力は螺旋効果(レンバス効果)によってユニコーン自身に戻ってくる。


 前回触れたユニコーンの一般的特徴では「癒し」というのがあったわけですが、基本的にそれが自分に働くような感じで。螺旋効果とかいってますが、アドリブで作ってますよレンバス効果も。


 A22−5:ユニコーンの角は内部が螺旋状に構成されており、中を生命力が走り抜けることでどんどん増幅され、還元される仕組みになっている。
 A22−6:蓄積された生命力がより多く、より強くなってくると、角が成長して大きくなる。
A22−7:一般的に角の大きなユニコーンほど蓄積される生命力は多いが、だからといって常に満杯になっているわけでもない。


 まあ電池くっつけてるような感じでしょうか。あるいは「こぶの中に水が入ってる」というラクダのイメージ。んじゃ、実際どうやって蓄えるのかってえと、


 A22−8:生命力を角に回す方法は基本的に運動をすることである。
 A22−9:例外的に外部から取り入れることもできるが、かなり効率が悪い


 どういうことかと申しますと、運動をする→疲労する、という流れがあるんですが、それとは別に運動をする→活性化した生命力が角の螺旋に取り込まれるという流れ。これが増幅されて戻ってくるとどうなるか。

 運動による疲労>回復量:すなわち回復ができず疲労していく。
 運動による疲労=回復量:すなわち疲労することがない。
 運動による疲労<回復量:すなわち運動するほど元気になる。


 なので、そこそこの運動をしているユニ公は疲れることがあまりない。この辺りは最近読んだ酒見賢一の本で太極拳とかその辺に喚起されたものですな。なので内心このユニ公が運動して生命力を蓄積していく状態を「クンフーを積む」とかいってますが。

 あ、ちなみに外部から取り入れる方法ですが、ぶっちゃけ、角で何かを殺す、傷つけることで生命力を吸収ってやつ。でも殺っても効率が悪いので自分で運動した方が健康になれます。逆にいえば、自分で運動できない場合、有効になる方法でもあるということ。例えば老いぼれたり病に倒れたりしたユニ公に食事を与えるような感じで。


 また、クンフーを積んでいる状態に慣れてるわけですから、角が折れたとき、相当なダメージがあります。


 A22−10:角を失ったユニコーンは、短期間で衰弱死、または過労死する可能性がある。


 まあそれまで元気だったわけですから、回復しないのに前のまんまで動いたりしたらヤバいってことで。


 A22−11:ユニコーンの角は基部が残っていれば生えてくる可能性がある。


 多分、複数ある場合が考えられるというのはこの理由でいいでしょう。根本は一緒で、別々の電池を積んでる状態。


 あと考えるとしたら、その回復力は他者への癒しとして作用するかどうか、ですが、これはどうしようかなあと迷っております。ま、次回までの課題にしておきましょうかね。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第23回(2008年1月下旬


 第23回ユニ公話の続き。のはずなんですが。いかんせん、記憶が飛んでるので、果たして私の覚えてない領域で妄想エンジンが起動して、バカ話を考えたものかどうかいまひとつ自信がない、というか覚えてないのでネタとしては使えないのですが。


 なので、急遽緊急起動。ぐるーんぐるーん。なお途中から読んだ人は何やってるかさっぱり分からないと思いますので、6月の上旬辺り下の方から行くといいかもよ。要は異世界構築を実際にやってみようというオバカな話。「空中を走るペガサス」に始まって「歌うミノタウロス」と来てこないだ「クンフーを積むユニコーン」まで辿り着いたわけですが。


 よし起動。ユニ公について追加設定をいくつか考えてみましょう。前回たしか、角を電池のイメージで捉えてました。運動をすることによって蓄えられたエネルギーを増幅して還元(レンバス効果)、体力を自動回復させる仕組みという怪しい理屈を展開したんでしたっけか。


 A22−8:生命力を角に回す方法は基本的に運動をすることである。
 A22−9:例外的に外部から取り入れることもできるが、かなり効率が悪い。


 これが前回出た設定ですが、外部から取り入れる手っ取り早い方法は角で生物を刺すということでした。保留になってたのは、じゃあユニ公の癒し効果は他者に作用するのかどうかという点。どっちが面白いかなあと考えると、


 A23−1:癒しの効果は他者にも接触により作用させることができるが、効率は悪い。


 このくらいが妥当かと。ポイントは「作用させることができる」と「効率悪い」ですか。つまり「作用させないこともできる」ってことで、ユニ公が望まないとなかなかうまくいかない。効果が出ても、消耗が激しい。でもゼロじゃないわけで、そうすると、


 A23−2:ユニコーンの角は治療薬として用いられることがある。
 A23−3:ユニコーンの角を用いた薬効はあまり知られてはいない。


 角のまま接触させるとか、すりつぶして粉末状にして飲むとか。漢方薬みたいなイメージでしょうか。ミノ吉たちのことから考えると、あんましユニ公自体が他へ知られてないような気がしますんで。もし大規模に知られた場合、


 A23−4:ユニコーンの乱獲が一部で生じたことがある。


 おそらく昔そうした出来事があって、ユニ公は数が減ったり隠れたりして、知る人ぞ知るお薬になったのでしょう。ちなみに、


 A23−5:ユニコーンの角のみを接触させることで多少の癒しは発生することがある。
 A23−6:ユニコーンの角のみを使用する場合、時間の経過、使用の状態により蓄積された癒し効果が減っていく。補充は不可。


 という感じで。あ、そうそう。前回運動量と回復量について触れてますが、もちろん上に荷物載せてたりすると負担は増えますよ。なので、


 A23−7:ミノタウロスを載せたユニコーンは疲弊する。


 さ、さすがに牛が乗ってたら疲れるじゃろう。というか、ミノ吉重いので、地上馬には乗れないような気がします。ユニ公だから疲れるくらいで済むんであって、地上馬なら潰れる、という。


 まあ、ちょいと時間もないんで、今回はこのくらいで。次はもう少しユニ公の仕組みを考えてみるか、ミノ吉−ユニ公−ペガさんらの関係に突っ込んでみるか、そんなとこでしょうか。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第24回(2008年2月上旬


 第24回ですが、ユニ公をからめつつ続きを。といっても、今回あんまし妄想エンジンが動かなかったので、ネタ少なめで。


 まず前回までにユニ公の設定が膨らんできたので、これをミノ吉たちとからめてみましょうか。


 A17−11:ミノタウロスの騎乗用生物は、少数の部族で育成されていて、ほとんど外に出ることはない。
 A17−12:ミノタウロスの騎乗用生物は、大層力強く頑健である。
 A17−13:ミノタウロスの騎乗用生物は一角馬である。



 というのがあったのでとりあえず思い出してみた。ううむ、こないだのユニ公の設定はそのまま矛盾なしで使えそうなのでよし。でもまあ、


 A24−1:ユニコーンは通常は乗用馬としてではなく農耕馬や荷馬として使用されている。


 ということにしておきましょうか。理由としては、部族単位で生活し、あまり外部に出て行かないミノ吉たちは騎乗用生物がいらないような気がするということ。ミノ吉自体が頑丈にできてるわけだし、速度を必要とすることがないなら、いらないでしょう。もっともあくまで「通常」ということであって、非常の際はその限りではありますまい。


 A24−2:ユニコーンはミノタウロスの「家畜」ではなく友として扱われている。


 つまり、ミノ吉がユニ公を「使ってる」というのではなく、「力を合わせている」という意識が強いと。なので「育成」というのも友達の子どもを育ててるような感じ。これが地上馬になると、ユニ公とは扱いがまったく異なり「調教」という方向になります。何となれば、


 A24−3:ミノタウロスたちはユニコーンを枝分かれした兄弟だと考えている。


 このため。以前いきなり出てきたミノ吉たちの神話が根拠。一方で、この神話はミノ吉たちによるものであるため、ユニ公がホントにそうなのか、というのはまた別問題。神話ってそーゆーもんですよね。


 A24−4:ユニコーンの知能は動物並みか、賢い動物並。


 つまり、ミノ吉のいうこと、意思の疎通はある程度可能。またユニ公にしてみれば、畑耕したり荷物運んだりすることで、適度な運動を行い、角に力を蓄えたり角を育てたり、食べ物をもらったりするわけです。一方のミノ吉たちにすれば、頑丈で力のある男衆たちよりもユニ公の方が持続力があったりするので、お互いに補い合うことができると。また、


 A24−5:ユニコーンはペガサス狩りにも投入されることがある。


 瞬発力のないミノ吉と違ってユニ公の方が動きが早いので、一気に距離を詰めたりするのに利用されます。このときにはミノ吉が上に乗ったりするわけです。もっとも、ミノ吉の部族すべてがユニ公を使うわけではないので、部族によってはミノ吉だけで畑仕事やらやってると。あるいは、


 A24−6:部族間の状況によってはユニコーンを融通したりすることがある。


 ということもありうると。なおユニコーンが死亡した場合、


 A24−7:ユニコーンの死骸は所属するミノタウロスの部族のやり方で葬られる。
 A24−8:葬られる際、ユニコーンの角のみは切り取られ、すり潰して部族のものたちすべてに腹に収められる。


 などというとっぴょーしもないことを思いついたので書いてみたり。


 A24−9:ミノタウロスたちは死んだユニコーンの魂を一度自分の中に宿され、自分の角と一体化させることによって、自分の死後に魂がともに《シ=キ》の御許に行くようにと考える。


 という感じでどうか。


 まあミノ吉とユニ公の関係はこんなとこかなあ。次はどうしようかなあと迷いつつも、今回このくらいで。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第25回(2008年2月中旬


 男がひとり、山をさまよっていた。

 なかなか獲物に巡り合うことができず、朝から狩りに入って、いまだ野兎一羽という始末だった。

 その上、道に迷った。どうもどこかで獣道に紛れたようである。

 帰り道を探し当てることもできぬまま、夜になった。野営の場所のひとつもまず探すべきだったのだろう。もう少し、と思いつつ、時間を無駄にしてしまった。

 あ、と思ったときには遅かった。男をさらなる不幸が襲った。足を取られ、姿勢を崩した。その先に、ちょっとした崖があった。

 落ちた。

 不幸中の幸いというべきか。いくつかの擦り傷と、足をくじくくらいで済んだ。

 夜、が来る。

 獣の遠吠えに怯え、男は一夜を過ごす場所を求めた。なかなか適した場所は見つからず、這いずるようにして、近くの樹の根本、いくつかのまたになったところへ身体を押し込むようにして隠れた。
 
 火をおこす余裕もない。野兎の死骸をどうにかすべきだった、と気づいたが、今更どうすることもできない。

 遠吠えが近付いてくる。男は闇の中に光る目のようなものをたしかに見たと思った。獣臭い風に怯えた。

 それでも。男はいつの間にか眠っていたらしい。あるいは、気を失っていたのかもしれなかった。
 
 身体が揺れていた。まだ意識が外界と結びついていない。半ば夢の中である。

 細い、それでいてしっかりした歌が聞こえた。そう思った。

 揺れる。揺れる。揺れる。

 再び目が覚めたとき。男は山の入口に倒れていた。傍らには野兎の死骸が落ちていたままであったという。

 おそらく、と戻ってきた男に村の古老がいった。お前は「山の人」に救われたのだと。

 男も昔語りに聞いたことがあった。山には「山の人」と呼ばれるものたちがいるのだと。「山の人」は角をもつものたちで、人間のようには見えない。またかれらは時折山に迷い込んだ人間を助けることがあるのだとも。

 男が聞いたのは「山の人」の歌だったのだろう。男は感謝し、再び狩りに赴いた折り、目立つ場所に酒をいくらを置いておいた。翌日、再び行ってみれば、酒は消えていた。代わりに、野兎が一羽。過分な礼であったのかもしれない。

男は二度と「山の人」に会うことはなかったが、時折、山の奥で細い歌のようなものを聞いた、という。



 そんな第25回。何となく思いついたので書いてみました。ミノ吉たちと人間とのコンタクトって、最初はこんな感じだったのかのう。あるいは、物々交換取り引きの始まりというか。


 上の話。最初のバージョンだと焚き火して野兎焼いてる間に眠り込んでしまい、ふと起きると目の前、焚き火の向こう側にミノ吉が座っているという展開だったんですね。怯えた男が肉を差し出すが、ミノは固辞(だってベジタリアンだし)、代わりに男が持っていた酒をもらう、と。で焚き火に照らされ、月を見上げて歌うミノ。男はいつの間にか眠り込んでしまい、夢の中で揺られ、気が付くと村の近くへ、という流れでした。いや、狩りに行くのに酒持っていくのもどうかと思ったんで、上の形になったんですが。持ってき方次第では可能だったかなという気も。例えば山に入るときにはいざというときのために、あるいは山の人に奉納するために酒を一本下げていく風習があるとか。


 とまあ、こんな思いついた場面を描いてイメージを補強していくのもアリかと。
 

 次回もこの路線で行くかなあ。気分次第風任せでござんすが。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第26回(2008年2月下旬


 第26回。前回は思いつきで何かテキトー書いてましたなあ。って、今までも思いつきですかそうですか。

 今回はどーすべかーと考えていたら、ふと空中戦に関することが浮かんだのでそうする。ミノ吉にはちと飽きた。いや、別に趣味でやっていることであるし、こうしたクリエイトのコツのひとつは別のいろんな側面を掘り下げていって連結していくことにあるわけで、だいたいミノ吉にしてもペガさんずの設定から出てきたわけだし、うだうだ。もっとも、今回はとりあえず前におっ立てた設定を掘り起こしつつ、まとめていくという形になるかと。時間ないし。


 空中戦といったら、ペガサスナイト辺りのことを想定してみますか。ペガナイに監視絵は、今まで出てきた設定をまとめていくと、こんな流れになります。


 設定3−7:戦闘におけるペガサスナイトは戦の華である。
 設定3−15:戦場において敵ペガの行動を阻害するためにミノ粒子散布が行われるようになる。
 設定4−6:帝国が版図を広げる時期には、もう「ミノ粒子」が発見・利用されている。
 設定3−18:ペガサスナイト衰退後、戦場のメインになるのは歩兵である。


 帝国が周辺にとって脅威となる頃には、とうにペガサスナイトは戦場の華ではなく、騎士の一騎打ちとかそういうものよりむしろ荷馬車とか偵察兵とかそういうところでしょうか。歩兵がメインになったところで、帝国が重装甲歩兵を開発して、一気にのし上がってくるという流れにつながります。


 ……あれ? 今書いてて、脳内でつながったので書きます(日本語が変)。


 A26−1:帝国がのしがった流れはミノタウロスの部族をいくつか屈服させたことに始まっている。
 A26−2:帝国はミノタウロス族から「ミノ粒子」を大量に入手することに成功した。
 A26−3:帝国にはペガサスナイトがほとんどいなかった。
 A26−4:帝国は敵方のペガサスナイトを「ミノ粒子」にて撃破しまくる。


 思いついたきっかけは、ミノ粒子を入手しやすいのが帝国だったせいですが、まあこんな流れだったんですかね。で他国はミノ粒子を利用できないせいで、ペガサスナイトの伝統的運用ができず、歩兵対歩兵の戦いがメインに。まあ実際、

 設定4−8:帝国軍主力は歩兵。
 設定4−9:帝国軍主力は歩兵→装甲兵→装甲弓兵・装甲槍兵に変化。

 と書いてあるし。


 話を戻して、空中戦に必要そうなペガサスの性質としまして、


 設定3−11:空気の薄い場所(高い場所等)ではペガサスは飛行困難になる。
 設定5−3:群れで飛ぶときのペガサスは、/状や<状の並びをすることが多い。
 設定5−4:群れで飛ぶときのペガサスは、群れ内で同じ高さを保って飛ぶ。
 設定5−5:一直線で並んで走る場合、間の距離を一定に保つのが前提。
 設定5−6:ペガサスは頭上を遮られるのを恐がる性質がある。
 設定5−7:ペガサスは空中で跳躍ができる。



 この辺りでしょうかねえ。二段ジャンプの設定なんてすっかり忘れてましたが。これまでの設定では基本はペガサス=馬、なのですね。「空を飛ぶ」のではなく「宙を駆ける」なので、空中戦といっても、基本はやっぱり騎馬戦になるかなあというところ。ただし、上で挙げたような設定や挙げなかったこれまでの諸々のことを併せてセッティングしていかねばなりますまい。


 なーんてこといってますが、お遊びでやってることではあるし、馬具とかに関する資料読んでる暇もないし、気楽にいくつか立ててみようかなあ、次回、と。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第27回(2008年3月上旬


 前回の次回予告では、ペガさんずの空中戦闘に関する話をするべーということでした。そんな第27回。とーとつですが、ぼへぼへと朝っぱらから原付を走らせていたところ、神様が降りてきました。具体的にいうと花火職人の顔してました。前に観た古いアニメ映画(1978年、未完)の一節の中で、そのじっちゃんがいいました。「Mr......Underhill」いや、なんつーか、フラッシュメモリイ? 時折昔の記憶とかが音声付きで再現されるのですが、そんな感じで。


 そういや、ペガさんにはメリグリン2(ペガさんに空中走行を可能にさせた謎物質)、ユニ公にはレンバス効果(くんふー)があるわけでして。まあネタ的にもミノ吉に持ってこなければなりますまい。


 そんなわけで予定変更。予定は変更されるためにあるのです。せっかくなので、前に作った設定と結びつけつつ。またお話仕立てで行ってもいいんですが、今回は箇条書きで。


 A27−1:ミノタウロス族と交易をする人間の一族がいる。
 A27−2:ミノタウロス族と交易をする人間の一族は「山の下の族」と呼ばれる。


 イメージ的には前にミノ吉に助けられた狩人とかあの辺から、やがて交易の道ができたというところでしょうか。


 A27−3:山の下の族はミノタウロスのことを「山の上の族」と呼ぶ。


 としてバランスを取りつつ、


 A27−4:山の下の族と交易をすることによって、ミノタウロス族は人間の言葉を学んだ。


 たしかどっかにそんな話が出たかと(←うろ覚え)。人間が牛語を覚えるよりミノ吉が人語を覚える方が早いとか何とか。……あ、あったあった。

 A16−1:ミノタウロスは独自の言語を持つ。
 A16−2:ミノタウロスは人間と言葉を通じ合わせることが可能。
 A16−3:ミノタウロス語を人間はおおよその理解できるがしゃべることはできない。
 A16−4:交易の際には人間の言葉が用いられる。


 ミノ吉が山から下りてくるパターンと、山の下の族が山に入るパターンが考えられるので、独占的に交易を行っていたとして、


 A27−5:山の下の族は自分たちの「歌」を持っている。
 A27−6:山の下の「歌」はミノタウロスの言葉で歌われる。


 というのはどないだ? ミノ吉は自分たちの歴史を歌として持っているわけでして、そのミノ吉と交易をする、あるいは交流があったということまで含めた「歌」があって、それをもってミノ吉は山の下を認識、安心することができる、というすんぽー。同時に、この「歌」がないと交流なんてあったもんじゃないわけでして、


 A27−7:山の下の族で山の上を相手にする者は皆、まず自分たちの「歌」を覚えさせられる。


 これはミノ吉たちとの長い時間をかけた交流と挫折によりどうにかこうにか「歌」になったもので。歌う側はまったく知らない洋楽を歌ってるような感じにだんだんなっていくのですが、同時にミノ語ということで、余所者が割って入る余地がなくなっていって独占状態ということですか。


 そして今回の重要要素。


 A27−8:山の下の族の一部が帝国を山の上へ導くことになった。


 ミノタウロスの苦難の始まりです。


 そんな感じで、次回こそ空中戦といきたいですが、山の下を広げてもみたいなあ。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第28回(2008年3月中旬


 これは珍しい。グ。こんな場末の酒場で、こんなつまらぬ語り手のくだらぬ話を聞きたいなんてな。

 おっと。別に旦那をこき下ろそうってわけじゃありませんよ。わしのようなものの話を聞こうって奇特な御方だ。よほどの器とお見受けしました。グ。

 グ。

 おっと。失礼。ちっとばかし喉の具合がよくないのでね。多少なり聞き苦しいのは勘弁していただきたい。グ。グ。

 や、こいつは。どうにもせびったようで申し訳ないこって。グ。たしかに喉にはこいつが一番の薬ってもんで。おい、親爺、もう一本こっちに持って来てくれ。何、金なら今日は心配ない。なあ、旦那。

 で、旦那。一体このわしのどんな話を聞きたいってんで。グ。グ。ははあなるほど。かの「霧の山」とか「霧の流れる山」に関する話ですかい。たしかにわしはあの辺りの出身。よくぞそのことを突き止めなすった。とはいっても、酔っぱらいの戯言。わしのことなど皆ここいらの者は知っているのかもしれませんがね。

 あの辺りの者は「霧の山」なんて言葉は使いませんや。単に「山」ってんで。「山」といえばあの辺り一帯、グ、のことで。グ。なるほど。察しはつきやした。旦那、あの話を聞きたいとみえる。

 あの辺りには昔、「山の下」って呼ばれる地主連中がいましてね。「下」があれば「上」もあるって寸法で、もちろん、「山の上」という連中もいました。そうです。よくご存知で。さすが旦那だ。グ。「山の上」ってのはつまるところ、あの牛頭たちのことで。「山の下」の連中は、牛頭たちと商売をしてたんまりもうけてたってわけです。

 なるほど。旦那は事情に通じてらっしゃるようだ。だとすれば、一体何を知りたいんですかね、グ、ひとつわしの方こそ教えていただければ、語り口も無駄がなくなるってもんです。

 ……アゴルの一件ですか。それを語れというなら、グ、グ、グ。ああ、そこまでしなくても。いや、こんなに。いいんですかい。まさか偽金ってことはないでしょうね。いや、別に旦那の素性を疑ってるわけじゃありませんがね、いきなりこれだけの金をわしごときに出されては裏に何があるのか用心しようって気にもなるってもんで。

 ようござんす。グ。わしの知る、アゴルの物語をお聞かせしましょう。

 アゴルってのは、「山の下」の男でした。これが実は二人いましてね。おや、旦那でもそれはご存知なかった。この二人は従兄弟同士で、顔立ちも年格好も大層似てたということです。区別するためにひとりを「手のアゴル」、もうひとりを「炭のアゴル」とでもいっておきましょうか。手のアゴルはその手の器用さから、炭のアゴルはよく外を出歩いては泥だらけになっていたことからつけられた、まああだ名でして。ともあれこの二人は年の変わらぬ仲のよい従兄弟同士でした。グ。

 旦那のことだからご存知かもしれません。「山の下」には昔っから伝わる歌があります。牛頭どもの言葉で歌われているのですが、これが「山の下」の「山の下」である証、「山の下」が「山の上」を呼ぶためのものです。歌の意味なんて分かりません。ただ、これを歌うことができなければ、グ、いっぱしの「山の下」として、牛頭どもと直接の商いをすることもできないわけで。

 二人のアゴルももちろん、小さい頃からその歌を仕込まれていました。そして十五になった折りのことです。二人のうち、手のアゴルだけが、旦那のいわれる「霧の山」に踏み入ることになりました。ひとりで山に入り、歌い、山の民に会うこと。これが商いをするための、まあ「顔見せ」です。グ。あるいは、地方によっていろいろとあるでしょう、大人になるための儀式、度胸試しのような意味もあったのかもしれません。仲のいい従兄弟同士でしたが、ここでふと、炭のアゴルに悪戯心、というのでしょうか、グ、あるいは嫉妬であったのかもしれません。手のアゴルの後を追って、こっそり山に入ったのですよ。
 グ。ああ、すいません。ああ、うまい酒だ。喉も心も潤うってもんで。

 ええと、どこまで話したんでしたっけね。ああ、そうそう。アゴルが山に入ったところでした。実は、このアゴルたちが、戻ってこなかったんです。何が山で起こったのか、本当のところは他の者には分かりはしませんよ。ただ、こういう話だってことです。グ。

 牛頭どもは、たしかに自分たちに会ったという証に、「山の下」にひとつの贈り物をするんです。ええ、旦那がさっき見せたようなぴかぴかに光る石をひとつ。これが、その後牛頭どもに対する身分証のような働きをするんです。ひとりにひとつ。「山の下」の連中はこれをグ、「我らが貴きもの」と呼んでいました。

 もちろん。手のアゴルは歌い、牛頭に会いました。ということは、「我らが貴きもの」ももらったんです。ところがこれを見て落ち着かないのは炭のアゴル。従兄弟の前に姿を現して、それを見せてくれと迫りました。グ、グ、グ。「貴きもの」を手に入れたばかりの手のアゴルはそれを懐に、例の素早い手さばきでしまい込み、炭のアゴルを相手にしませんでした。かっとなった炭のアゴルは従兄弟ともみ合いになり――

 手のアゴルは霧の渦巻く崖に落ちたということです。そして――

 炭のアゴルは「貴きもの」を持って、姿を消しました。

 再び「山の下」にやってきたとき、アゴルの懐に「貴きもの」はありませんでした。山から離れ、町の暮らしに慣れ、落ちぶれてしまったということです。それに、実は炭のアゴルは、あの手のアゴルが「貴きもの」を入手したとき、近くに隠れて、牛頭を見ていました。「山の上」のことは幼い頃から聞いていたんですが、実際に見るのは初めてです。人じゃない牛頭。グ。そこに嫌悪を抱いたのです。

 そのアゴルは、ひとりで「山の下」に戻ってきたわけではありませんでした。旦那、ご存知なんでしょう。かの男爵、かの先帝陛下のご友人がともにいらっしゃったのです。男爵は初め、「山の下」を治めて、牛頭どもとの交易を一手に握ろうとしていたのです。グ。それを可能にしたのがアゴル、それに拍車を掛けたのが「貴きもの」でした。つまるところ、グ、牛頭どもは貴重な石をたくさん持っていると思われたわけで。しかも、「山の下」はその一人前と認められた分しか「貴きもの」をもらえませんでした。商品としては扱ってなかったんです。

 結果はご存知の通りです。男爵は牛頭どもの部族をいくつか滅ぼした。宝をたくさん手に入れた。だけじゃなく、自分たちですべてを手に入れるため、「山の下」たちを追い散らしました。

 いえいえ。アゴルはたんまり報酬をもらったなんてことはありません。哀れなアゴルは放り出されました。それだけじゃあない。

 どこから嗅ぎつけたのか。猛り狂った牛頭たちが、散り散りになった「山の下」を追ったんです。襲撃に否も応もなく関わったものたちすべてが仇討ちの的になりました。

 グ。グ。グ。哀れなアゴルもですよ、旦那。

 これでわしのつまらぬ話はおしまいです。

 ああ、ありがとうございます。この金貨はありがたくちょうだいしますよ。旦那に幸いがありますように。

 ええ。せいぜい喉をいたわることにしますよ。旦那の金貨で当分はゆっくりできそうですしね。

 グ。グ、グ。

 え、この喉ですか。昔、ちょいとつぶされましてね。ようやくこの程度しゃべれるまで回復したんですが、もういけなさそうだ。グ。グ。

 いやなにちょっとしたことでしてね。別に大したことじゃありませんし、旦那に語るような話でもありません。

 それではまた、何かこのつまらぬ語り手に聞きたいことでもできましたら、お越し下さい。旦那ならいつでも歓迎だ。


 勢いで書いて第28回了→To be continued 第29回。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第29回(2008年3月下旬


 私は夜の空を見上げる。星が散りばめられた空。

 待ち人はまだ来ない。星を見ながら、ふ、と三日前に会ったしゃがれた声の酔っぱらいを思い出した。

 アゴルというひとりの裏切り者について語った男だ。

 アゴルという男に興味を私が持ったのは、ずいぶん前だった。別のひとりの男との出会いによる。

 私が出会ったあの男。彼は、「角折れ」シン=ズウの友として知られている。シン=ズウ、すなわち角を折られた「歌う角」の民。

 「歌う角」とかれらは自分たちを呼ぶ。あの男も自分をその一員だと考えている節があった。だが、つまるところあの男は人間だ。人間であるにも関わらず「歌う角」で構成された傭兵団の中にいる。

 役割としては、人と「歌う角」の折衝役にあたる。常に「歌う角」の傍らにあり、通詞の役目を果たしている。「歌う角」は人間の言葉を理解するが、人が人と話すように言葉が通じているわけではない。やはり、そこは慣れた人間が間に立った方が通じやすいということのようだ。また、「歌う角」は人間の風習に親しいわけでもない。かれらはおのれの習慣を大事にする。ために、やはり間に立ってその調整に努める者が必要なのだろう。
 あの男は、壊れた身体をもっている。右足は完全に一度破壊されたらしく、ひきずることしかできない。ひきずる度に顔をしかめる。また、背中も具合がおかしいらしく、ひどくいびつな姿勢をしている。ために、あの男は、ひとりで長い距離を歩くことも、短い距離を走ることもできない。

 ぎらぎらと光る目。同時に、どこか達観した、澄んだ目でもある。

 あの男は、「歌う角」と同じく一角の馬に乗る。私はあちこちを見聞した人間であるが、一角の馬に乗っている人間を他に知らない。

 「歌う角」に「友」と呼ばれるあの男は、一角の馬に乗っている。私が見たときもそうだった。かの馬に乗っている間、かの馬に触れている間は痛みが多少やわらぐのだと、苦笑しながらいうのを聞いた。

 あの男には、名がない。初めからなかったわけでもないだろう。どこかで失ったか、隠したのか。

 あの男は、アゴルという男に興味を持っていた。「歌う角」との関わりが深いのであれば、むしろ持たない方が不自然である。少なくとも、今の私にはそうした知識がある。

 アゴル。すなわち、「歌う角」への裏切り、「山の下の族」への裏切り。同時に二つの背信をなした男。

 私は視線を戻した。音が聞こえたからだ。街路を蹄が叩く音。

「どうだった」

 一角馬にまたがったまま、男が問うてきた。何について問うたか、私も男も理解している。

「おそらく」

 短く答える。星明かりの下、男の目が光ったような気がした。

「少なくとも今までの連中より、アゴルをよく知っている」

 あの酔っぱらい。一度喉を潰されたという。

「『歌う角』による制裁を一度受けたようだ。ただ、単なる『山の下』の生き残りだと見られたのか」

 生き延びているからには、その可能性が高い。

「やつだと思うか」

 相手が問うてきた。

「おそらく」

 また先と同じ答えになる。

「金をはずんだ。少なくとものたれ死にはしないだろうし、足止めにもなるだろう。追い剥ぎ物取りの類に襲われなければな」

「手間をかけた」

 男は一礼し、馬首を返した。すぐにでもあの哀れな酔っぱらいのところへ向かうつもりだろう。私がやんわりと語らせたようなやり方ではなく、もっと、例えばかのアゴルが男爵の下でしばらくやっていた獄吏のような。

「おそらく、といったがな」

 私はその背に声をかける。

「間違いないと私は思ったよ」

 男は馬を止めた。振り返らない。

「ずいぶん時間が経った。それでも、あの男は――お前によく似ていたよ」

 一角の馬が歩き出す。男はもう止まらなかった。

 私は溜息ひとつ、星空を見上げた。

 十日ほどの後、あの酔っぱらいが金を懐に残したまま、死体で見つかったと聞いた。



 またしても勢いのまま第29回終わり。てか、ここ何回かを見てないと、何がなにやら分からないような気も激しくしますが、気にしない気にしない。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第30回(2008年4月上旬


 第30回。勢いのまま新設定をずらずらと並べてみんとす。今回湧いて出たのは主に帝国編。箇条書きにするのもメンドくさいのでてきとーに。


 主にこれまで出てきた「帝国」は皇帝メルキ三世の時代である。メルキ三世より数えて四代前、メルキ一世の時代に王国から帝国へ変わった。さらに辿れば、大陸のおおよそ半分を制したジエスタ大王の伝記に出てくる「先触れの三者」のひとりに連なっている。三者のうち「カスパー家」は所在が不明となり、「ザール家」は滅び、「オウル家」は大王亡き後さらに大混乱に満ちた大陸の中を泳ぎ切り、おのれの王国を築き上げた。


 メルキ三世の時代になり、帝国は飛躍を遂げるため、あるいは表沙汰にならない理由のために拡張政策に転じる。当初は苦難が伴ったものの、後に坂道を転がり落ちるように加速し、帝国はジエスタ大王に比する領土を手に入れることとなった。


 メルキ三世の御世において、活動した貴族たちのうち、主立ったものを列挙すれば。三代の皇帝に使えた「最後の竜」ことマウグ侯スマグ。「ザール家」の傍流を標榜する武門で将軍、元帥を輩出したバルタ伯家の当主バルロ。政治手腕に優れた一族シュブ伯家からは宰相シェブ。さらにメルキの側近とされた新興のソウルン男爵。


 このうち、マウグ侯スマグは拡張戦争の中盤、領土がかなり広がったうちに病死したことになっている。ただし後に狩りの最中に流れ矢を受けたことで死亡したことが知られるようになる。マウグ家の紋章は竜。


 バルタ伯バルロは、先々代当主で王国−帝国の過渡期に元帥として軍を束ねていたバルロにちなんで名付けられた。そのため先々代を大バルロ、メルキ三世当時の当主を小バルロと呼ぶ。バルタ家からは小バルロの従兄弟たちや弟たちなどかなりの数の親族が軍人として活動しており、拡張戦争時にも活躍していた。バルタ家の紋章は炎の剣とそれにまきついた鞭。


 シュブ伯家は、先々代の皇帝に仕えたことで道を開き、以後軍部のバルタ伯に対して政務のシュブ伯という立場を確固たるものとしてきた。この立場が示すように、バルタ家とはあまり仲がよいとはいえず、拡張戦争時にも互いの失脚を狙って暗躍していた。家の紋章は黒山羊。


 ソウルン男爵はメルキ帝の側近として、主に暗部で活動していたとされている。バルタ伯、シュブ伯ともに、ときに対立ときに協調と天秤のようにバランスを取っていた。霧の山脈にいる「角の民」を襲撃したのも男爵で、これにより帝国は翼あるものの大量獲得手段及び宝石等による財源を得ることに成功した。紋章は「黒地にひとつ輪」である。


 とまあ大雑把な感じですがこんなとこで。もっと詰めるとこたくさんありますが、そこら辺はイメージシーンを練り込みながらいくといいかなあ。


 ちょいと体調がアレなので、短いですが今回このくらいで。次回はここんとこ3回分のネタバレなどをやってみようかなあと考えてますが、そのときの気分次第ですな。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第31回(2008年4月中旬


 第31回。ここんとこ3回分ほどのネタの流れをまとめてみようかと思う今日この頃。なので27〜30回辺りをさらりと読んでおくと吉。


 ミノタウロス族と帝国の絡み〜帝国の設定に流れていくわけですが、そもそも発端は、ちゃんと書いてありますな。「みすたーあんだーひる」です。元ネタは、分かりやすいですねえ、トールキンの『指輪物語』の映画版「ロード・オブ・ザ・リング」ただし1978年のアニメ版です。原作でいったら第二部「二つの塔」でぶった切られ、エントの進軍開始の辺りで後編へ続くっていって後編がない。あと実写取り込みをアニメにするという作業をしているため、何かアニメというより劇画みたいです。


 さて、「ミスターアンダーヒル」ってのは花火職人ガンダルフがフロドに名乗らせる偽名で邦訳は「山の下氏」だったかな。その辺りからイメージを拾いつつ、「山の下の族」→「山の上の族」という展開。しかも「霧降り山脈」のイメージを付与。


 A27−8:山の下の族の一部が帝国を山の上へ導くことになった。


 とかいってるので、「やっぱ裏切りつったらアレだろう」とスメアゴル登場。合わせてデアゴルも登場。デアゴルがスメアゴルに襲われるというのは反射的に決定しちゃったので細部を埋めていく。当初は幼馴染みという感じで、「出アゴル」と「住みアゴル」あるいは「隅アゴル」として、前者は活発、後者はちょっと暗いイメージだったが、そうすると後者が外に出て襲うシーンがやりにくい。かといって外に出るとその違いが分からないので、ちょっといじって、28回のような状態に。元がスメアゴルなのでゴクリになった後、喉を鳴らすというのが、元は炭アゴルで獄吏になった後、喉をやられて喉を詰まらせるという話に。


 デアゴルは「一の指輪」を拾ったためにスメアゴルに襲われたわけですが、該当する「誕生日の贈り物」として、宝石を持ってくる。宝石の役割を決めて、同時にそれが帝国による襲撃につながった話と結びついたのでよし。


 炭アゴルに襲われた手アゴルは実は生きていたというのが次に出た設定。崖から落ちて重傷を負い、朦朧としたアゴルはかすかに「歌」を歌い、一度去ったミノタウロスがそれを聞いて戻ってきて救出される。ミノタウロスの村に留まったアゴルはユニコーンの癒しの力を借りてどうにか歩けるようになるが、完治はしないまま、帝国にその村が襲われる、と。そこから今度は村を失って部族の宝を奪還しようとしたりしてるミノタウロス傭兵団とかかわっていくことになる設定へ。


 そこから帝国編に入るのですが、帝国編に入ってから30秒くらいで大枠が固まったり。きっかけは、炭アゴルが男爵のとこで獄吏になったという話。じゃあ男爵はサウロンかと。そっからずるずると引きずられる設定。男爵がサウロンなら、格付け的に皇帝はメルコオルだろう。で、皇帝をメルキ・オウルと氏名に分け、今度はそこから「メルコオル」ではなく「メルキオール」として「東邦の三賢者」(キリスト生誕を告げた面々)であるメルキオール、バルタザール、カスパーと連想を動かし、「オウル家」「ザール家」「カスパー家」として、先触れであったことから「先触れの三者」にして、三家残ってると面倒そうだったのでツブす


 さらに「男爵の同僚」としていくつか名家を出現させる。マウグ侯ってのは『ホビット』に登場したドラゴン「スマウグ」から。矢で死んだのはスマウグだから(狩人の矢で撃墜されるので)。バルタ伯バルロは、『デルフィニア戦記』から、ではなく、大バルロ、小バルロといってることから分かるかもしれませんが、バルログです。『指輪物語』に出てくるバルログが小バルログだし。なので炎の短剣と鞭が紋章。対するシュブ伯シェブは、シェロブ(『指輪物語』で後半出てくるクモ)を核にして発生。多分、これまでの流れからすると先祖はウンゴリアントがらみの名になるはず、だったのに、どこをどう間違ったのかクモから山羊に転向。シェロブ→シュブとしたせいで、イメージが「千匹の仔を孕みし森の黒山羊」シュブ=ニグラスに移動したせい。なので紋章が黒山羊さんに。


 あとやるべきことは、ここに書いた流れを抹殺して、結果のみを残し、なおかつネーミングを変更するだけですな。あるいはいくつかの設定を裏返したり変更したりするといいかも。


 そんな感じのここんとこの流れでござんした。次回はもちっと違う方向に行けるといいなあ。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第32回(2008年4月下旬


 第32回。もちっと帝国の状況を詰めておくことにした。何となく。


 今回は「山の上の族」襲撃編。まあこれまでも書いてきた設定であるが、きっかけは今のところ人間側「山の下の族」の炭アゴルが裏切り、帝国を引き込んだことだった。


 帝国、ことに実行者であるソウルン男爵の狙いは何であったか。「山の上」持つ貴金属の類の話が出てきているが、それだけではない。では何の要素があったのか。アゴルの話では、男爵は「山の下」を統治、それをもって交易の独占を測ろうとしたというのが出てくる。


 そのアゴルは、ひとりで「山の下」に戻ってきたわけではありませんでした。旦那、ご存知なんでしょう。かの男爵、かの先帝陛下のご友人がともにいらっしゃったのです。男爵は初め、「山の下」を治めて、牛頭どもとの交易を一手に握ろうとしていたのです。グ。それを可能にしたのがアゴル、それに拍車を掛けたのが「貴きもの」でした。つまるところ、グ、牛頭どもは貴重な石をたくさん持っていると思われたわけで。しかも、「山の下」はその一人前と認められた分しか「貴きもの」をもらえませんでした。商品としては扱ってなかったんです。


 こうした一度出てきた設定をそのまま飲み込んで覆すテクニックで行ってみませう。上記の話はあくまで酔っぱらいの言葉である。男爵が実際何を考えていたかなんて細かいことまで知っているとも限らない(知ってたかもしれないが)。


 これまで帝国と絡めてきた設定から、実はひとつ導き出すことができる。すなわち、帝国の男爵が求めていたのは、「山の上」が用いる翼あるもの獲得のための物質である。すなわち、これまで散々ミノ粒子と呼ばれてきたアレ、ペガさんたちの空中歩行を抑制させる手段である。


 A26−1:帝国がのしがった流れはミノタウロスの部族をいくつか屈服させたことに始まっている。
 A26−2:帝国はミノタウロス族から「ミノ粒子」を大量に入手することに成功した。
 A26−3:帝国にはペガサスナイトがほとんどいなかった。
 A26−4:帝国は敵方のペガサスナイトを「ミノ粒子」にて撃破しまくる。



 なんてことが書いてあるわけで。この設定作ったすぐ上ではすでにペガサスナイトは戦場の華ではなくなってるとか書いてありますが、そこはそれ、どうにかしましょう。


 まず帝国としては、自分たちがほとんど持っていないペガサスナイトを擁する敵がいたわけですな。拡張政策を進める上で、この敵が邪魔であるなら? けれどまともに戦っては勝てない難敵だったら?


 てことで敵国発生。これまでのこと(何?)を踏まえて仮に敵国をロウハ国とでもします。ロウハ国はペガサスナイトを大量に持っています。しかも戦場の華としてはメインじゃなくなった時代に。彼らはペガサスナイトを有効に使い、なおかつ彼らにとってペガサスはなくてはならないものなのです。とフィードバックしていったところで、理由を考えてみる。ペガサスが有効に活用でき、なおかつ歩兵メインの帝国が苦戦するような状況。起伏が多い地勢ですかね。もちろん大平原などでもいいんですが、その場合はペガサスの長所は機動力になりますね。ただ歩兵の短所が表に出てこないので。そっからさらにロウハは山がちの国であるとする。何でそんなとこでペガサスが大量に取れるかっていったら、

 設定2−9:「ペガサスの墓場」は窪地で内側は断崖絶壁。

 なんてことを絡めてみたり。こんなんがあって、ペガサスの生息地が国内にあるという感じで。また山地ということから、実際は「霧の山」すなわちミノタウロスたちがいた山脈とつながってる場所だったりもします。この辺りで帝国にとっては近い距離にあるということになりますし、ミノたちに伝わる神話ではペガサスが山を越えて逃げるというシーンがありますんで、そこら辺もつながるかな。


 また非常にどーでもよろしい連想から、ロウハの同盟国発生。仮に名をゴンドワ国としておきましょうか。古い王国で、かつて大陸半ばを征したジエスタ大王にも屈しなかったということでどうでしょうでも腐敗が進みつつあります。帝国はロウハを相手にするならゴンドワが出てくることも警戒しなくてはならず、大変面倒な状況です。


 さてこんな状況にあって、ロウハの誇るペガサスナイト軍を葬り去る秘密兵器を入手できるとしたら? ミノタウロスはほとんど閉鎖的な部族で、ミノ粒子についての情報も広まっていません。独占できれば、最初の戦闘で大打撃を与えることにつながりかねません。


 そのため、男爵の目的は、「ミノ粒子の入手あるいは生産手段の確立」だったわけです。実行するためには、屈強なイメージは知られている「山の上」をまともに相手にするのは損ですな。

 1)「山の下」を支配下に置き、「山の上」の情報を可能な限り引き出す。特に人数、居住地、山の地勢など。
 2)「山の上」に陽動を仕掛け、戦力を居住地から引きはがす。後の憂いを断つためできれば戦力をすり減らしておく。
 3)居住地の襲撃。古老の類や脅威とはならないが生産手段に関わりのあるものの捕獲。
 4)「山の下」に通訳をさせ、情報等を「山の上」から引き出す。また事情を知る者たちの消去。


 こんなとこでしょうか。戦力を別場所に引っ張りだしたのは、後の傭兵団形成するための伏線ですな。ある程度戦える人数が残っているのが前提なんで。また戦士ではないミノたちを捕虜として確保、同時に持ち去った角笛に関して「物語」の形で保存されている諸々の情報を引き出した、と。


 なんてことを「何故男爵はミノを襲ったか」という理由を考えてでっち上げてみたり。今まで出てきた設定を組み合わせ、フィードバックしつつやっていった感じですな。だいたい当時の帝国の状況が見えてきたかなあと。あとはこれに前に出した他の大貴族たちの思惑とかを絡めてやればいいかな。


 まあそんな感じで、次回はどうするかなあ。そろそろ一年経つし、締めを考えないといけないかなあという気もしますが。まあ気分次第ってことでひとつ。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第33回(2008年5月上旬


 第33回。そろそろ設定編も終わりに近づいてきたかなあと思いつつ、帝国編の残りを。


 前回出たいくつかの設定を生かしつつ、帝国の拡張戦争の展開を続けてみる。「山の上」を襲撃することによって、帝国はロウハ国のペガサスナイト部隊への対抗手段を得たわけですね。だったら、単純にそれで喧嘩吹っかければいいかというとさにあらず。ロウハとの同盟国であるゴンドワ国をどうするかという問題があります。なんとなーく、強い国というイメージがあるわけですよ、ゴンドワ。出てくると帝国側としては面倒なことになる。


 となれば、ゴンドワが出てこない、あるいは力を発揮できない状況を作り上げて、各個撃破という形に持っていきたいところ。とすれば、でかい国だけにいきなり喧嘩吹っかけるわけにもいかないので、じわじわと内部の腐敗を進行させる形ですか。元々腐敗が進みつつあるという設定が前回出ているので、これを加速させる毒を盛ればよろしい。つまり、「蛇の舌」はこちらで生かせましょう。ロウハよりもこちらにした方が楽しそうだ。えーと、何のことか分からない人は無視するか、『指輪』を読んでくださりませ。操り主としては、やっぱり男爵にご登場願いますか。別に白くはありませんが。


 これでゴンドワが出てこない、あるいは動きが鈍いという状況を整え、ロウハ戦ですな。ペガサスナイツを引っ張り出す形でいっきに殲滅。そのまま勢いでロウハ占領でしょうか。残党が手強そうですけど、まあ何となるでしょう。


 いろいろと考えると、例えばロウハの王子あたりが女装して紛れ込み逃亡してるとかありそうですなあ。


 ロウハの蹴りがついたところで、あるいは完全併合が成る前に、ゴンドワがようやく介入という形で行きましょうか。でないと、ゴンドワを撃破するきっかけがなかなかつかめなくなりそうです。練れてないゴンドワ軍を撃破するものの、国力の差からなかなか決着が着かずということで。


 それから徐々に毒が回り始め、ゴンドワ陥落。王は行方不明。執政の息子辺りが国外に落ち延びて、という流れ。


 その後、ロウハ領、ゴンドワ領を食らった帝国は大国となり、さらに周辺へと手を伸ばして、いくつかを滅ぼして大陸制覇へと動いていくことになります。が、その行く手にレジスタンスが立ちはだかります。中心になったのは辺境泊ですが、ゴンドワ執政の息子とかロウハの王子とかが入っていると盛り上がるでしょう。あるいは完全に別勢力として、連携したりしながら、帝国を相手取るとか。


 今まで出てきた話からすると、辺境泊の騎馬隊に破れ、じりじりと帝国は後退していき、最終的に小国になっていくのですなあ。途中で皇帝死んでるみたいだし。


 後半はかなりモチーフを『指輪』から持ってきてますが、この辺りはどうにでもいじれるかなあというところ。


 今回は短いですが、この辺りで。次回から、ちょっと作品にする場合を考えていきたいなあと思います。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第34回(2008年5月中旬


 第34回。さて、これまでそこそこ設定を作ってきたわけである。大雑把に、

・ペガさんの設定
・ミノ吉の設定
・ユニ公の設定
・「山の下」の設定
・帝国の設定、戦争の流れ

 というところですかね。まだまだ十分とはいえない状況ですが、そろそろ一年になるので、まあここらで作品の切り出し方みたいなところを攻めてみようかなと。今回はその出だし編。


 私は絵の人じゃなくて文字の人であるから、作品つっても、小説など文章の類になります。他のジャンルの人は自分の分野に脳内変換しながらどうぞ。んで、やり方としては大きく分けて、2つのパターンが考えられますか。

 1.世界設定から物語を作り出す。
 2.キャラクターから物語を作り出す。

 今回とりあえず1の方を。時間があれば2もやりますが。


 世界から作り出す場合、前提として、その世界の設定が当然作られている、というのが必要になります。それも中途半端な状態ではアレですな。物語上の矛盾や突っ込みどころやご都合主義的展開などが発生することにもなりかねません。こうしたことを読み手に気づかれると、一気に醒められます。ならば、ファンタジックな要素が少ないものであればよいかというとそうでもなく。やっぱりそこにはそれなりのリアルが要求されるのです。例えば、現実をモデルにしたような世界で、化物が出て、住民を殺しています、というようなことがあった場合。主人公たちが出張って、化物と対峙する、てな感じになったとしましょう。で町を舞台にバトルが繰り広げられると。そこで問題。警察機構は介入しないのでしょうか。怪我人が出てるなら救急は? 派手な戦闘になっているなら軍隊などの出動は? 下手なライトノベルだとこうしたこと一切なしに展開するわけです。でウソ臭くなる。例えば「ドラゴンボール」であれば、警官が出てくる、住民が銃で抵抗して逆にやられる、軍隊が出てくるなどといったシーンがあるわけです(セル編とか)。主人公たちが出てくる前にそうしたシーンが連なることで、一般人の抵抗が無駄→敵の強さが際立つ、主人公たちが必要になる、ということを飲み込ませることができる。クーンツの小説だったと思うのですが、町で異常事態が発生して住民が大量に行方不明になるみたいな話では、軍隊が町に入れない理由みたいなのが出てきたかと(『ファントム』?)。キングの『IT』でも子どもたちが襲われるのですが、大人が介入してこない理由が作られています(敵であるペニーワイズとかれが起こす超常現象は大人にはまったく認識されない)。あるいはファンタジー要素がないものでも、コミック「スラムダンク」では主人公のいるバスケ部が乱闘騒ぎに巻き込まれる事件があります。このときのリアリティを出すための演出として、ケンカが始まってすぐに、外にバレないように体育館のドアが閉められます。ケンカが展開していくと、今度は騒ぎを聞きつけた先生が「何をしている、開けろ!」みたいな感じで登場します。さらに補習授業で送れてきたキャプテンが中に入り、中を見て取るやまたドアを閉め、「暑さ対策のためドアを閉めて練習しています」という言い訳をします(でケンカの当事者の昔話が入った挙句、顧問の安西先生が登場する)。現実にファンタジックな要素を放り込むという手法では、他に例えば小川一水の『イカロスの誕生日』だったかと思いますが、これが感心した記憶が(別の作家だったかもしれない)。現実に似た世界で、突然翼を持った人間が生まれ始めるというストーリー。元々が現実をベースにしているので、世界設定そのものが読者になじみがあるわけです。そこへファンタジックなファクターを入れてくる。それによる変化が起こる、というSFパターン。感心したのは、翼を持った人たちの生活描写です。現実日本は、そうした人たちにとっては暮らし難いようで。何がアレかってえと、電線。地面から飛び上がる、下りる際に電線の類が邪魔になるという描写。ああなるほどバルーンフェスタだって、電線とか高い建物の少ない佐賀県でやるわけですからねえ。ただ単に「翼を持つ人間が日本に出てきた」というだけじゃなく、そうした描写が楽しい。他には山口雅也の『生ける屍の死』だと、死亡後に何割かの死者が甦ったという現象が起こるようになった世界での話。連続殺人が起こるのですが、死者が生き返る可能性がある世界で人を殺すことに意味があるのか、というストーリーが展開するのです(つまり被害者=目撃者=証人になれる)。甦った死者は肉体的には死んでいて、徐々に腐っていくんですが、その辺もいろいろと描写が出てきます、というかかなり早いうちに探偵役の主人公が毒殺されて甦り、いかに自分が死んでるかを隠しつつ調査を進めていくので。死者は瞳孔が開いたままなので明るい光に耐えられない、死者は内臓が動いていないので物を食べられない(というか消化できずに胃で腐敗しちゃう)、心臓が動いていないので血が流れず、血の気がない、といったことが次々に普通に描写されていき、特に最後の要素を隠すため、探偵は家業のエンバーミングを自分に施したりします。で連続殺人の動機がまた、この世界でないと成立しないようなものだったり。他のミステリー作家でも「嵐の山荘」的クローズド・サークル(警察が関与してこない状況)を作るために様々な工夫をしたりするわけです。そうしたちょっとしたことの積み重ねが作品にリアリティを出す要素になるわけですな。また専門的なもの、他の作家が扱っているようなことを生半可にやっちゃうと、猛烈に突っ込まれたりするので注意が必要です。


 現実のリアリティを出すのが困難なら、空想要素を多くしていけばいいかというとそうでもなく。かつて、J.R.R.T.がいいました。「緑色の太陽がある世界を作るのは難しい」みたいな。正確にいうと難しいじゃなくて、「思考と労力が必要になる」ですか。またJ.R.R.T.は駅の橋のこと考えるよりヘイムダル神が守る虹の橋の方が魅力的に感じられるんすわーともいっちょります。いちからでっち上げるのなら、そこで発生する言葉にも影響が当然出ます。仏教がない世界では仏教用語や観念を使えないわけです。ワインのない世界に「ワインレッド」はないのです。けれど、徹底すればするほど読者が付いて来れなくなります。なのでどこかで妥協点を見つけることになるでしょう。現実世界から連想可能な世界に現実とは違う要素を入れてかき混ぜるような(あるいはその逆)。


 ともあれ、舞台になる世界が整ってきた、としましょう。世界には様々な設定があるはずです。その世界でクローズアップする「時代」「場所」「設定」を決めます。作りこんだ設定が100あったとして、それを100展開するのは不可能です。80でも無理。60くらいでもキツいはず。たくさんある設定のほとんどを死蔵させるのが通常でしょう。というかそういう状態になるまで設定作れという話です。てのも、設定が少なすぎれば、必ず穴が出ます。作品を書いてる最中に矛盾が生じたりもするでしょう。そんなときに泥縄で穴を埋めようとするとロクことになりません。矛盾が矛盾を呼び、全体を崩壊させたり、ご都合で収束させて読者を白けさせたり。かといってできた設定をたくさんぶち込むほど、今度は説明過剰になり、ひとりよがりになり、読者置いてけぼりの世界になっちゃいます。なので、どの点をクローズアップして、他を切り捨てるか、あるいはこっそり埋め込んでいくかという選択が必要になってくるでしょう。この選択が重要で、例えば現実に直結してるような部分をクローズアップしすぎると、「何もこの世界じゃなくてもいいじゃん」ということになりかねません。しばらく前に読んだ三崎亜記の『鼓笛隊の襲来』なんてのがこの手かと。別にファンタジックな要素がなくても成立するような話も入っていたので。


 実際に、一年くらいかけてちまちまやってきた世界設定を見てみましょう。ミノタウロスの神話から帝国の戦争から、ペガサスの飛行物質であるところのメリグリン2の発見からその利用法まで何から全部を展開させるのは難しいでしょう。これをやるためには世界(時間の広がりである世と地理的な広がりである界)を俯瞰するような大河的なものが必要になりかねません。それをやるにはあちこちに穴がぽこぽこ開いているので埋めるのが大変だし。なので「時代」を限定するか、「場所」を限定するか、「設定」を決めましょう。それからキャラクターを決めて、物語を織り込んでいきます。例えば「三国志」をやることになったとします。当てはまる「三国志」のどの時期を、どの場面を、どっから、どこまで、誰を中心に書きましょうか。全体を最初から最後までやると膨大な量になります。吉川三国志だって諸葛亮が死んだら終わるわけですが、実際に「三国志」はまだまだ続くわけですよ。酒見賢一の三国志だと、劉備たちが劉表のところにいる時代から始まります(主人公が孔明なので)。あるいは伴野朗の三国志だと呉を中心に書き込んでいきます。どれをクローズアップするかで同じ題材でも違ったものになってくるわけです。


 エピックファンタジー的な展開をするなら、戦争編でしょうかね。帝国の戦争に絡めてやる。時代的な限定をつけます。帝国がその形を取った何代か前から始めましょうか、それとも伝説っぽい時代から始めましょうか、はたまたホットスタートで拡張戦争のシーンからいきなりやりますか。それからどこで終わらせるか。この始まりと終わりはキャラによっても違ってくるでしょう。どのキャラを扱うかでも違ってきます。戦争編では、帝国側、反帝国側のどちらサイドから書くか。あるいは両方を丹念に書き込んでいくか。帝国側でも男爵から書くか他の貴族にするか、皇帝を描くか。ただし、こうしたことを中心にやっていくと、他のエピックファンタジーとか戦記物と似たり寄ったりになりかねないので、オリジナルっぽい設定を前に押し出した方がいいでしょうな。


 ヒロイックファンタジー的な展開であれば、帝国側よりも反帝国側から描く方がやりやすそうです。だいたいにおいて、ことに反帝国であったロウハの王子(女装して帝国軍を避けた)とか、ゴンドワの執政の子(レジスタンス側に回る)とか。あるいは傭兵になる方のアゴルを幼少期から始めて裏切る方のアゴルとの絡み→「山の下」としてのデビューと裏切り→「山の上」が滅ぼされるさらなる裏切り→雌伏みたいな流れだとヒロイックですね。ことにアゴルの場合は、ミノタウロスの設定、ペガサスの設定、ユニコーンの設定、ペガサスから派生する陸上馬の設定も自然に出せるので、オリジナルの要素が増えることになります。逆に帝国サイドからだと、ヒロイックはやりにくいなあ。皇帝とか男爵などを中心に書いていると、エピックになりそうだし。裏切りのアゴルをやってピカレスクな展開は面白いかも。


 エブリデイマジック的な展開であるならば、そうですねえ、ペガサスに関わるものが楽しそうです。あるいはメリグリンの話とか。技術的なもの、専門的なものを短編でちょびっと出していき、その積み重ねで世界を表現する方向で。


 いずれにせよ、世界設定から話を削りだしていく手法では、「何を出せばその世界がよく語られるか」という点を注意すべきでしょう。その世界でのオリジナル、あるいはその世界をその世界たらしめている要素です。例えば、「ラピュタ」は飛行石の物語で、「ナウシカ」は腐海と人との関わりの話で、「もののけ姫」は自然(神)と人工(人)との対立なのです。


 ただし。世界設定を作りこめば作りこむほどかかりやすい落とし穴もあるわけでして。先にも書きましたが、「設定の出しすぎ」ですね。やりすぎると、「小説」ではなく「設定資料集」になりかねません。もちろん、設定をメインにした作品なんてものも世の中には存在します。ハザール族(架空の民族)に関する事項を集めた『ハザール事典』などがその手。あるいは「ルーンクエスト」の一大イベントである「英雄戦争」を後世の学者が考察する『グローランサ年代記』などでは、たしか「著者」が各地の図書館を回ったり、資料を集めたりして、論を組み立てていく小説じゃない論文。あるいは架空の島にいた架空の生物を解剖図から何からでっち上げた『鼻行類』、同じような形式の『平行植物』とか。これらのものを真似するのは難しいのですよ。なんとなれば、設定そのものをメインにしているため設定自体に人を引き付けるものがないといけないので。しかもそれを面白がらせるだけのエンターテイメント性が必要ですな。


 そんな感じですかね。書いてるうちにしんどくなってので、オリジナルを作ったら、どの部分が一番面白いと思ってもらえるのか、と考えるってことでまとめて、次回キャラクター編へ。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第35回(2008年5月下旬


 第35回。前回は世界設定から話を切り出す際のことを書いた。まず世界設定を考え、そこから作りたい話、クローズアップしたいものを選んでいくやり方である。今回はキャラクターをメインにして行きましょうかね。


 ライトノベル等では、キャラクターが重要視されている、というかキャラクター小説といった呼ばれ方もあるし、セカイ系というやつもある。セカイ系は、自分の世界あるいは自分=世界という形の話なんですかね。狭い世界でやったことが世界全体につながるけれど、その世界自体は見えないような感じ? まあいずれにせよ、キャラクターの方が優先されることが多いようです。


 キャラクターについては、話を小説の形に切り出す前に、ある程度綿密な設定をしておく必要があると思います。これは世界設定と同様なのですが、中途半端な状態で始めると、後付けでどんどん性格等が変わったり、突っ込みどころが増えたり、破綻したりすることになりかねません。ならば、前もって、「このキャラはこういうものである」という部分を作っておくに越したことはないでしょう。キャラが展開によって成長したりするのは当たり前だし、物語の上で性格そのものが変化してもいいです。ただ、その変化・成長が読み手にとって納得のいくものでないといけません。でないと、単に作者のご都合、キャラは作者の好み・主張などを表現するだけの作り物の人形にしかなりますまい。もちろん、作者の好みや主張をキャラにたくすというのはかまわないことだと思いますが、「生きた」キャラにならなければ、読者が納得いくものでなければ、それは単なる自己満足・オナニーにすぎません(作品を書くこと=オナニーであるという説は文芸部の先輩がおっしゃってたことですが)。オナニーを人に見せて楽しませるには、それなりの芸なり魅力なりが必要だと思います。


 ともあれ、キャラの作り込みはどのくらいやればいいのか、なんて教科書はありませんので、自分なりに考えていくしかないでしょうな。作家などが「書いてるうちにキャラが勝手に動き出す」みたいなことをいってるときがありますが、あれをそのまま信じてはいけないと思います。何の設定も裏付けももたないキャラが動くことはないと考えた方がいいでしょう。起こりうるケースはひとつ。そのキャラの設定がある程度固まっている状態にあったということです。キャラが固まっているからこそ、アドリブで書いてるとしても、キャラが置かれた状況に対するキャラの反応が意識的・無意識に想像できるのです。結果として、作者が想像してないリアクションを返す=キャラが勝手に動き出す、ということにつながります。たとえそのキャラを作者が意図的に設定しつくしていなかったとしても、作者のそれまでの蓄積(他の本・映画・テレビその他諸々のキャラ設定)から類推して作られる場合があります。すなわちそれも結局「キャラの性格が固まってる」のと同じでしょう。もうちょっと具体的にみますと、Aというキャラがいて、それに関して性格はこうで、家族構成はこうで、生い立ちがこうで、好みがこうで、と設定していれば、ある状況におけるキャラの反応が想像できるってもんです。一方、Bというキャラがいて、それに関して、性格も家族構成も生い立ちも好みも決まってない、でもツンデレ、ということが決まってる状態であったならば、ある状況におけるBの対応は「ツンデレ」というパターンの作者のこれまでの蓄積から引っ張りだされうるわけです。ただし、後者の場合はそのパターン蓄積にかなり左右されるのですから、ただ一点「ツンデレ」とのみ決めているだけならば、Bの反応は同じパターンを知っている読者の予想しうるものになりますし、それはつまるところマンネリ・ありがちといった感想にもつながるでしょう。また途中からどうしてもキャラの設定は深まるものですから、最初は「ツンデレ」と決めて書いていったキャラに気が付けばいろいろ加わっていき、ふと見れば「ツンデレ」の反応自体がこのキャラにふさわしくないんじゃないかということになってるときもあるでしょう。うまいことやれば物語上のキャラの成長として描けるかもしれませんが、たいていはウソくさくなりますな。


 なので結局方向としては、キャラはなるだけ作り込む、ということになるでしょうか。「K大もの」でも書いてますが、例えば大学生のキャラが友達とご飯食べに行ったとき、誰が、どういう風に、どういう順番で、何を注文するのか、そうしたことがおおよそ分かる程度には(カラオケに行ったときでもよい)。もちろん、読者にまでそれが伝わらねばならないということでもなく、作者がそれをつかんでいればいい話ですがね。


 ある程度基本設定が出来たら、今度は周辺の人物などと絡ませます。状況をセッティングし、そこにキャラを放り込んでアクション・リアクションをさせ、その結果を設定に反映させて強固にしていきます。例えばやはり「K大もの」では、一番初期の形では高校を舞台に、後に「トリオ」と呼ばれることになるキャラが動く話だったのですが、このときも基本設定をおおよそ決めた後、「トリオ」がどのような状況ではどのような会話をするのか、ということを延々シミュレートしてました。


 こうしたことを繰り返していると、物語の展開上、そのキャラにとって自然な動きが何なのか分かります。何なのか分からないという場合は、仕込みが足りないか、「勝手に動く」ということでしょうかね。作りこむことによって、ある程度「底の浅いキャラ」「人形みたいなキャラ」「作者の都合で動くキャラ」という読み手を白けさせるキャラを省くことができるでしょう。


 キャラを作る際には、まあ様々な手法があるんでしょうが、例のひとつを挙げてみましょうか。拙作K大ものでメインキャラの一群である「北高トリオ」について。彼らは、K大ものが大学じゃなくて高校を舞台にしていた頃に存在していたキャラたちです。まず第一段階として、最初に作ったのは、塚本光輝(コーキ)と島田京子です。性格付けとして、コーキは「プライベートな私」、京子は「オフィシャルな私」という部分を核にして成長させました。この二人だけじゃなかなかに話を動かしにくいってんで、第三のキャラである茶園をひねり出しました。この三人でもって、会話をシミュレーションしていってキャラクターの性格を強めていったのですが、

 コーキ:熱い人だが、内面冷静な部分がある。
 京子:クールな観察者だが、結構熱いこと考えたり。
 茶園:賑やかし。好奇心旺盛、物事を結果的に引っ掻き回す扇動者。

 という核を常に意識してって会話を想像する。最初は回しにくいんですが、性格がはっきりしていくにつれて、反応が分かりやすくなります。実際にK大ものを始めてみて、別の同級生を出す必要に駆られたので、あと三人加えて、「六人組」としました。そのときには、「トリオ」に対する「裏トリオ」という位置づけだったので、初期設定は、コーキ−千堂、京子−新田、茶園−ザキという対応になっています。そっから区別するために肉付けしていく段階で、

 千堂:熱血バカ。
 新田:観察者というより傍観者っぽい。ロマンチスト。
 ザキ:体育会系元気少女。物事を結果的に引っ張っていく先導者。

 という性格を強めていくことになります。似たような性格であっても、例えば所属する部活、付き合ってる友人、趣味などが違うだけで、まったく違う人間になっていきます。なので、これはK大ものの説明のところにも書いてますが、例えばコーキに対する呼び方であっても「コーキ(京子)」「コーちゃん(茶園)」「ツカ(千堂)」「塚本(ザキ)」、新田は「光輝」と書いて本名の「みつてる」と呼ぶという違いが出てきます。


 また、やりたいイベントや表現したいシーンや、こういうキャラを使いたいというのが先にあったとしても同じことですね。結局はキャラを作りに行くということになりますし。


 うーん、実際にちょびっとやってみましょうか。これまで作ってきた世界で。今まで出てきてないキャラを設定してみましょう。例えば、「ペガサスナイトに憧れる少年」なんてどうでしょうか。まだこれまでの設定では出てきてないキャラです。どのような立場の彼をいじりましょうか。少年ってんだから、10歳〜18歳くらいまでにしましょうか。何してるんでしょう。憧れてるくらいなんだから、ペガサスなりペガサスナイトなりが身近なんでしょう。少なくとも憧れる程度には知ってないと。本などで知ったという可能性もありますが、まあ、ここでは身近だったということで。

 パターン1:父などの身近な人物がペガサスナイトであった。
 パターン2:ペガサスナイトの勇姿を見たことがある。あるいはペガサスナイトに助けられたことがあるなど。
 パターン3:ペガサスの世話をしている。ペガサスナイトの従者になってる。

 とか、とっさに出しましたが、いろいろ設定が考えられますな。パターン1では、父がどのようなペガサスナイトであったか(厳格であったとか)、存命かなどでまた違ってくるでしょう。英雄みたいな人物であれば、父を慕っているペガサスナイトなんてのもいるかもしれません(少年にとっての兄貴分みたいな)。パターン2では少年が一途にペガサスナイトを目指す動機になるでしょう。憧れのペガサスナイトをどう設定するかでまた違う分岐に。パターン3では、ペガサスナイトの裏側のようなものが描き出されるでしょうし、英雄的ではない部分、厩であったり食事であったり部下とのコミュニケートであったりといった事柄が描きやすいかもしれません。そうして出てきた設定やキャラをフィードバックして、絡ませていく、ということで。
 

 自分が描きたいもの、描きたい人、そうしたきっかけになる部分を考えるのは作者の自由です。しかし、そっから先、ある程度固まっていくと、今度は作者の自由にならない部分が出てきます。私自身の経験からいうと、「いくら何でも死ぬだろう」と思っていた状況から生還しまくるキャラができたり、「こいつは死なせたくない」と強く思うキャラであっても死を避けることのできない状況ができたりするのです。


 そうしてできた物語を、今度は作者がどう切って表現するか。それは作者の自由になる部分であり、また別の話になると思うので、今回この辺りまで。なんかマジメに語ってると肩が凝り懲り。












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 ペガサスが飛ぶ話。 第36回(2008年6月上旬


 第36回。とりあえず1年ということで、強引にまとめに入る。


 前回の補足。キャラの作りこみに関して、やる理由のひとつを思い出したので。そもそも作者がワンシーンで描き分けることのできるキャラ数には限度があります。なので、同じような大雑把な設定をしたキャラであれば、同一シーンに出すことが困難になってくるわけです。なので、なるたけ労力注ぎ込んで区別できるようにしておくのが重要かと。


 前々回に世界設定を作りこんでからの物語の切り出し、前回にキャラの設定を作りこんでからの切り出しとやってきました。が、念のためいっておきますが、どちらかしかやらない、というのは愚策ですよ、もちろん。キャラ重視だろうが世界設定は必要ですし、世界設定魔であれキャラの設定はしなくてはなりません。ただし、そういうのを必要としない話もありますが、そりゃまた別。とりあえずどっちからやるかとっかかりという感じですかね。ただ、自然な成り行きとしまして、どっちかをやっていれば、もう一方も必ず発生するとうもの。


 とりあえず、前回最後に作った「ペガサスナイトに憧れる少年」を主人公にした話を展開してみましょうか。今この段階ではどのくらいの量になるか分かりませんが、いつもより長いかもよ。まず面倒なので、少年に名前をつけておきます。いつまでも「ペガサスナイト(以下略)」だと長いですしね。そうですねえ、サンとでもしましょうか。サンプルのサン君です(てけとーなネーミング)。い、いや、Sampleなんだから「サム」とかしようかと一瞬思ったんですが、そうすると心底従者属性がくっつきそうだったので、あえて「サンプル」の「サン」で。


 サンの状況ですが、前回は3つくらいのパターンを出してみました。そのうちひとつを選んで、そうですねえ、従者パターンで行ってみましょうか(やっぱりか)。ペガサスナイトが有名なロウハ国の所属、としますか。ロウハではペガサスナイトは花形なんで、それに憧れている、という形にしますか。また、父親なりの家族がペガサスナイトだった、ということにしてもいいかもしれませんな。うん、そうしましょう。あ、「だった」じゃなくて「である」でもいいかも。


・サンはロウハ人である。
・サンはペガサスナイトの従者である。
・サンの家族がかつてペガサスナイトだった(である)ため、彼自身もペガサスナイトになることをモチベーションとしている。


 騎士の子が騎士になるため従者としてまず訓練されるというのはよくある話なんですが、そのパターンですかね。従者の職務としては、騎士の身の回りの世話とか、戦場では武器の運搬や実際の戦いで騎士のそばにいて武器の受け渡し、倒した敵を捕縛したり首を切ったりする役目があったわけですが、ペガサスナイトの場合、戦場におけるフォローは難しいでしょうな。だって飛んでるし。飛ぶのペガサスだし。だからって自分も乗っちゃえばそれってペガサスナイトだし。なので、


・ペガサスナイトの従者の職務は主としてペガサス及びナイトの世話である。


 まあせっせと厩でペガサス磨いたり秣運んだりとかする一方で、騎士の身支度手伝ったり武器の手入れしたりとかするわけです。それでいつか自分も、とか思ってる少年。


 サンの周辺人物について考えてみますか。まずペガサスナイトにいるだかいただかいう家族。無難に父親ということにしてみます。この父親を例えば「偉大な英雄」みたいな感じにして、サンがそれにやたら比較されたりいじめられたりとかいうストーリーもありですが、あんまし好みではないので、


・サンの父親はペガサスナイトである。
・サンの父親はそこそこのペガサスナイトである。
・サンの主であるペガサスナイトは、昔父の部下だった(世話になったことがある)。


 そんな感じでひとつ。とここまで考えたところで、出撃した、あるいは宿泊付きでお出かけしたペガサスナイトの世話はどうするのかということに気づいた。むう、従者たちが追い掛けるか先行するか、そんな形になるのかなあ。でもやりにくそうだなあ。第一ロウハは山がちの地形であって、だからこそ飛行ユニットが有利だという設定があるし。てな思考を進めて、


・ペガサスナイトの砦(補給基地)がいくつかある。
・従者たちは基本的に砦にいる。
・従者たちは砦にいるペガサス、砦に来たペガサスの世話をする。
・ペガサスナイトは基本的に所属する砦が決められている。
・野営が想定される場合には、従者が先行して設営するか、後から追いついて世話をすることもある。


 という形に落ち着く。なので、何行か前に立てた「サンの主」に対するものは「サンが世話をするペガサスナイトのひとり」という形にしましょうか。


 んで、サンがどういう状況にある時代をメインにするか決めてみましょう。サンは生き物ですから、

 誕生→幼少期→ペガサスナイトの従者→ペガサスナイトになる?

 という人生があるわけです。従者の後、どのようなことになるかはまだ決めてないので「?」をつけました。これをサンのサガのようにするのであれば、形式上、

 父親の話→サンの誕生→(以下略)

 てなことになります。そうですねえ、従者→?の辺りを中心にして、それより過去は回想・フラッシュバックのような形で用いると冗長にならないかもしれません。


 またこのサンの人生は、世界におけるどのような時期にあたっているのかを考えてみます。例えば大陸制覇をしかかった王の時代である、とするなら、ロウハ国はまだなかったでしょうから、ロウハ人であるという設定を打ち消して、ペガサスに乗る騎馬民族みたいな形になるでしょうし、砦云々に関する設定もそれに応じたものになるかと思われます。


 でも、まあこれまでの設定を生かしつつ、


・サンが従者になっている間に、帝国の侵攻がある。


 とすると、この侵攻がいつのものを指すかってことになるんですが、これまでの設定からすると、帝国→ロウハへの侵攻は少なくとも二度あったはずですな。

・サンが従者になっている間に帝国が侵攻してきて、ペガサスナイト隊に破られる。
・サンが従者になっている間に帝国が侵攻してきて、ペガサスナイト隊が破られる。

 のいずれか、あるいは両方。もっとも帝国の事情設定を鑑みるに、先の侵攻と後の侵攻の間には、「山の上の一族」の討伐イベント及びそっから出てくるミノ粒子の確保というのがあったわけで、何年かかかってると見るべきでしょうか。そんなら、サンが従者になったまま両方、というのもどうか(実際には起こりうることでしょうが)。とすると、両方、という人生行路を選ぶなら、サンが後の侵攻の際にはペガサスナイト見習になってるという可能性もあります。 が、個人的な好みでもって、後の侵攻時に従者、先の侵攻時にはまだ従者にもなっていないという形にします。


・帝国の先の侵攻においてサンの父親はペガサスナイトとして活躍をした。
・サンは父親に憧れ、ペガサスナイトを目指す。


 これでだいぶはっきりしてきました。

 サンの誕生→帝国の侵攻→父親が活躍→父に憧れる→ペガサスナイトの従者になる→帝国の侵攻→ペガサスナイト隊が破られる→ロウハ滅亡


 こういう流れになりますな。盛り上げるために、


・帝国の侵攻で父親は戦場にて行方不明。


 なんてのもいいでしょう。そんな感じでキャラ周りとしては、

・ペガサスナイト
・父親
・従者仲間

 等々をセッティングしていけばいいでしょうか。あ、あと思いついたので、


・砦にはペガサスを診る医者がいる(時々人も診る)。


 としましょうか。各砦にいるんじゃなくて、いくつかの砦についてひとり、みたいな感じで。医者見習みたいな弟子はいるでしょうが、中心人物はひとり。多分、これ書いてるときに読み終わった北方水滸伝の馬医者とか人医者とかを連想したんでしょう。


・各砦で病になったペガサス、産み月に入ったペガサスなどは各砦にいる医者見習及び従者が世話をする。
・医者の中心人物は各砦を巡回し、緊急時にも駆けつける。
・緊急時に駆けつける必要性から、医者の中心人物はペガサスに搭乗できる。


 まあ救急車みたいなもんですな。で、医者は各砦のペガサスナイトや世話を任される従者とはある程度顔見知りで、

・サンは医者の中心人物と顔見知りである。


 なんでこんなことちまちま書いてるかっていったら、医者のキャラが浮かんだので。


・医者はドクトル・メリグリン。
・メリグリンは高笑いが癖。
・メリグリンはすぐに解剖したがる。
・メリグリンの基本路線はマッドドクター。
・年齢設定としては、サンの物語の時期に40〜50歳前後。


 何故「ドクトル」かなどと聞いてはいけません。なんとなくなんで。イメージ的には林トモアキ描くところのドクターとかですな(←何かと主人公を改造してドリルをつけたがる)。「ひゃ〜ぁっはっはっはっはっ、解剖、解剖をしてやろう!」とかいってる感じでひとつ。もちろん、正式に書くとなったら「ドクトル」は消しますが。でドクトルはかなり昔におっ立てた設定に出てくる人と同一人物ってことで、時期的には、


・ドクトルは後に「メリグリン2」(ペガサスに宙を駆けさせる物質)の抽出・分析に成功する。


 てことでどうよ。まだ時期的には単なるイカれた(腕のいい)馬医者です。ペガサスの生態に身近に接していたから、「メリグリン2」の発見に結びついたってのは悪くない流れかと。てか、多分最初に名前が出てきたときにはもっと学者な感じかなと思っていたのですが、さっき思いついて固まっちゃった感じですな。追加として、


・ドクトルは生きたものと死んだものをきっちり区別する。


 としておきます。生きてるものについては医者として救おうとしますが、死んだものについては生きたものとは別の「もの」として扱います。例えば、ぱっと思いついたのが、ドクトルが砦にぼろぼろになったペガサスで飛び込んできたシーン。


 ドクトルを運んで、着地すると同時に崩れるペガサス。飛び降りた馬医者、
メ「ここまでよく頑張ってくれたのう」
 ト愛しげにペガサスを撫でる。弱弱しくいななくペガサス。馬医者、短刀を抜いて、
メ「今楽にしてやろう」
 ト、ずぶりと突き込む。もう一度撫でて馬医者は立ち上がり、
メ「時間があれば解剖したいところじゃが……」
 ト、ペガサスから離れる。


 で、このシーンは何だろうと考えて、ペガサスナイト隊壊滅直後のものにする。その状況で、「時間がない」と急ぐ事態は何ぞや。


・ドクトルは王子を連れて砦に避難してきた。
・王子は負傷している。


 ロウハの王子が逃げるという設定は前に作ってたので、ドクトルをその同行者として、ならば、


・王子はペガサスナイト隊にいて戦闘を指揮していたが敗北、からくも生き延びてドクトルによって砦に運ばれた。


 王子だから護衛なんてのもいたんでしょうが、


・王子の護衛は王子を逃がすために敵を引き付けている。


 そんな感じですかね。後々生き延びた護衛が合流してくる展開も含めて。だいたい緊急事態で、サンのいる砦に逃げ込んできた、というのはサンの砦が戦場に近かったためか。とすれば、敵が迫っている、護衛が敵を引き付けている、時間がない、というのも納得できるかな。負傷した王子の手当てをし、


・予備のペガサスとともに砦から逃げ出す。


 と書いて、いや待て、ペガサスを使うのはどうよ。ペガサス隊が怪しげな術(というかミノ粒子)で撃墜されたことが分かっているので、使うとしても、


・サンたちは王子を護りつつ、陸路で逃げる。ペガサスも連れていく。


 てな流れが自然ですかね。首都なりに逃げようとするのですが、


・ペガサスナイト隊を破ったのは帝国軍主力ではない。
・ペガサスナイト隊敗北と同時に主力は首都目指して進軍している。


 山を陸路で怪我人抱えて逃避行しているため、


・サンたちが首都に近づいたときには、首都は陥落している。


 んで、同盟国であるゴンドワを頼ろうとする、という展開ですかね。ただし、ゴンドワはゴンドワで内輪揉めしててそれどころじゃないんですが。


 これで後は王子のキャラ設定、合流する護衛部隊の設定をしつつやっていけばいいかな。うん、思いついたので、付け加えておきましょう。


・ペガサス乗りは体重が軽い者が多い。必然的に小柄な男性や女性の比率が高い。
・邪魔になるため、髪を伸ばしている者はほとんどいない。


 ペガサスが蹄で宙を駆ける以上、体重は軽い方が動きやすいでしょうし、その特徴が機動性にあるわけですから、競馬の騎手とかを見習って軽量級が多いかと。するってえとそっからの連想で、


・王子の護衛隊長は女性である(むろんショートカット)。
・護衛隊長は生真面目な性格である。


 てことは、当然のように、


・護衛隊長はしょっちゅうドクトルと衝突する。


 なんて感じでさくさく作っていくとキャラを絡ませやすいでしょう。あ、あと後で生きてくるであろう追加設定。


・ロウハ人と「山の上の族」の仲はよくない。


 まあ、ペガサス飼って、ペガサスナイト誇りにしている人たちと、ペガサスに対して種族的憎悪のあるミノたちですからねえ。あと、


・放浪の果て、サンたちは辺境伯と合流することになる。
・サンたちが導入したペガサスが元になって「馬」の軍が作られる。
・放浪中、ドクトルは不思議な水を発見。実はこれが成長促進剤。
・成長促進剤が「馬」の軍を急遽編成するのに役立つ。
・成長促進剤は「メリグリン1」である。


 全体の流れはできたので、いくつかのイベントをマイルストーンとして、途中の穴を埋めていけばいいですかね。


 とまあ、アドリブでやってみましたが、どんなもんでしょうか。ここまでが、実際に書くための大雑把な材料ですね。もちろんさらに練り込みをかけるもよし、他のキャラをクローズアップしてセッティングするのもよし。例えば、ゴンドワ側の話とか作りこんでいってもいいわけです。というか王子の設定とかはやっとくべきなんですが、省略。


 で材料が揃ってきたところで、料理を開始します。前にも書きましたが、どのような時期から始めるのか。どのようなシーンから始めるのか。どのようなカメラワークにするのか。視点人物は誰なのか。そうしたことに気を配っていきます。このときに、全体の流れがある程度分かっているならば、伏線やそれっぽいことを導入していけるわけです。


 サンが従者のときから始まる物語ですが、


 サンが混乱している状況に一気に読者を巻き込みたい→ホットスタート→ドクトルが砦に飛び込んでくるシーン辺りを最初に書く→混乱している中、ドクトルに怒鳴りつけられたりしながら、王子を介抱するサン→ふと見ると、ドクトルがペガサスを始末している。


 という流れにするのと、


 サンの従者っぷりを丹念に描いていきたい→ペガサス隊が出撃する前から書く→ペガサスナイトに声を掛けられる→何年か前の侵攻の話、父親のこと、ちょっと不安がるサンにペガサスナイトが語ったり→出撃。見送るサン、どこか不安な表情のまま→残ったペガサスなどの世話をしつつ(ここで仕事ぶりをアピール)、いくつかフラッシュバック。


 という流れだと読んだ感じがまるきり違うわけですわ。また、視点人物に関しては、サン中心に設定を作りこんでいったからって、完成品をサンの話にしなきゃならんなんてことはないので、例えば、


 別の砦にいるドクトル→敗報、護衛部隊とともに負傷した王子が担ぎこまれる→迫る敵→応急手当を施し、別の砦に避難開始、敵を引き付けるため護衛部隊が出撃→空を駆けながら、ドクトルの回想→サンのいる砦に駆け込む→指示を飛ばしながら、ペガサスを殺す→状況を把握、砦からの避難。


 とドクトルの話にしてもいいわけです(サンより難易度が高そうですが)。王子の話でもいいし。三人称ですべてやってもいい。同じ材料であっても、どこを採用して、どこを切り捨てるか、どの角度から描くかで違ってくるのが分かるかと思います。


 そうしてできた作品は、結局のところ設定をすべて出し尽くさなくとも、行き当たりばったりで作った話とはまるで違うものになるでしょう。キャラにしろ世界にしろ前もって作っていれば、どこを切り取ったとしても他のところとリンクして、「後に何かがある」という感覚を読み手に与えるのですから。そうしたことが世界内リアリティにつながり、読者に疑問や興醒め感を抱かせにくいことになるでしょう。


 といささか強引なまとめですが、そもそもこうした世界内リアリティを持ってない作品が結構あるよなあというところから始まった話なのでした。妄想エンジンを限られた時間に起動させて、どれだけできるかって実験でもありましたし。ついでにこの手の創造を楽しむ人が増えれば嬉しいなあと思った次第。一年続けましたが、一区切りということでとりあえずおしまい。そのうち、このコーナーだけ集めてページの片隅にでも置きますかねえ。












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